医療ガバナンス学会 (2010年10月27日 06:00)
朝日新聞社に適切な医療報道を求めます
医療報道を考える臨床医の会
http://iryohodo.umin.jp/
発起人代表 帝京大学ちば総合医療センター 小松恒彦
私たちは、全国の病院・診療所に勤務し、患者さんと共に、日々臨床現場で診療を行っている医師です。朝日新聞社のがんワクチン報道に対し抗議し、当該記事の訂正・謝罪、同社のガバナンス(組織統治)体制の再構築を求め、署名募集を行います。
去る2010年10月15日、朝日新聞朝刊1面に『「患者が出血」伝えず 臨床試験中のがん治療ワクチン 東大医科研、提供先に』と題する記事が掲載さ れました。記事には医学的誤り・事実誤認が多数含まれ、患者視点に欠けた医療不信を煽るものでした。記事報道を受け、当該臨床研究のみならず、他のがん臨 床研究の停止という事態も生じました。
10月20日には、患者会41団体が「がん臨床研究の適切な推進に関する声明文」を発表しました。声明は「臨床研究による有害事象などの報道について、 一般国民に誤解を与えず、事実を分かりやすく伝える報道を行う」ことを求めるものでした。しかし10月21日の朝日新聞朝刊は、『がんワクチン臨床試験問 題 患者団体「研究の適正化を」』と、患者会で問題とされたのが、報道ではなく臨床研究であるかのように重ねて歪曲を行いました。
10月22日以降、医科学研究所清木元治所長、2学会(日本癌学会・日本がん免疫学会)、オンコセラピー・サイエンス社、そして日本医学会高久史麿会長 から朝日新聞報道に対する抗議声明が出されました。抗議では、記事に事実誤認および捏造の疑いがあることが指摘されています。読売・毎日・日経・週刊現代 の各紙誌がこの声明を報じましたが、朝日新聞は10月23日記事で同社広報部の「記事は確かな取材に基づくものです」とのコメントを記し、当該記事につい て真摯に検証する姿勢を見せておりません。
以上の経過から、朝日新聞社は、信頼される言論報道機関としてのガバナンスに欠けていると判断せざるを得ません。
私たちは、朝日新聞社に対して適切な医療報道を求め、以下の提言を行います。賛同いただける皆様からの署名も募集いたします。署名は、朝日新聞社の社長及び『報道と人権委員会』(社内第三者機関)に提出いたします。
記
(1) 東大医科研がんペプチドワクチン記事の訂正・謝罪を行うこと
(2) 同記事の取材過程の検証を行い、再発防止策を立て、公表すること
(3) 今後、がん診療・研究など医療に関しては事実を分かりやすく冷静に伝えること
以上
発起人(順不同)
小松恒彦 帝京大学ちば総合医療センター 教授 (代表)
濱木 珠恵 都立墨東病院内科 科長
満岡 渉 満岡内科 院長
神津 仁 神津内科クリニック 院長
山野 嘉久 聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター 教授
岩田 健太郎 神戸大学医学部附属病院 教授
中村 利仁 北海道大学大学院医学研究科 助教
比留間 潔 比留間医院 院長
谷岡 芳人 大村市民病院 院長
平岡 諦 健保連大阪中央病院 顧問
竜 崇正 千葉県立がんセンター 前センター長
森下 竜一 大阪大学大学院医学系研究科 教授
小鷹 昌明 獨協医科大学神経内科 教授
小原 まみ子 亀田総合病院腎臓高血圧内科 部長
中島 利博 東京医科大学医学総合研究所 教授
大森 敏秀 大森胃腸科 院長
鈴木 博之 鈴木内科医院 院長
吉永 治彦 吉永医院 院長
新家 眞 公立学校共済組合関東中央病院 院長
和田 豊郁 久留米大学病院情報部 部長
千葉 敏雄 国立成育医療研究センター 副センター長
高見沢 重隆 たかみざわ医院 院長
長谷川 修 横浜市立大学医学部
鈴木 真 亀田総合病院産科 部長
加藤 宣康 亀田総合病院 特命副院長、主任外科部長
黒川 衛 全国医師連盟 代表
鈴木 ゆめ 横浜市立大学付属病院 教授
佐藤 祐二 筑波記念病院血液内科 部長
一色 雄裕 筑波記念病院血液内科 医員
田中 浩明 大阪市立大学腫瘍外科 講師
成子 浩 成子クリニック 院長
矢野 秀朗 国立国際医療センター 医師
大西 達也 ららぽーと横浜クリニック 院長
鈴木 伸明 山口大学医学部消化器・腫瘍外科 助教
杉浦 史哲 近畿大学医学部外科 助教
副島 秀久 恩師財団済生会熊本病院 院長
長尾 和宏 長尾クリニック 理事長
署名活動に賛同いただける皆様からのご署名は、下記のサイトからお願い申し上げます。
http://iryohodo.umin.jp/