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Vol. 347 現場からの医療改革推進協議会第五回シンポジウム 抄録から(2)

医療ガバナンス学会 (2010年11月11日 06:00)


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医療とデザイン/アート

**シンポジウムは事前登録制となっており、参加受付は終了しております

2010年11月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


小林一彦(JR東京総合病院血液内科主任医長)

“古代から存在していた各地の伝統的な医療には、其々に人間と世界に対するヴィジョンが存在しており、その点では、医学は各世界観の上に構築されている、 といっても過言でないだろう。当然、その世界観が、それぞれの文明の芸術表現にも顕現し、その結果、医学と芸術は根底でつながっている(南條史生、科学と 芸術が出会う場としての身体、 医学と芸術p10-11、一部略してあります)”
「問いをたてることができれば、その問題は解決されたも同然だ」、などと言われます。でも我々は、診察室の中で直面する様々な軋轢をうまく言語化できているのでしょうか。
医学技術は凄まじい速さで進展を続けています。現代医療は、まず解剖=人体の細分化からはじまり、巷間で「ヒトは分けても分からない」などと言われながらも、更に人体を細分化する方向に進み、ついにはゲノム科学を臨床応用する時期に入りました。
一方で、ヒトを地球/環境の一部と捉え、その延長線上での全人的医療を求める声も上がるようになりました。極端な例では、自然こそが善、人工物は悪、との信念から新生児へビタミンK投与や小児へのワクチン接種を拒否するなどの事例が報道されています。
ともすれば対立しがちなこの両者には、人体に対する世界観の違いが根底にある、といえば言いすぎでしょうか。そして、その違いはますます広がりつつある、と。
どうやら二つの世界観をブリッジする必要がありそうです。
本セッションでは、お二人の演者をお招きしました。言語化出来ない世界観の違いを、デザインが、アートが、如何に繋いでゆくのか”はじめの一歩”の事例をご紹介頂きます。
広瀬氏は森美術館 “医学と芸術展”を企画され、医療に関する芸術作品を経時代的に展示し、医療機器が内包するアートを顕在化してみせ、通底する世界観の移り変わりを顕現して各方面から称賛を集めておられます。
細山田氏は、言わずと知れた”医師と患者をつなぐ:ロハスメディカル誌”のデザインを担当しておられます。圧倒的な情報格差がある両者の間を如何に繋ぐのか、日々情熱的なお仕事にて、絶妙なデザインでロハスメディカル誌を支えておられます。
本シンポジウムにとっては、一風変わったセッションになります。どうぞ、肩の力を抜いて、右脳で楽しんで下さい。
会場からの活発な議論を期待しております。

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広瀬麻美(展覧会企画者)

2009年11月28日から2010年2月28日にかけて、六本木ヒルズ53階にある森美術館において”医学と芸術展;生命と愛の未来を探る”が開催されました。
この展覧会は、科学(医学)と芸術という一見相反するエリアが出会い、そして発展していく場所としての身体をテーマに、医学・薬学の研究に対し世界最大 の助成を行っているウエルカム財団(英国)の協力を得て共同企画されたものです。中世からの解剖図や実際に使用された各国の医療器具など貴重な医学資料に 現代美術や日本の古美術作品を加え、医学と芸術、科学と美を総合的なヴィジョンの中で捉えたものです。本展は医学が人々の健康とより幸福な生活のために果 たしてきた役割、また人間の生と、たとえ医学がどれだけ発展しても避けて通ることのできない死の意味を問い直そうという意図で企画されました。
科学と芸術の統合を体現する業績を残した象徴的なクリエーター、レオナルド・ダ・ヴィンチ作の解剖図3点も英国ロイヤルコレクション(エリザベス女王陛 下所蔵)より借用。ダ・ヴィンチ作品の出品とともに、従来博物館で展示されてきた古い医学資料を森美術館ならではの視点で再構築し、現代美術と並列した展 示が話題となり、93日間の会期中、約34万人の来場者がありました。またパブリシティーも約800件、雑誌新聞テレビ等で取りあげられるなど各方面で話 題となりました。
本シンポジウムでは、どのような展示が実際に行われたのかを展示風景や出品作の写真で紹介し、観客やマスコミの反応もお伝えしたいと思います。

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細山田光宣(細山田デザイン事務所社長)

わたしたちの生活のなかで、「デザイン」されていないものはひとつもない。デザイナーなどのビジュアルにかかわっている人たちが、積極的に関わった制作 物はもちろんのこと、名前と住所を単に入れ込んだだけの名刺であっても、極論をいえば自然界のモノでも、そこに「デザイン」は生じている。わたしたちの各 自の志向性や行動範囲によって、それは目に飛び込んでくる。また、デザインされたモノを所有することにより、生活のなかにそれは潜み込む。
そして、好むと好まざるにかかわらず、「デザイン」されたものは雄弁にモノを表現していく。街中のビルボードも表現しているが、家庭の中に入り込んで毎 日のように目にしなくてはならないもの、もしくはその行動範囲において頻繁に出会うものは、おのずと各自の深層に影響を与えていくのではないかと思う。
さて、わたしたち日本人は、個体差はあるとはいえ、ほぼ全員医療機関を利用する。その時に洋服のブティックやレストランを選ぶように、「デザイン」性で 選ぶ事は稀である。もっと順位の高い選択ポイントがあるからだが、一旦医療機関に足を踏み入れると、「デザイン」は無防備な状況の利用者(患者とその家 族)にさかんに語りかけてくる。
病院のエントランスから待合室に向かう動線、診察受付のカウンターのデザインやそれを示す看板の書体、注意書きのボードのデザイン、待ち合い室に置いて あるパンフレットや雑誌、診察室のありかを示すサインボードの色と書体、診療が終わって渡される処方箋、薬局への道順が書いてある用紙、薬袋のデザイン。 あげていくと切りがない。
わたしたちは知らず識らずのうちにこれらの制作物や空間から発信されている情報を受け取り、場合によっては気持ちが楽しくなったり静まったり、逆にネガ ティブなイメージをいだいたりしていることを忘れてはいけないと思う。色が心理的効果に影響を与えることが周知の事実であるように、「デザイン」も影響を 与えていると思われる。
わたしたち「デザイナー」が考える事は、発信者側が特に意識していなくても、何かしらのメッセージを伝えてしまっている視覚的な伝達物を、発信者は積極的にコントロールして、ポジティブなメッセージを伝えていくべきだということだ。
医療現場において治療中の利用者に心地よい環境を創り出していくことは、間違いなく治療にも影響を与えることであり、さらに医療従事者にとっても、働く場が好ましい環境になっていることは大事であることは言うまでもないと思う。

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