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Vol. 333 慢性疲労症候群の研究班をもう一度厚生労働省に!

医療ガバナンス学会 (2010年10月26日 06:00)


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「慢性疲労症候群(CFS)をともに考える会」共同代表
篠原三恵子

2010年10月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


「慢性疲労症候群(CFS)をともに考える会」では、CFS専門の研究班を厚生労働省に発足させることは、政府が緊急に取り組むべき課題だと考えております。その理由について、以下に述べさせていただきます。

【CFSの原因はレトロウィルスか】
去年の10月、ScienceにXMRV(異種指向性マウス白血病関連ウィルス)が、67%のCFS患者から検出されたと発表されました。それに引き続 き、今年の8月23日のPNAS(the Proceedings of the National Academy of Sciences)に、XMRVそのものではなかったものの、同類のMLV-related viruses(マウス白血病ウィルス関連のウィルス)が、CFS患者の86.5%から見つかったと、FDA(アメリカ食品医薬品局)とNIH(アメリカ 国立衛生研究所)とハーバード大学の教授らの共同研究によって発表されました。

この2つの研究によって、レトロウィルスがCFSの原因に深く関連していることが明らかになりました。CFSの原因については、さらなる研究が続けられる ことでしょう。全米におけるCFSの研究を、1986年の秋から9年間に及んで追跡調査した、Hillary Johnson著による”Osler’s Web”いう本があります。それを読むと、アメリカではもう20年もレトロウィルスの研究が続けられてきており、その結果がScienceやPNASの発 表につながったことがわかります。この20年におよぶ研究の成果が、今このような形で発表されたことは、注目に値しないでしょうか。

【その後の動き】
今年8月23日のニューヨークタイムズの記事の中で、Scienceの論文の筆頭著者であるジュディ・A・ミコヴィッツ博士は、年末までには抗レトロウィ ルス薬の臨床試験を組織したいと語り、臨床試験によって、レトロウィルスがこの病気の原因であるかどうかの答えが見つかり、有効な治療法をもたらす可能性 があると述べました。(ミコヴィッツ博士は、国立がん研究所とクリーブランド・クリニックとの共同でXMRVの研究を進めた、リノ市のネバダ大学の中で神 経免疫疾患を研究するウィットモア・ピーターソン研究所の所長です。)

同じ記事の中で、CFSの患者の中には、本疾患には未承認の抗HIV薬をすでに試している人たちもいることが書かれています。患者の一人、ニューメキシコ 州サンタフェ市の内科医ジェイミー・デコフ・ジョーンズ博士は、主治医から処方された抗レトロウィルス薬を服用して、健康が回復していることを人気のブロ グに書き、「最も重症な患者たちには、薬を試す権利があると思います」と、Eメールの中で述べています。HIVもレトロウイルスの一種ですが、HIVに対 して使われる少なくとも3つの抗レトロウィルス薬は、実験室の研究でXMRVを抑制することが示されています。

CFSを治す薬はありません。さまざまな症状に対して処方される、対症療法的な薬があるだけです。日本にも、年々少しずつ症状が重くなっていく患者たちが 大勢おり、私達の会の会員の中にも、寝たきりに近い患者たちが何人もいます。私達患者が、日本でもレトロウィルスの研究に真剣に取り組んで欲しいと望むの は、当然のことではないでしょうか。原因さえわかれば、治療薬が開発される可能性が出てくるのですから。そうすれば、たとえ完治はしなくとも、少しは病苦 が和らげられるかもしれません。そして、精神的なものではないかという誤解と偏見から解放されるでしょう。

【CFSの患者の献血は安全か】
同記事の中でさらに、新しい論文の筆頭著者であり、アメリカ衛生研究所の感染病の専門家であるハーヴィー・J・アルター博士と共著者達は、「これらのウィ ルスは血液によって伝染し、輸血を受けた人達が発病する可能性がありますので、広範囲に及ぶ調査が行われるべきであるという根拠となります」と、本論文の 中で書いています。正式にはアメリカ血液バンク協会として知られているAABBは、さらなる研究が行われている間、この病気の患者たちが献血することを控 えるようにという勧告を、6月に出しました。

2010年9月4日付けのtimesofmalta.comによれば、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアでは、CFS と診断された人が献血することを禁止、または控えるようにと勧告し、イギリスでは11月1日以降、CFSの病歴のある人の献血を永久に見送ることになると 書かれています。

http://www.timesofmalta.com/articles/view/20100904/local/chronic-fatigue-syndrome-sufferers-cannot-donate-blood

日本政府は各国の対応をどう考えているのでしょうか。日本でも、CFS 患者が献血することは安全であるかどうかを、早急に検討すべきではないでしょうか。CFSの研究班は、1996年には廃止されています。2010年6月の 日本疲労学会誌によれば、厚生労働省エイズ・結核感染症課で行われていた慢性疲労に関する研究班が2000年で終了した理由は、当初CFSの病因として心 配されたレトロウィルスなどの感染症がほぼ否定されたからだと発表されています。

【私達の会で求めること】
今こそもう一度厚生労働省にCFSの研究班を発足させて欲しいと、私達の会では強く求め、国会議員への陳情を始めています。日本ではレトロウィルスは研究 されてこなかったのですから、アメリカの研究者を招いて、シンポジウムを開いていただけないものでしょうか。私達患者達は、CFSを深刻な病気と認め、厚 生労働省でCFSを真剣に研究していただきたいと、切に願っています。

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