医療ガバナンス学会 (2023年11月15日 06:00)
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( https://genbasympo18.stores.jp/ )
2023年11月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
11月26日(日)
【Session 10】
「生涯医学論文!」ネット時代の独立系勉強会 11:10~12:00 (司会:谷本 哲也)
●谷本哲也
(医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長、社会福祉法人尚徳福祉会理事)
谷本勉強会とは何か
臨床医学に関する生涯学習の一環として、有志とともに英語論文に取り組む勉強会を2012年よりNPO法人医療ガバナンス研究所の支援のもと毎週行なっています。臨床業務が終わった後、毎週月曜日の夜22時から、無償ボランティア活動という形です。コロナ禍を契機に、2021年からは半年間・全22回にわたるオンライン勉強会コースとしました。ニューイングランド医学誌(the New England Journal of Medicine)やランセット(the Lancet)などに掲載された論文について議論するレターを出したり、症例報告や臨床研究を論文にまとめたりして、海外の臨床医学専門誌での掲載を目指しています。専門や所属、年代は問わず、やる気のある人は自由に歓迎としています。従来の医療界での論文執筆は、大学医局や大学院に入るなどの閉鎖的エリートのメンバーシップ制で、立身出世のために行うことが主流でしたが、ネット社会に適応したオルターナティヴな方法論を模索した結果がこの勉強会になります。受講料は本研究所への任意の寄付とし、論文掲載費用や外部講師への謝金に使用し、私的な目的には一切使っていません。参加の目安は、医学英語論文が全く初めての初級者から、発表経験が多少ある中級者程度の方となります。臨床医学論文の基本的な読み方、書き方を学び、さまざまな講師の講義も受けながら、英語での執筆、発表などに挑戦する機会を提供できればと思って続けています。本シンポジウムでは参加者の一部に登壇していただき、医療者の生涯学習のあり方について活発な議論を行えればと考えています。
●金田侑大
(北海道大学医学部医学科5年)
医学生 vs ChatGPT
2022年11月にOpen AI社よりリリースされたChatGPTは、誰もが大規模言語モデルを利用することを初めて可能とした生成AIである。その自然な会話形式での即時的・個別的な応答生成能力が人気を博し、ユーザー数は全世界で1億人を突破した。
私自身も日頃のレポート作成や文章校正/翻訳に愛用しているが、将来的には、医療分野での実装も期待される。しかし、そのためには、ChatGPTが生成する回答の正確性や、人々からの受容を理解する必要がある。
これらを明らかにするために立ち上がった、ある医学生の半年間の物語である。
●酒井麻里子
(公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院糖尿病内分泌内科)
生涯学習としての勉強会
最後の後押しをしてくれたのは、取材で出会った20代の女性の白血病患者さんでした。2013年夏、私は関東地方の病院にいました。医療者として患者さんとともに歩みたいとの思いから、新聞記者をやめて医学部を受験するか迷っていた頃です。病気を受け止め、自分の人生をしっかりと歩むその患者さんの姿に、取材からの帰路、待ち受ける様々な苦労を受け入れようと誓いました。
あれから10年。いま、内科医として研鑽中です。思い描いていた通り、とはいかない中でも、充実した日々です。一方で、一人で勉強することに行き詰まりも感じていました。そんなとき受け取ったのが谷本先生のオンライン勉強会参加者募集のメールでした。臨床医をされながら発信し続けておられる谷本先生のご姿勢に感銘を受け、すぐに応募しました。毎週月曜夜、オンライン上で、日本に限らず世界で活躍されている方々の活動を知り、新たな視点や考え方に感銘を受けるばかりです。私自身、社会人入学を経て、今後医療者としてどのようなキャリアを歩むのか迷うことも多く、この勉強会で出会った先生方の働き方がとても参考になっています。私にとって一筋の光のような存在となったこの勉強会の活動を紹介するとともに、今後進みたい道についてもお話ししたいと思っています。
●澁澤基治
(新松戸中央総合病院血液内科、同臨床研修管理部)
初期研修医にCase reportの執筆を促す試み
我々はCase report執筆を「臨床医としての臨床能力向上のためのトレーニングの一つ」と位置付け、初期研修医の教育において重要視している。臨床医としての臨床能力向上のためには、臨床経験を積むことは非常に重要である。しかし、経験の蓄積による臨床能力の向上も、ある程度の段階に達すると停滞をしばしば認める。このような状況でも、Case reportの執筆を通じ臨床的思考を向上させることで、再び臨床能力を向上させることができる。即ち、患者の診断や治療における一般的な視点とともに、特定のケースの特徴を捉える視点を養うことができる。これは、自身が担当する診断困難例や難治例にアプローチし、解決する力そのものである。
我々が初期研修医にCase Reportの執筆を奨励するために実施している、いくつかの取り組みを紹介する。まず、月に1回の抄読会を開催している。また、年に1回、Case Reportの執筆の意義や方法についての講義を実施している。さらに、系列病院グループでの症例発表の機会を年1回設け、初期研修医が自信を持って症例報告を行える環境を作っている。
初期研修医に対してCase Reportの執筆を奨励し、サポートを提供することで、次世代の医療を担う人材を育成していきたい。
●中谷綾
(大阪医療センター、血液内科医)
生涯チャレンジ! ―人との出会いで運命を変える・新時代のキャリアプラン―
チャレンジ1:文学部からいきなり医学部に入学する。
チャレンジ2:出産後に大学病院で臨床をやる。
チャレンジ3:関連病院で一人血液内科医になる。
チャレンジ4:医局を離れ、縁もゆかりもない関西に引っ越す。
チャレンジ5:固形腫瘍の勉強をする。
チャレンジ6:全く知らない医局に入局する。
チャレンジ7:小さな研究会に参加してみる。
チャレンジ8:全く知らない人から紹介された留学先に行く。
チャレンジ9:未知のウイルス(COVID-19)の診療をする。
チャレンジ10:アメリカで再出発する。
私は文系大学卒業後、医学部再受験をしました(チャレンジ1)。入局した医局は白い巨塔そのもの。「女性医師は結婚もできないし子供も持てない」と言われました。私は子持ちでも臨床ができることを証明しようとしましたが(チャレンジ2)、当時の体制では不可能だと悟り、大学院卒業とともに関連病院に出て一人血液内科医になりました(チャレンジ3)。あまりの多忙さで精魂尽き果てた私は医局を離れ、関西に引っ越すことを決意しました(チャレンジ4)。関西では固形腫瘍の勉強を始め(チャレンジ5)、縁あって関西医科大学に入局しました(チャレンジ6)。たまたま見つけた研究会に参加し(チャレンジ7)、「留学してみたい!」と叫んでみたところ、全く知らない方より留学先を紹介していただきました(チャレンジ8)。留学先でエンジョイしていたのもつかの間、パンデミックが襲ってきて日本に逃げ帰りました。帰国後はコロナ診療に携わるようになりました(チャレンジ9)。再び前述の研究会に参加し「またアメリカにいきたいな~」とつぶやいたところ、隣にいた全く知らない方が、ポストを紹介してくださいました。こうして私は2024年から、アメリカでポスドクとして再出発することになりました(チャレンジ10)。
振り返りますと、チャレンジすることで新しい人に出会い、人との出会いで運命を変えてきたと思います。医局や制度などにとらわれず、様々なキャリアプランがあることを実証していきたいと思います。生涯チャレンジです!