最新記事一覧

Vol. 366 みんなで行こう!医療保険部会

医療ガバナンス学会 (2010年11月30日 06:00)


■ 関連タグ

諫早医師会 高原 晶

2010年11月30日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


1)委員に任命されたきっかけ

諫早医師会理事で飲んでいる最中、中医協の委員の要請話があり、一瞬のうちに酔いが醒めた。理事たちに報告したところ「医師会の仕事を分担して減らすので委員を受諾するように」との意見におされその気になった。
しかしその後中医協の人事がもめ、結局10月下旬に正式に発表され、中医協ではなく社会保障審議会の医療保険部会の委員となった。「中医協だけでなく、医療保険部会も日医外し、民主党シンパの委員任命」と報道された。
自分自身も周囲も「日本の医療を話し合える場に参加できる」と期待していた。当時医師会からの話はなかったものの、保団連、日本歯科医師会、日本腎臓病学 会などから要請書が送られてきた。会議の内容は厚労省ホームぺージの議事録をみていたが、実際にどのような進行、討議方法など分からないまま、「医師の代 表として発言する」などと長崎新聞に大見得を切っていた。任命は長妻大臣名で平成21年10月30日付け、任期は平成23年10月29日までである。辞令 ではなく人事異動通知書であり、「社会保障審議会臨時委員に任命する」となっていた。

2)社会保障審議会医療保険部会とは

社会保障審議会の下部組織である医療保険部会は、当時問題となっていた高齢者医療制度と市町村単位となっていた運営主体の再編、統合を検討する会として、平成15年設置された。後期高齢者保険制度の生みの親である。
すでに設置されていた中央社会保険医療協議会(以下中医協)との役割分担では「医療保険部会では高齢者医療制度と運営主体の再編、統合を議論」「中医協で は診療報酬体系を議論」すると明確に区分されていた。しかし平成18年、当時の日本歯科医師会幹部から中医協委員への贈収賄事件が発覚し、中医協改革が行 われこれに伴い、「社会保障審議会医療保険部会および医療部会において診療報酬改定の基本方針を策定し、これを元に中医協で具体的な診療報酬点数の設定等 にかかる審議を行う」事になった。この点が医療保険部会と中医協の立場を不明確にしているように思う。
なお社保審には医療部会もあり、医療供給体制を議論する場である。これまでの議事録を見てみると討議内容が医療保険部会と医療部会で重なる部分もあり、同じ討議を少し委員をかえて行っているような気がする。実際に重複している委員もいる。
なお廃止となる後期高齢者保険制度に代わる制度は医療保険部会ではなく新たに設置された「高齢者医療制度改革会議」にて昨年11月から検討されている。こ の会にも医療保険部会と重複している委員あり。部会設置当時の役割を果たす場ではなくなっている。ではいったい医療保険部会とはなんなのだろうか?

3)実際に参加した部会で

平成21年11月16日(月)初めて医療保険部会(第34回)に参加。委員は21名、初回参加は私を含め3名。資料は当日渡された。会議に先立ち約1時間 をかけて厚生労働省内で佐藤敏信医療課長と城克文医療費適正化対策推進課長からこれまでの審議内容に関してレクチャーを受けた。
この中で医療保険部会とは「医療保険制度体系に関する改革について議論するため、社会保障審議会の下に設置されている専門部会」との事であった。この年す でに政権交代前の7月15日と8月29日に2回だけ部会が開催されていたが、レクチャーでは小生は「遅れてきた委員」との厚労省の認識を再三披露され、か なりやる気をそがれた。同日部会は16時から18時までのきっちり2時間で淡々と終了した。
診療報酬上げを主張する医療側(医師会関連は日医の藤原理事と小生だけ)と診療報酬を上げる事は保険料を上げる事となるため診療報酬上げを認めない保険者 (こちらの委員が多い)はそれぞれの立場で話すのみ。意見をまとめるという会議ではなかった。救急医療、産科、小児科に手厚く、さらに病院に手厚い診療報 酬にする議案など、すでに厚労省の資料に基づくレールにのった話し合いであった。
小生は診療所と病院の診療報酬改定の根拠に開業医と勤務医の年収の差を持ち出すなと発言した。背負っている借金を考慮しないのであれば、開業医もまた立ち 去りサボタージュをするかもしれないと発言した。また診療報酬を上げている薬剤費に関して、後発品の使用ではなく、先発品を発売後の期間に応じて薬価を後 発頻レベルまで下げればすむのではないかと発言したが、厚労省官僚がこれまでの例を出し、当方の意見の実現が困難である事の説明をかなりの時間かけておこ なった。でも2時間できっちり終わった。発言内容が以前の2回と全くかわらない委員もおられ、討議内容、討議方法に疑問を持った。
以後12月8日までの毎週ウイークデイに2時間きっちりの会議に休診して参加した。短期間に集中して行われたのは「診療報酬」が絡んでいたためであった。本来下流のはずの中医協での診療報酬の話し合いがかなり先行していたためのタイトな日程と考えられた。

第35回は翌週の11月25日(水)に開催された。事前に大久保参議院の御紹介で日本歯科医師会大久保会長と日本歯科医師連盟の委員長を日本歯科医師会館 に訪問し会談した。医療保険部会では冒頭に医療保険部会の意義を尋ねた。「この会は診療報酬を話す会であるのか? もっと大きな保健体系を話す会ではない のか?」「診療報酬の基本方針を決めるとの事であれば、なぜ中医協の話し合いが先行しているのか?」「会議の内容もたたき台としての厚労省案は分かるが、 これに対する委員の発言はそれぞれの立場の主張のみで、委員長もまとめようとはしていない。これではこの会の存在意義はないのではないか?」
これに対し厚労省の弁明、各委員の意見(旧委員は意義ある会との認識、私と同じ任期の患者の会の新委員はこんな会議はメール程度で結構との意見)を述べて もらった。一応矛を納めた。この事はネット配信のm3comでも配信された。(12月1日医療維新:社保審こそ事業仕分けの対象)
また12月20日発行の日医ニュースおよび平成21年度日医活動報告書に「その他の委員」からの発言として記録されている。その後平成22年度診療報酬改定の基本方針が討議された。内容は発表されたとおりで、これを元に中医協で現在の診療報酬が決定された。
終了後、当時茨城県医師会長であった原中現日本医師会長と約2時間ほど会談させて頂いた。ほとんど先生の発言を拝聴するのみであった。内容はm3comで連続8回配信された。

中医協での診療側と派遣者側の激しい討論を目の当たりに出来たのが12月4日(金)第36回医療保険部会の前であった。部会開催時間が迫っても同じ会場で 行っている中医協が時間超過して、まだ討議中であったため約40分ほど聴講できた。安達委員などの医療側が激しく診療報酬上げを迫り、これに対して保険者 側が反論し白熱した議論が展開されていた。医療保険部会の淡々とすすむ会とは違っており、個人的には出来れば中医協に鞍替えしたいと思ったほどであった。
後日中医協の医療側の委員から「医療保険部会は死んでいる」と批判された。ごもっともな意見である。

なお36回ではじめて資料が前もって送られてきた。議題は (1)国保保険制度の見直しと (2)協会けんぽの財政問題についてであった。いずれの保険も 財政的に厳しいが、それを国保内、社保内で補う算段の検討であった。会議出席前に議題と資料をもって諫早市保険年金課を尋ね、資料内容と諫早市の現状をご 教示頂いた。これを元に部会に出席したが、あまり発言する場がなかった。国保内での問題点,社保内での保険組合と協会けんぽの差など主に保険者側が発言し た。その後議論の方向から裕福国保として医師国保が問題となりそうであった。このため12月7日長崎県医師国保の事務長から、長崎県医師国保の運営状況を お尋ねし、この資料を持って12月8日(火)第37回医療保険部会に臨んだ。日医藤原委員の発言を補佐するような形で長崎県医師国保の現状を説明した。会 議中に隣に座っている協会けんぽの委員に医師国保がかなり危ないとの話をしたが信用してもらえなかった。今手元の議事録を見直すと約2時間よく議論がなさ れているように記載されている。保険者に関することが多かったため自身の発言が少なかった。この4回の怒涛のような会議日程以降、約半年間部会は開催され なかった。

4)最新の保健部会の内容

医療保険部会の事を忘れていた本年5月27日諫早医師会総会において講演していただいた今村定臣日医常任理事から近日中に部会が開催される予定であり、議 題に「出産育児一時金制度」が議論される予定との情報を頂いた。7月14日(水)に第38回医療保険部会が開催された。資料は厚労省の発送ミス(わざと か?)で事前に手に入らなかった。同制度に関して当医師会河野理事からのご意見を頂き、部会に望んだ。
今回から日医臨時委員は藤原理事から鈴木理事に交代した。その他数名の委員交代があった。さらに「出産育児一時金制度」のため専門委員が6名任命された。 まず専門委員の発言があったが全ての委員が資金ぐりなどの経営面から以前の制度に戻すように主張された。婦人科医会、大学婦人科教授、助産婦会、弁護士、 小児医療を守る会などの代表であったが、専門委員全て同じ意見であるのは不公平であり、委員選定の方法に疑問をもった。会議後地元の開業医の先生方にお尋 ねしたところ制度存続のままでもよいと考えている方も多かった。出産施設の減少は諫早市でも認められ、一部財政面の問題としてこの制度が関与していると発 言したが、実際にはどうなのだろうか? またお産を扱う施設の減少には「福島県立大野病院事件」の影響も大きいと考えられる。

5)委員報酬

報酬の説明は事前にはなかった。3回目に行く直前に分かった。(1)日当2600円(桁の間違いでもなく、時給でもない)(2)交通費は実費、タクシー代 は認めない。(3)宿泊費は帰りの飛行機があるときには出さない。出しても10500円まで。(4)委員手当て16000円(1回当たり)。ウイークデイ の1日を休診にして出かける割にはあまりに薄給で、聞いたときは思わず笑ってしまった。その後この報酬状況を知った長崎県医師会と諫早医師会から補助を頂 くようになり感謝致しております。

6)これからの部会への臨む姿勢と随行員の募集

このような状況の医療保険部会ですが、なるたけ医療現場の意見を反映した意見を述べたいと思っております。このため議題に関係ある先生方からご意見を伺う ことが大切であると思います。その際にはどうぞ真摯なご意見をお聞かせください。また直前の38回医療保険部会の資料は県医に提出しておりますが、なるべ く多くの方に見ていただけるよう今後各郡市医師会にお送りいたす所存です。また今回社保審の事をやっと医師会報で報告する事が出来ましたが、今後は速やか に県医師会報にて報告致したいと思います。また任期はあと1年となりましたが、今後は毎月開催されるとの事です。あと12回開催予定ですが、この会は随行 員の参加が認められています。発言権はありませんが、ご希望の方がいらっしゃればご同行下さい。なお前回は長崎市医師会の本田孝也先生にご同行頂きまし た。ウイークデイに開催される点と厚労省から旅費がでない点が問題ですが、出来るだけ多くの先生に医療政策を決定(?)する話し合いに立ち会っていただき たいと願います。

連絡先;諫早医師会事務局

追記:本年4月から長崎県選出の日医代議員になったのですが、今後の日医ニュースでもやっぱり扱いは「その他の委員」でしょうか?

さらに追加:8月5日付けの日医ニュースでやっと諫早医師会長 高原と名前がでました。
名無しのごんべから出世致しました。

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ