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Vol.23025 デジタル田園都市国家構想の一環として地域活性化のための継続的出産ケア推進条例を制定すべき

医療ガバナンス学会 (2023年2月9日 06:00)


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この原稿は月刊集中2月末日発売号に掲載予定です。

井上法律事務所所長 弁護士
井上清成

2023年2月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1.デジタル田園都市国家構想(デジ田)

2022年12月23日、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」が閣議決定された。略称は、デジ田(デジデン)というらしい。もともとは「地方創生」であり、その後の「まち・ひと・しごと創生」へと続き、さらに昨年末にバージョンアップされて、様々な分野が取り込まれた。
特に着目したいのが、「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」という分野である。
「年々深刻さを増す人口減少・少子化」に注目して、「結婚・出産・子育てへの支援」(同総合戦略14~15頁)に努めるため、「市区町村における『こども家庭センター』の設置を推進し、全ての妊産婦・子育て世帯・子供に対する包括的な相談支援を行」い、「産科医の地域偏在等に起因する地方の周産期医療体制不足を補完し、安全・安心に妊娠・出産ができ、妊産婦本人の居住地にかかわらず適切な医療や保健サービスが受けられる環境を全国で実現するため、・・・都道府県及び市町村が実施する分娩を取り扱う医療機関へのアクセスの確保等を通じて、関係者が連携して妊産婦の希望に寄り添って継続的な支援を行う体制の整備を図る」(同114頁も同様)ことを目指す。また、助産所や助産師を想定しつつ、「地域における分娩を扱う施設の確保、地域における助産師の活用に関して、地域医療介護総合確保基金等を通じて支援する。助産師について、助産師の就業場所の偏在を是正する施策や正常妊娠・正常分娩における助産師の活用を推進する」ことも明示している(同114頁)。

2.妊娠・出産・産後を通じた継続ケア

「産みたくない人」には「産まない権利」があるのと同様に、「また産みたい人」には「また産む権利」があると言ってよい。そして、「また産みたい人」(次子の出産意欲がある妊産婦)がまた産むこと(多子化)によって、少子化のいくばくかの改善につながるとも言い得よう。
この点を出産ケア政策会議・共同代表の古宇田千恵氏は丹波新聞の「知ってる?『My助産師』(2)お産は本来『気持ちいい』妊婦支える『伴走者』」という記事(2020年2月16日付)で、「お産や子育ては本来、『気持ちのいい』もの。そうでなければ、人類は繁栄しない。なのに、バーストラウマなど、さまざまな要因で『気持ちよくない』ものになることが多い」とし、「私たちはお母さんに『産むって楽しい』と思ってもらいたい。そして、『また産みたい』と思えれば、少子化の改善にもつながるはず」と呼びかけている。
確かに「気持ちのよい」お産であれば、「産むって楽しい」と感じられるであろうし、「次子の出産意欲」にもつながるであろう。ただ、そのような効果をもたらすには、何人もの医師・助産師・看護師らがローテしつつ交替を重ねていたのでは必ずしも十分ではなく、1人の助産師による妊娠・出産・産後を一貫させた継続ケアの方が有効適切と考えられる。病院、診療所、助産所、自宅(出張)での分娩といった場所は問わず、重要なのは1人の助産師の継続性と言ってよい。
この点を押さえた上で、さらに、各地域への分散型の助産所開設(増設)を推し進めるならば、デジタル田園都市国家構想にも沿うものとなっていくであろう。

3.デジ田の一環としての条例制定の提言

以上のことに関連した法律としては、すでに、まち・ひと・しごと創生法、こども基本法、成育基本法などが制定されている。そこで、「妊産婦への支援」をデジ田の一環として、さらに法的に具体的に推進していくためには、各都道府県で「継続的な出産ケア等推進条例」を制定していくことが適切であろう。
筆者の私案として、条例の案文(全文)を以下に示すので参考にされたい(なお、「道」「道民」は「県」「県民」などに代えれば、各都道府県でそのまま使えるであろう)。

デジタル田園都市国家構想の一環として助産所を増設して妊産婦に対する継続的な出産ケア等の提供をし活性化した地域作りを推進する北海道条例
http://expres.umin.jp/mric/mric_23025.pdf

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