医療ガバナンス学会 (2023年12月8日 06:00)
医療機関は、薬剤購入時に消費税を支払うが患者に消費税を請求できない。そこで、医療機関に支払われる薬剤費は消費税込みの価格になるよう高く設定されている(B)。
2022年国民医療費の薬剤費は5兆7千億円だった。水増しされた薬剤費5千7百億円は、患者、被保険者、保険者、国と地方自治体が負担した。それぞれの負担額は、被保険者:1,600億円 事業主:1,200億円 患者:680億円。
患者に請求できない消費税はほかにもある。義務化されたマイナ保険証読み取り機も消費税の対象だ。検査センター委託費や電子カルテ管理費など、医療提供に必要な経費の消費税も医療機関が負担している。薬剤や医療材料その他の経費の消費税の総額は仕入れ時に支払う消費税(C)と表現される。
http://expres.umin.jp/mric/mric_23224.pdf
厚労省は、C=A+Bと宣伝しているが、Cの総額が、いくらになっているかは、実はよくわかっていない。2017年日本総研の試算によると、2014年の国民医療費41兆円、税率8%でCの消費税額は1.6兆円と推計した。
2024年の国民医療費は48兆円と推計されている。この間、税率も10%に引き上げられ、国民医療費に占める消費税額は、単純計算で2兆3500億円(C)と推計される。
これらの費用は、消費税率が引き上げられるたびに診療報酬本体を引き上げて、医療機関の負担を補てんしてきた。1989年に税率3%での消費税導入以後、プラス改定が行われ、足し算では+3.3%だが、実際の金額では、掛け算になるので+3.39%が補てんされている。
補てんされている金額(A+B)は、国民医療費48兆円に対し1兆6千億円と計算される(国民医療費*3.39%)。その結果、医療機関が年間7,500億円負担していることになる(A+B-C=▲7500億円)。しかし、これは平均の話であり、その後プラス改定の項目が削除され、算定できなくなった項目もあり、実際の補てん額はもっと少なくなっていると想像される。
30年間で消費税率が3%から10%に引き上げられ、それを補填するために診療報酬も引き上げられた。しかし、医療機関が負担する消費税額は、税率が上昇したため補てん額以上に大きく赤字が拡大している。
診療報酬をめぐり意見の対立があるが、国は消費税についても丁寧に説明する必要がある。
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国民医療費は、当該年度内の医療機関等における保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用を推計したものである。2024年度は48兆円と推計されている。
2023年度の消費税収は、予算では23兆3840億円。
つまり消費税収の1割が国民医療費からの税収となっている。
国民医療費に占める消費税額
日本総研:医療にかかる消費税の現状とあるべき姿(2017年)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/9912.pdf
長周新聞:医療にかかる「隠れた消費税」 青森県大竹整形外科院長・大竹進氏に聞く
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/15505
厚生労働省が定める診療報酬や薬価等には、医療機関等が仕入れ時に負担する消費税が反映されています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/140401.pdf