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Vol.24026 知事会見後、県政記者クラブに謝罪していた共同通信(シリーズ「保身の代償 ~長崎高2いじめ自殺と大人たち~」共同通信編 第22回)

医療ガバナンス学会 (2024年2月7日 09:00)


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Tansaリポーター
中川七海

2024年2月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

福浦勇斗(はやと)が通っていた海星学園は、カトリック系のマリア会が運営する創立131年の伝統校である。毎年クリスマスになると、校内はツリーやイルミネーションで飾られる。

だが2020年のクリスマスは、海星学園の祝祭ムードとは裏腹に、勇斗の母・さおりと父・大助にとって、悔しい日となった。

二人の連名で出した共同通信への意見書には、その日のことが綴られている。

●知事「追認していないことを遺族に理解していただく」

2020年12月25日、当時の長崎県知事・中村法道の記者会見が長崎県庁で開かれた。

約1カ月前の11月17日、石川は、海星学園が遺族に提案した、勇斗の自殺を「突然死」にする案を、県学事振興課の参事だった松尾修が追認していた事実を明るみに出した。翌18日、県総務部は緊急の記者会見を開催。追認は不適切だったと認め、遺族に謝罪した。

ただ、県のトップを務める知事の中村は、この件について公の場で見解を示していなかった。石川は質問した。

「自殺を突然死にしないかと偽装を提案したところ、突然死までは許せるというふうに、自殺の偽装を追認した発言があったということが判明しました。遺族はこの発言に対して、県がいじめ自殺の隠蔽に加担したというふうに主張していますが、まずこの発言について、知事はどういうふうに受け止めているのかということと、ご遺族に対して何かお言葉をお願いします」

これに対して中村は、驚くべき回答をする。

「私はやりとりの詳細を承知しておりませんけれども、追認したということではないんではないかと私は理解いたしております」

「追認発言」については、県総務部が11月18日、すでにさおりと大助に謝罪している。石川が共同通信から報じた翌日のことだ。それを知事の中村は「追認したということではない」と県としての見解をひっくり返したのだ。

さらに中村は言う。

「それはしっかりと説明をして、真意をご理解いただく必要があるのではなかろうかと思います」

共同通信への意見書でさおりは、県への不信感をあらわにする。

“私たちは、この知事の会見の時すでに総務部長と面会を終えており、県職員の不適切な発言に対し謝罪を受けていました。総務部長は遺族に謝罪をしたはずなのに、知事は追認してはいないので遺族にそれを理解して頂く必要がある、と公の場で発言する。この状況を私たちは、全く理解できませんでした。理解できないどころか、総務部長の謝罪は見せかけのものだったのではないか、との疑念さえ抱きました。”

知事の中村の発言に、さおりと大助は既視感があった。長崎新聞の記者・堂下康一が書いた、11月19日付の記事である。そこには、「突然死を積極的に追認したとは思わない」という県の釈明が書かれていた。堂下自身、記事の掲載後に大助に電話してきて、「県は悪くない」と言った。

“詳細を把握していないのに、なぜ追認ではないと言い切れるのか、まるで当時の長崎新聞の見解を知事がそのまま言っているようにしか、私たちには感じられませんでした。”

●長崎新聞が報じなかった母の手記

遺族ではなく県の側に立つ長崎新聞の姿勢はその後も続く。

知事の記者会見から年が明けた2021年1月19日、さおりは手記を発表した。この日は勇斗の誕生日で、生きていれば二十歳を迎える節目だ。「息子のように苦しむ子どもたちを作ってはならない」との思いで綴った。

石川が手記を預かって共同通信が配信し、東京新聞や北海道新聞、沖縄タイムスなど、少なくとも14の全国各地の新聞が掲載した。

ところが長崎新聞は、地元紙であるにもかかわらず載せなかった。

“2021年1月、子どもが生きていたら20歳を迎えるにあたり、私たちが御社に手記を発表した際も、残念ながら県内のどの報道機関も取り上げてはくれませんでした。”

それから1年余り。さおりと大助は、長崎新聞と県は癒着していると判断せざるを得ない、決定的な記事を目にする。知事の中村に「心から感謝」と書いた、堂下のあのコラムだ。

“ある日、県を擁護したのは間違いないと感じる出来事がありました。

2022年3月1日の長崎新聞に掲載された堂下記者のコラムです。現職の県知事が選挙で落選したことに触れた内容でした。知事と懇意にしていた様子や、自身の言葉で「報道機関の重要な役割は行政の監視とされているが、真面目に施策を進めようとする姿に触れ、後押ししたいとも思った。」と書かれてありました。

報道は、弱者の味方だと信じ込んでいた私たちはこのコラムを読んだとき、言葉では言い表せないほどの衝撃を受けました。長崎新聞社は、行政の監視よりも後押しを選んでいるのだと。”

●県広報課報道企画班からの回答

遺族が、共同通信への意見書で伝えたいのは、こういうことだ。

長崎新聞と県がもたれ合っているのは事実であり、そのことを著書で批判した石川を共同通信が責めるのは不条理だーー。

意見書には書かれてはいないが、他にも重要な事実がある。

石川の著書が出版される前から、共同通信は、県と歩調を合わせる長崎新聞に追随していた。

私は2023年5月25日、Tansa編集長の渡辺周とともに県学事振興課を取材した。そこで、石川が知事の中村を追及した2020年12月25日の記者会見の議事録について尋ねた。学事振興課の参事だった松尾の名前が、議事録になかったからだ。通常、参事も務めた県幹部を匿名にする理由はない。

石川は記者会見で、松尾の名前を挙げて質問している。記者会見後に総務部長の大田圭がそのことで怒り、長崎新聞の堂下が「記者クラブで問題になる」と加勢したのだ。

この記者会見をめぐって、一体何があったのか。この日の学事振興課への取材では判明せず、後日、広報課報道企画班から回答があった。

2020年12月25日 知事定例記者会見
県と共同通信社の協議
2021年1月5日  県と共同通信社の協議
2021年1月7日  共同通信社→長崎県政記者クラブ加盟社へお詫び

=つづく
(敬称略)

※この記事の内容は、2023年6月16日時点のものです。

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