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Vol.22262 オフ会まで開催、調子に乗る投稿者たち300超のアカウントを公開 ! (シリーズ「誰が私を拡散したのか」第4回)

医療ガバナンス学会 (2022年12月27日 06:00)


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Tansa リポーター
辻麻梨子

2022年12月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

性的写真・動画の売買をしているアプリ「動画シェア」「アルバムコレクション」を、自社のストアで提供していたGoogleとAppleに対して、私はその責任を問う質問状を送ってきた。最初の質問状が9月5日。それからも複数回連絡し、最後にメールを送ったのは11月3日だ。

しかし、いまだに両社からの回答はない。Googleは9月13日に動画シェアをストアから取り下げたが、その理由は不明だ。利用者への注意喚起などもしていない。

この間、加害者たちは性的写真・動画の拡散を続けている。Twitterでの宣伝行為もまったくと言っていいほど、減っていない。毎日数百件の投稿を繰り返している。

投稿者たちに圧倒的に欠けているのは、やっていることが犯罪であるという自覚だ。犯罪行為をまるで趣味であるかのように楽しみ、やりたい放題だ。被害者の性的な写真・動画でカネを稼ぐ投稿者たちのTwitterアカウントを、私は公開することにした。

●「普通の人たち」がオフ会

「名古屋会 オフ会始まりましたぁ〜」

11月4日、動画シェアやアルバムコレクションでの性的写真・動画の投稿者らが集まり、「オフ会」を開催している様子がツイートされていた。居酒屋に集まりピースサインをした写真や、名古屋を車で観光している様子を載せている。写真に写っているのは、投稿者を含む20〜50代ほどの男5人と女2人だ。

ツイートには、他の投稿仲間からもコメントがついている。
「普通の人たちに見える」「飲み会行きたいな〜」

別の投稿者たちは、「顧客」であるフォロワーへの感謝を綴っていた。

「1万人フォロワーありがとう。これもみんなのおかげです。これからもスペースしたりみんなと絡みたいです!これからもまだまだ未熟者の次元(兄貴)をよろしくお願いします」

「色んな方々のお陰で、1日200人前後フォロワーさんが増え続け、今があります」

被害者を踏みにじっておきながら、この言い草だ。

●潜入取材アカウントに届いた大量の盗撮カタログ

オフ会を開いたり、感謝の弁を述べたりしている投稿者たちはごく一部にすぎない。2つのアプリを使い、性的写真や動画を売っているアカウントは、調べられただけでも300以上あった。彼らはどのようにして、性的写真と動画を売っているのだろうか。

私は「潜入取材」をすることにし、投稿者を装ったアカウントをTwitterに作成した。

11月26日、熱心に宣伝を行う投稿者の一人からダイレクトメッセージが届いた。他の投稿者と同様に、アルバムコレクションなどのキーワードを入れて宣伝ツイートをしていた人物だ。私がフォローをすると、すぐにDMが届いた。

「逆さ撮り販売中なのでよろしくお願い致します」

逆さ撮りとは何なのだろうか。相手は「カタログ」と称して、たくさんの動画が保存されていることがわかる、スマホの画面を送ってきた。

相手のスマホ画面に一覧で表示されていたのは、どれも女性のスカートの中を下から撮影した盗撮動画だった。被害者のほとんどは、制服姿の学生のように見える。マスクはしているが、顔が写ったものもある。

動画は204本あり、1本あたり10秒〜30秒程度。大量の性的動画を所持していることを伝えるため、この宣伝カタログを送っているという。潜入取材をしている私にも、「全てオリジナルです」とアピールしてきた。

動画の価格は204本で6000円。その後「今ですと格安です」と、3000円まで値下げすると売り込んできた。

その数日後、投稿者のアカウントが消えていた。Twitterは、規約に違反するアカウントを利用停止(凍結)にしている。

だが、すぐに別のアカウントから連絡が来た。

「さっきまでお話させて頂いたものです。アカウント凍結を喰らいましたので、もし良ければこちらのアカウントをフォローして頂いて、DMくれますと助かります」

Twitterはアカウントの利用を停止されても、メールアドレスがあれば別のアカウントを作成できる。そのためイタチごっこが続くのだ。

●稼ぎ方指南でさらにカネ儲け

投稿者たちに犯罪行為の指南をし、さらにカネを稼ぐ人物もいる。Twitterのプロフィール欄には「エロ界隈のインフルエンサー」。2.3万人のフォロワーがいる。

この人物はメッセージアプリでグループチャットを作成し、Twitterのフォロワーを増やす方法や、アプリで収益を上げる方法などを指導している。現在グループに参加しているメンバーは46人。グループに参加するためには、PayPayかAmazonギフト券で1000円払う必要がある。

「フォロワー目的なら、鍵なし投稿が必須」
「更新頻度に問題がありますね」
「10個くらいデータを用意しないと」

「鍵なし投稿」とは、動画シェアやアルバムコレクションに投稿されたフォルダに鍵をかけず、無料で公開するということだ。まずはTwitterで無料のフォルダを宣伝し、顧客を集めろとアドバイスしているのだ。

自分が集めてきた写真や動画をチャットルームに送信し、参加者がアプリへの投稿に再利用することも許可していた。

●「公開指名手配」

今年の夏に取材を始めて以降、私は加害者たちの情報をコツコツと集めてきた。彼らが性的商品をばら撒いているツイートや、プロフィールの情報も保存済みだ。

今回の記事では、その情報を公開することにした。GoogleやApple、アプリの運営者たちはこの事態を無視しているが、これ以上好き勝手にさせるわけにはいかないからだ。

一部のアカウントは、現在凍結されていたり、削除されていたりする可能性がある。同じ投稿者が凍結対策として、予備のアカウントを作成していることもある。フォロワー数は、10月25日から12月7日の間に調査した結果を記載した。

これらの投稿者たちに有効なのはまず、Twitter社に利用規約違反を報告し、アカウントを凍結させることだ。アカウントを作り直されるかもしれないが、少しの間でも拡散を止めることができる。

あなた自身が拡散の被害に遭っている場合は、法律に基づいて「発信者情報開示請求」を行うことができる。開示請求が認められれば、拡散を行なった人物の名前、住所、電話番号などの個人情報が提供される。

その場合、自分の写真などが載っている証拠を、スクリーンショットや写真撮影などで保存しておくことが大切だ。

=つづく
※この記事の内容は、2022年12月7日時点のものです。

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公式ウェブサイト:https://tansajp.org/

●シリーズ「誰が私を拡散したのか」: https://tansajp.org/investigativejournal_category/kakusan/

●シリーズの取材費を寄付する: https://syncable.biz/campaign/3920

 

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