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Vol.23083 マスク着用「個人の判断に委ねる」から3週間 曖昧過ぎる対策を続ける日本への疑問

医療ガバナンス学会 (2023年5月15日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2023年4月5日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2023040300033.html?page=1

内科医
山本佳奈

2023年5月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

日本における新型コロナウイルスの感染対策としてのマスク着用が「 個人の判断に委ねられる」ことになってから、はや3週間が経過しました。着用ルールが緩和された週末に実施された世論調査によると、7割近い人は依然としてマスクを着用し続けていると回答したといいます。

厚生労働省によると「医療機関を受診する時や高齢者施設に訪問する時、混雑した電車やバスに乗車する時は、重症化リスクの高い方への感染を防ぐためにマスクの着用を推奨します。また流行期に重症化リスクの高い方が混雑した場所に行く際は、感染から自身を守るための対策としてマスクの着用が効果的であることから、マスクの着用を推奨します。しかしながら、個人の主体的な選択を尊重し、「マスクの着用は基本的に個人で判断してください」となっています。

日本に数年間滞在歴があり、現在は米国に在住している友人は、日本各地で例年よりも早く桜の開花や満開を迎えているという昨今のニュースを見て「まだマスクをしている人が映っているよ。でも、そうなるだろうと思っていたよ」と言います。

サンディエゴに長期滞在中の私も、同じような花見に関する報道を拝見し、マスクをまだ着けている人が結構いることが気にかかりました。「花見場所は屋外ではあるもののとても混雑していることから、マスク着用が感染対策として効果的である」と判断したというよりは、「マスクをしていないと、(なんでマスクを着けていないんだよという)周囲の視線が気になるから」や「マスクをつけている人がいるから、まだ念の為、マスクをしておいた方がいいだろう」といった考えからなのだろう、と容易に想像できたことから、妙に納得することもできたのでした。

さて、先日とあるメディカルセンターを付き添い者として訪問しました。昨年末からの長期滞在中、患者として鍼やカイロプラティック、歯科医院を訪れてはいるものの、一度もマスクを着用するように言われたことはありません。そのため、その日もマスクを持参することなく訪れたところ、入口には、「訪問者は、施設内では鼻と口にフィットしたマスクを着用しなければならない」と書かれており、マスクを持参していない人が着用できるようにマスクがたくさん置いてあったのです。

アメリカのカリフォルニア州では、昨年の春に屋内や公共交通機関でのマスクの着用義務が解除されています。また米国疾病予防管理センター(CDC)は、すでにCOVID-19多発地域でない医療施設は医師や患者などの全員のマスク着用を不用とすることができるとし、アメリカでは昨年の9月末にはすでにCOVID-19の多発地域以外の医療施設での一律のマスク義務が廃止されています。

そのため、日本を離れて以降、私はマスクなしの生活を送っています。スーパーマーケットやジム、ドラッグストア、レストランやカフェなど、日常生活を送る上でよく訪れる場所でマスク姿を見かけることはめったにありません。接客業をしている一部の人が、マスクを着用しているのを見かける程度です。

一方で、頻繁に見かけるのはジムやカフェ、スーパーマーケットなどに設置されている消毒液です。消毒することを強要されることや勧められることは決してありませんが、自主的に消毒している人を頻繁に見かけます。公園では、遊び終わったときなどでしょうか。お母さんが子どもたちに消毒するように声をかけている姿もよく目にする光景の一つです。

さて、訪問先のメディカルセンターでは、訪問者だけでなく、勤務する医療従事者はみな、マスクを着用していました。現在、サンディエゴにおけるコロナ感染レベルは「低い」こと、そしてCOVID-19の多発地域以外の医療施設での一律のマスク義務が廃止されたことから、マスクの着用は「必須(must)」ではないと思っていたので、付き添いとして訪問した私は、マスクが必須であることに対して少々驚いてしまいました。

しかしながら、患者としてメディカルセンターを訪れた友人は、検査や診療など院内滞在が終了するまでマスクの着用が求められたことに対し、「高齢者や体調が悪い人がたくさん訪れている場所でマスクの着用を求めることは、理にかなっているよ」と納得している様子でした。

日本では現在、マスク着用の目安をもとに「 個人の判断に委ねられる」という、曖昧な感染対策と言わざるを得ない状況ですが、感染リスクが高いと考えられるエリアや場所ではマスクの着用が求められ、そうでないところではマスクの着用が求められないというカリフォルニアにおける感染対策は、わかりやすく、合理的な対策だと改めて実感した経験となりました。

 

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