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Vol. 359 高額療養費制度の見直し-民主党のチーム医療に期待

医療ガバナンス学会 (2010年11月19日 06:00)


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東京大学医科学研究所 特任研究員 児玉有子
2010年11月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


11月8日の日経新聞1面に高額療養費制度の見直しについての記事が掲載された。内容は10月28日に他紙が報じたのと変わらない。なぜ、10日も過ぎて、この話題を1面トップで配信したのだろうか。
他紙は、同様の内容を「「高額療養費制度」見直し試算」(読売)、「高額療養費制度 見直しで新試算」(毎日)と、高額療養費制度を見出しで触れている が、日経は「医療費上限、高所得者上げ-政府検討年収800万円軸に」であった。掲載時期、見出しにどんな意味がこめられていたのだろうか。
高額療養費制度の見直しは、すでに既成事実化された感があるが、果たして、これでいいのだろうか。

【新しい枠組みで負担が減ると考えられるケースは12.3%】

10月27日、厚労省社保審医療保険部会で、高額所得者の上限額を引き上げ、年収210万~300万円世帯の負担を軽減するという案が厚労省から提示された。しかし、これで問題は解決されるのだろうか。十分に検討されたとは言い難い。
我々は、慢性骨髄性白血病(CML)患者を対象とした研究結果をもとに、新制度によって、どの程度の患者が救済されるか検討した。今回の見直し対象に なっている70歳未満患者について、所得と家族構成を加味し、今回新たに減額が考えられる対象者数を推定したところ、新たな枠組みに適応されると予想され る世帯は、回答者の12.3%であった。

もちろんこの割合を全ての対象には適応できないが、病気発症後も比較的仕事を継続できると言われているCML患者において、この割合であることは興味深い。つまり、仕事の継続が難しい対象においてはより少ない割合しか存在しないと推測される。
今回の見直し案では減額されるケースにおいても減額幅は月9千円、毎月3万5千円以上の負担は続き、今回の案では長期間に渡り高額に払い続けている大部分の患者の負担は軽減しないのだ。
短期間の負担は高額療養費貸付制度や民間保険の利用で持ちこたえることも可能だ。しかし、現在活用可能な医療費助成制度のいずれも適応にならず、制度の 谷間で長期間高額な医療費負担が強いられるがんやリウマチ、1型糖尿病、移植後の患者などの実態がある。長期間に渡る毎月44,400円の医療費負担の見 直し、ばらまきではなく、超長期間負担する世帯、医療費が生涯ローンのようになっている世帯への支援こそ求められている。

【患者さんからの声】

この結果を患者に伝えたところ、以下のような反応があった。

「年収800万円は高所得に思えるかもしれないが、患者が子供の場合には、特に児は民間の医療保険にも入れないため、将来の病気に備えること難しい」

「適応外治療にともなう費用負担や教育費等を差し引くととても余裕のある金額ではない」

「この問題について厚労省の担当者とディスカッションした際には、何が問題かは共通認識を持てたのに、どうしてこんなにピントのずれた案が出てくるのだろうか」
日経新聞一面の報道と、患者の受け取り方は違う。

【国民的議論を、そして平等な解決を】

今年2月には、斎藤進議員の衆議院厚労委員会での質問で大きくこの問題が取り上げられた。答弁で足立信也政務官は「どこに負担を求めるかという議論は、 まさにこれから私は国民的議論になっていくべきであろう。この高額療養費制度だけにとどまらず、今までの、枠を決めてその枠の中にどの疾患が入ってという ような決め方では、いずれ、五千から七千と言われている希少疾患すべてに対応することはできない。違った枠組みを検討すべきであろう。(要旨)」と答弁し ている。私も賛成だ。

CMLにおけるグリベックのように、夢のような薬が登場により生命は保証される一方で、経済的負担が顕在化し、高額療養費制度の見直しが始まった意味を 考える必要がある。今後、研究が進みよりよい薬、よく効く薬が登場することは誰でもが期待している。今ここで、どのような疾患であっても、よりよい薬を安 心してつかえる制度に変更しなくては、延々この問題を繰り返すことになる。疾患ごとに区切っての制度は延々と新しい疾患概念や新しい薬が登場するたびに問 題が顕在化することを意味するのだ。それは誰にとってもお金と時間の無駄である。

疾患ごとの対立を生まない仕組み、疾患や治療、薬の種類で区切らない医療費助成の方法について冷静な幅広い国民的議論が必要だ。

【民主党のチーム医療に期待】

CML患者からの高額療養費制度の見直しの声と民主党の関係は深い。2009年3月、患者たちは民主党がん議連の勉強会でグリベック服用にともなう経済 的負担を訴えた(http://medg.jp/mt/2009/03/-vol-61.html)。そして、その後の民主党議員の素早い動きに患者はそ の解決を大いに期待した。そして09年衆議院選挙のマニフェストに「高額療養費制度に関し、治療が長期にわたる患者の負担を軽減する」と盛り込まれた。

2009年医療マニフェストの責任者であり政権交代後、厚労政務官として活躍した医師である足立信也氏の主導で高額療養費制度の見直しはスタートした。 この夏の選挙後、見直しのバトンは同じく医師の岡本みつのり厚労政務官、櫻井 充財務副大臣に受け継がれたが、まだまだ解決の糸口は見えない。今年度内の 解決は、両氏のこれからラストスパートにかかっている。民主党のチーム医療で多くの患者に恩恵が届くことを切望する。

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