医療ガバナンス学会 (2022年11月21日 06:00)
Tansa リポーター
辻麻梨子
2022年11月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
●国の税収の3割に上る額が交付
委員会冒頭、蓮舫議員は今回の地方創生臨時交付金の規模を指摘した。交付金の財源が多額の国債発行に頼っており、国の借金がかさんでいることへの危機感があるからだ。
「この2年間で15.2兆円、4月の予備費を足すと16兆円。昨年度の国の税収の3割にのぼる額が交付されています」
蓮舫議員が無駄遣いの事例として取り上げたのは、次の5件だ。これらの事業が、コロナ感染対策や地方創生とあまり関係がないことを、フリップを使いながら指摘した。
・福井県 ハッピーマリッジ応援事業 1億8000万円
・東京都港区 ポイント還元事業 1億2800万円(交付金)/2600万円(独自財源)
・鹿児島県出水市 ツル越冬地入域調整実証実験事業 約381万円
・長崎県川棚町 幹部公用車購入事業 386万円
・愛知県 県立学校のトイレの洋式化など 18億6800万円
蓮舫議員からの質問に対し、まず答弁に立ったのは、内閣府地方創生推進室の黒田昌義次長だ。福井県のハッピーマリッジ事業について、黒田次長は言った。
「コロナの影響で式のキャンセルが続く中、減収が見込まれるブライダル関連企業等への支援と、結婚の機運醸成をはかるため、入籍するカップルを対象にカタログギフト等を提供した」
「支援の効果が図られたということを聞いている」
議場では「いい加減にしろよ」とヤジが飛び、蓮舫議員は、事業の対象時期がわずか1カ月半に限定されていたことを指摘した。
「結婚の醸成というが、この年の結婚件数は減少してます。1.8億円、補正予算が財源で、緊要なコロナ対策・地方創生にどんな影響があるんでしょうか?」
●野田地方創生大臣「有事の状況であった」
愛知県で約19億円を計上していたトイレの改修事業では、最終的に県の一般財源が当てられたことを突いた。蓮舫議員が、使われなかった19億円の使途を尋ねると黒田次長がこう答えた。
「今手元に詳細な表がありませんが、当該県から提出された実施計画に記載されている、他の交付金の対象事業に充当されていたのではないかと考えられます」
蓮舫議員は「自由度が高いと言えば聞こえがいいですが、相当ゆるいのではないかという懸念を持っています」と指摘した。
野田聖子地方創生担当大臣は、鹿児島県出水市が実施したツルの越冬地入域規制事業の効果について答弁した。
「確たる解決策がない中、地方それぞれが現場の責任者としてできることをやっていただきたいというのが交付金の趣旨」
「制限をかけずに、とりあえずできることはなんでもやってみようという中で、平時ではなく有事の状況であったとご理解いただきたい」
●財制審の指摘を3回無視され財務大臣は
いい加減な答弁を繰り返す内閣府。これに対して、財務省が釘を刺す形になったのが、内閣府が今月公表した、事業の効果検証結果に質疑が及んだ時だった。
2020年度分の事業を検証した結果によると、事業の達成度合いを評価する目標値を設置していた自治体は4.7%。事業内容を検証したり、その検証結果を住民向けに公表した自治体は2割にとどまっていた。目標値の設定は、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会が3回に渡って指摘してきた。にも関わらず、2割の自治体しか検証を行っていなかったことを蓮舫議員に問われ、鈴木俊一財務大臣は言った。
「検証がしっかり行われるように、財務省からもしっかりと申し上げていきたいと思います」
●計画を却下した件数すら回答できない内閣府
なぜこのような無駄遣いが横行したのか。蓮舫議員は、内閣府が自治体の事業計画をどのように審査してきたのかを質問した。
約14万の事業を、内閣府の70〜80人で審査していた。ほとんどの事業をまともに把握しておらず、コロナ対策や地方創生に関係のないとして審査で却下した計画の件数さえ、黒田次長は「手元に資料がない」と回答できなかった。
そもそも、地方創生臨時交付金の制度開始時、内閣府の村上敬亮審議官(当時)は記者ブリーフィングで「深く審査はしない」「細かく審査しないで数千万や1億を使うことになるが、自治体を信じている」などと発言している。蓮舫議員は質した。
「そもそも、計画も確認しない制度として創設されたんですか」
黒田次長は同様の答弁を繰り返した。
「当時、感染拡大防止に対する対策が急務であった」
「自治体がなるべく早く感染防止策などを講じられるよう、スピード感を持って内閣府としても審査した」
●岸田首相「国民に説明する努力」が必要
岸田首相は、蓮舫議員の質疑を時々うなずきながら聞いていた。質問の終盤で、地方創生臨時交付金の制度自体を見直すべきではないかと問われ、答弁に立った。「自治体の判断を尊重する」とした上で、次のように言った。
「委員のご指摘のように、地方自治体自身の説明責任と合わせて政府としてもしっかり検証しなければならない」
「国としてもしっかり検証をし、国民の皆さんにしっかり説明をする、こうした努力はしなければならないと思います」
※この記事の内容は、2022年5月30日時点のものです。
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