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Vol.23023 友達として杉浦蒼大を側で応援していて思うこと

医療ガバナンス学会 (2023年2月7日 06:00)


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医療ガバナンス研究所インターン
慶應義塾大学医学部4年
谷 悠太

2023年2月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2023年1月26日(水)、運良く午前中に病院実習が終わり、そのままの足で医療ガバナンス研究所に顔を出すと、上研のみなさんがちょうどお昼ご飯を食べているところだった。その面々の中には友人の杉浦蒼大の顔もあった。「(友人の壮行会で)杉浦と朝まで飲んだのはもう2週間も前かぁ」と思いながら椅子に座ろうとすると、「おー、谷くん、今日は歴史的な日になるぞ!」と、いつにもまして大きく元気な上先生の声が聞こえてきた。どうやら今日、杉浦の裁判に動きがあるようだ。昨年9月に退けられた1審東京地裁判決を東京高裁が差し戻すらしい。そして何よりこれは、大野病院事件以来の「異例」の判決らしい。詳しいことはあまりわかっていないが、杉浦の裁判が再び動き出す。文科省で会見を開いてから早や半年ーー。2週間前の飲み会でも思ったが、杉浦の顔にだいぶん生気が戻ってきた。ぎらぎらと日が照りつける残暑のなか、真っ白な顔で生気を失いかけていたのとはまるで別人だ。

僕は、杉浦と同じく医療ガバナンス研究所でインターンをしており、杉浦とは裁判の前からの友達だ。昨年の初めは福島のワクチンコホート研究の手伝いで毎週のように顔を合わせていた。夜通しデータのチェック・整理をしたり、うまいラム肉をお腹いっぱい食らったり、セリアで買ったボールでサッカーをしたり。5月の上旬だっただろうか。杉浦と福島にいった次の週、彼からの返信が3日ほど途絶えた。いつもはすぐに返ってくるのに、何か彼の身にあったのか、研究が嫌になったのかと思案したのを覚えている。不安が募り彼に何度か電話をかけたが反応はなかった。翌日か翌々日か、詳しくは覚えていないが、折り返しの電話があった。
「(ガラガラの声で)すいません… コロナで高熱でもう何も出来ない状態で… 返信できてなくてすいません…」
「おぉコロナか。そんなしんどいなかごめんよ、元気になったらまた連絡ちょうだい!」
このやり取りからまもなくして、杉浦を中心にいろんなことが目まぐるしく起こり、8月の文科省での記者会見、9月の東京地裁判決を経て、今日の1審東京地裁判決の差し戻しに至る。そして、これからよりいっそうたくさんのことが目まぐるしくおこる予感がする。昨年から側で彼を応援するなかで、僕が感じたことを共有させていただきたい。
※ 杉浦の差し戻し判決については、以下の記事を参照いただきたい。
「東大コロナ留年訴訟、差し戻し 学生の訴え却下した1審判決を東京高裁が破棄」( https://www.sankei.com/article/20230126-FGPHLIJCRZJ6VH565ETKZF7MTI/
「東大医学生「留年」訴訟、高裁が地裁判決を取消・差し戻す( https://www.m3.com/news/open/iryoishin/1113067 )」

この一年間の杉浦の表情は、裁判前、裁判直前・直後、3ヶ月後、半年後で全然違う。裁判は本当に杉浦のためになっているのかーー。杉浦の様子の変化を目にするたびに、何度もそう自問した。

裁判前の時期は、杉浦は裁判をやるべきかやるべきでないかで激しく揺れていた。週単位で「やるぞ」と意気込んだり、「やるべきではないか」と漠然とした不安に苛まれたり。アドレナリンは出ているものの感情が安定していない印象だった。というのも、事あるごとにいろんな意見が彼の耳に入ってきていたからだ。上先生や元官僚のTさん、井上弁護士の後ろ盾がありながらも、杉浦のためを思って裁判をするべきではないという意見もあった。そういった状況のなか、僕は、「裁判といっても自分にはよくわからないし、杉浦本人もまだよくわかっていなさそうだな… 杉浦のために何かできることがあれば手伝おう。」と感じていた。

裁判の直前・直後の時期は、目の前の裁判の準備だけではなく、裁判に向けた記者会見など、文化祭のように色んなやるべきことがどんどん押し寄せてきた。杉浦は、上先生やTさん、井上先生、さまざまな記者さんとやりとりしながら、目の前のやるべきことに食らいついていた。僕は準備の一部をお手伝いしていたが、裁判をすると決めた杉浦は一日一日必死に頑張っていて、精神的にはすごくいい状態にあるように見受けられた。そんな杉浦を見て、「裁判がどうであれ、いまの彼の経験はかけがえのないものになるんだろうな。裁判を乗り切れるように手伝おう。」と思っていたことを覚えている。

しかし、提訴から月日が経つにつれ、杉浦は目に見えて精神的に疲弊していっていた。昨年9月の東京地裁判決による門前払い以降、裁判がほとんど進捗しなかったからだ。その間にも大学の同級生が授業を受けているなか、見通しのつかない裁判の状況に不安を抱えているようだった。何度か杉浦に声をかけてご飯に一緒にいったが、真っ白な顔で生気を失いかけた彼の顔をよく覚えている。その姿に、僕は「やはり裁判は彼のためにならないのではないか。留年を甘んじて受け入れ、一年を海外に行ったりしたほうが彼のためになっていたのではないか。」と思っていた。

そして、ここ最近の杉浦は、年末年始の地元への帰省や福島のワクチンコホート研究の手伝いを再開したこともあってか、悩みを溜め込みすぎずとても元気な様子である。いまの状態の彼であれば、東京高裁の差戻しの判決はこの上ない追い風になっているように思う。裁判は本当に杉浦のためになっているのかーー。最近の彼の様子をみながら僕が思うことは、「(裁判を)やると決断した以上、その問い自体あまり意味のないもので、彼が頑張れるように、彼のために自分なりにできることをしていこう。」ということだ。

杉浦の裁判は、裁判史に残る重要な判例になるのかもしれないし、「ひとりがアクションを起こせば社会は変わる(たとえそれが東大であっても)」というメッセージを持つのかもしれない。しかし、それ以上に僕が彼を側で応援ながら感じていることは、信頼できるチームの重要性だ。彼は、何度も、孤独になりかけ、精神的にダウンしかけた。その時に支えてくれるチームがいたからこそ、この裁判は杉浦のためになっているのだと思っている。大野病院事件を体験している上先生、百戦錬磨の弁護士の井上先生、元官僚のTさん、そして上研のスタッフの皆さんという厚い信頼関係に裏打ちされたチーム。そのようなチームが杉浦のために動いたからこそ、いまがあるのだと思っている。もしこのチームがいなければーー。もちろん、裁判に至らないかもしれないし、至っていたとしても裁判の途中で挫折してしまっていたことと思う。

杉浦の裁判が社会のためにどんな影響をもつのかは僕にはあまりわかっていないが、この裁判が彼にとってかけがえのない有意義な経験になることを願っているし、自分にできる範囲で彼をサポートしていきたい。

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