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Vol.23163 取材メモ・録音の提出を迫った「第三者」(シリーズ「保身の代償 ~長崎高2いじめ自殺と大人たち~」共同通信編 第10回)

医療ガバナンス学会 (2023年9月14日 06:00)


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Tansaリポーター
中川七海

2023年9月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

共同通信による、記者・石川陽一への2回目の聴取があったのは、2022年11月24日のことだ。翌日の25日午後1時22分、石川にメールが届いた。昨日の聴取を担った1人、法務部の山内和博からだった。

11月14日の1回目の聴取とあわせ、すでに3時間以上の聴取に応えている。長崎新聞への批判は事実に基づいていると何度も説明した。謝る気もない。

これ以上、一体何の用件なのか?

●長崎新聞からの訴訟対策というごまかし

法務部・山内からのメールは以下の内容だった。

“昨日はヒアリングおつかれさまでした。

昨日も説明した、取材メモ・録音等の提供について、お考えはどうでしょうか。変わりはありませんか。“

山内が言っているのは、長崎で起きた福浦勇斗(はやと)のいじめ自殺事件の取材で得た取材メモや録音のことだ。『いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録』(文藝春秋)で、石川が書いた内容を裏付ける証拠を提出させようとしているのだ。

共同通信は、何とか取材メモと録音を手に入れたいようだ。山内のメールで3回目の催促だった。最初は11月17日の法務部長・増永修平から来たメール。次は11月24日の2回目の聴取。そして11月25日の山内からのメールだ。

17日の増永のメールによると、長崎新聞から訴訟を起こされた場合、事実の証明のために取材メモと録音が必要だという。

だが、それはできない。

著書『いじめの聖域』に関し、共同通信は第三者である。出版に関する契約は文藝春秋と交わしている。長崎新聞が訴訟を起こすとしても、相手は自分か文藝春秋だ。第三者に取材メモと録音を渡せるわけがない。

自分たちが第三者であることは、共同通信自身も分かっている。石川への2回目の聴取で、共同通信に当事者適格はないと認めているからだ。

それでも、取材メモと録音を提出させようとするのは、共同通信が石川の取材の粗探しをして、長崎新聞からの抗議に対する責任を取らせようとしているとしか思えない。

共同からの3度目の要請となる山内へのメールに、石川は返信した。

“第三者に対して報道目的以外で取材メモや録音データを提供することは、倫理上できかねます。”

●審査委員会?

12月6日、石川の携帯がまた鳴った。

石川が所属する千葉支局の支局長・正村一朗からメールが届いた。

“著書の件で社内に審査委員会が本日、設置されました。審査委員会は問題の経過や事実関係の解明、責任の所在や勘案すべき状況の調査などを審査すると社内規定で定められています。

規定では、当事者は委員会で意見を述べ、または文書で報告することができると書かれているのですが、石川君はどうしますか?

意見を述べるか、文書で報告する意思がある場合は希望日時を含めて教えてください。

意思がない場合はその旨、お知らせください。

また、取材メモや録音テープの提出を会社からお願いしたのに対し、提出しない旨、連絡していただいていますが、審査委員会は石川君に改めて提出を求めています。提出する意思はありませんでしょうか? ご返答をお願いします。“

石川は、突然のことで驚いた。意見を述べるか聞かれても、何に対しての意見を述べればいいのか分からないし、短時間では決められない。生後9カ月の子どもの育児にも追われている。

すぐに返信できないでいると、2日後の昼12時26分に正村から再びメールが届いた。件名は「重要な連絡です」。

“6日にメールで質問した件ですが、本日午後5時までに返答がない場合は、審査委員会に意見を述べたり、文書で報告したりする意思はないと見なします。取材メモや録音テープの提出にも応じないと見なします。別の対応を検討しているのであれば、本日午後5時までに連絡してください。”

あまりに一方的な連絡だった。

=つづく
(敬称略)

※この記事の内容は、2023年5月31日時点のものです。

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