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Vol.23174 武見敬三・新厚労大臣へ、二つのお願い

医療ガバナンス学会 (2023年10月4日 06:00)


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元・血液内科医
平岡 諦

2023年10月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

戦後レジームは、国連を中心に「人間の尊厳の普遍性」を「絶対の基準」として構築されてきました(MRIC Vol.22200 参照)。不完全ではあるが、国連という話し合いの場(理性の働く場)があるからこそウクライナ紛争が全面戦争にならずに済んでいるのだと思います。戦後レジームの医療版を担当してきたのが世界医師会(WMA)です。
WMAはナチス医学の反省をもとに新しい医の倫理を構築してきました。モットーは「To put the patient first (患者第一)」、その意味は「患者の人権を擁護する」、「患者(という状態の人間)の尊厳を守る」と言うことです。

日本医師会(日医)は日本の医師を代表してWMAに加盟しています。日医の内にある日本医学会(そして、外にある法人・日本医学会連合)が加盟できる訳ではありません。日医Hpにあるパンフレットを見て驚きました、「組織」として「学術専門団体」となっています。「専門職能団体」の過ちではないでしょうか、いつから格下げになったのでしょう、これでは日本医学会との区別がつきません。
松本吉郎・日医会長は日医が自由加入制であること、すなわち日医の在り方によっては全ての医師が自由意思で加入する可能性を含むということ、従って日医が「日本の医師を代表している」こと、このことを完全に忘れているようです。

ヒトを対象とした研究では、WMAの医の倫理の一つ、ヘルシンキ宣言を守った研究でないと世界的な雑誌は受け入れなくなりました。日医の定款には、目的の最初に「医道の高揚」があり、続いて「医学及び医術の発達」があります。日医が「医道の高揚」としてWMAのヘルシンキ宣言を受け入れ、日医の中にある日本医学会の会員はそれを守って「医学及び医術の発達」を図る、という構造になっているのです。
日医の法人化に伴い、法人の中に法人は作れない、そこで日本医学会は内に残したまま、法人・日本医学会連合を外に作りました、いわば日本医学会の出先機関です。日本医学会を日医内部に残した理由は医の倫理で医学・医術の暴走をコントロールするためです。そのような構造をとることが世界標準です、WMAのマドリッド宣言に記載されています。
世界の医療関係機関の多くのロゴマークがギリシャ神話をもとにした「アスクレピオスの杖」です。杖(医の倫理)」に一匹の蛇(医学・医療)が巻き付いている構図です。ちなみに、法人・日本医学会連合のロゴマークは「アスクレピオスの杖」です。

日医内部に日本医学会を残し、世界標準のロゴマークで医学界の在り方を示し、731医学と関係深い東大・京大ではなく、ほぼ無関係であった阪大、その出身者である門田守人氏を会長に据えたのは、高久史麿・前会長の置き土産でしょう。残念なことに、門田会長9月7日急逝の報が飛び込んできました。ご冥福をお祈りいたします。

終戦直後、731部隊の関連資料をアメリカに渡すことと引き換えに、関係者は戦犯免責を得ました。日医はWMA加盟時に731医学を隠しました。日本の医療界は731医学を反省しないまま今日に至っています。その結果、日医は、「患者(という状態の人間)の尊厳を守る」というWMAの医の倫理を受け入れられないのです。日医は世界標準からかけ離れた医の倫理を構築してきました、ダブルスタンダードが成立しているのです。ちなみに、日医のロゴマークは「蛇で模った乳鉢」、武見太郎会長時代作成です。GHQの勧める医薬分業への抵抗を示したのでしょう、時代の要請とはかけ離れたものになっています。

日本の医師を代表する日医は、以上のように散々たる状況にあります。日本の医療界は世界標準から取り残されるばかりです。そこで、国際的に活躍されている武見敬三・新厚労大臣へお願いしたいのは、以下の二点です。

●日本医師会に、ロゴマーク変更を提案して下さい。
世界標準は「医学・医療(蛇)と医の倫理(杖)」を表す「アスクレピオスの杖」です。医の倫理で医学・医療の暴走をコントロールしようという意味です。日医のロゴマークは「蛇で模った乳鉢」、武見太郎会長時代の作成です。GHQの勧める医薬分業への抵抗を示したのでしょう、時代の要請に合わなくなりました。変更を言い出せるのは、まさに新厚労大臣以外に無いでしょう。

●731医学にケリをつけるため、厚労省(国)として調査し、結果に基づく談話を出して頂きたい。
日医が、その医の倫理を世界標準にするためには、まず厚労省(国)が考えを公表する必要があります。731医学を隠したために、日本の医療界は終戦処理が出来ず、戦後の体制に乗り遅れています。日本の医療界を軌道に乗せることが出来るのは、国際的に活躍されている新厚労大臣の他にないでしょう。武見敬三・新厚労大臣の歴史的使命と考えます。         (以上)

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