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Vol.24042 坪倉先生の放射線教室(5)

医療ガバナンス学会 (2024年3月4日 09:00)


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この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。
https://www.minyu-net.com/

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2024年3月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

東日本大震災後、2011年4月より福島県浜通りにて被災地支援。
現在、福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授を務める坪倉正治先生が放射線や処理水について正しく、分かりやすく解説します。
●ラドン、場所で濃度異なる(2023年05月06日配信)

私たちの周りには、さまざまな種類の自然界の放射線が存在し、そこから日常的に私たちはある程度の放射線を浴びています。

空気中に含まれている放射性物質として、よく知られているのがラドンです。このラドンは、天然の放射線について考える時に、とても重要な放射性物質です。なぜなら、私たちが天然から受ける放射線の「量」の多くの部分を、このラドンとその周辺の放射性物質が占めるからです。日本だと天然の放射線全体の約4分の1を、世界平均では約半分を占めます。

この空気中のラドン濃度は、場所によって大きく異なります。国ごとにも異なりますし、土の種類でも異なります。屋外と屋内を比べても、空気中の濃度はラドンがたまるため、屋内の方が数倍高いことが知られています。水にもある程度溶けており、井戸水などの地下水に比較的多い傾向にあり、水道水では少ないです。

ラドンを吸い込むことによって主に放射線を受ける臓器は肺になります。ラドンを吸い込むことは、喫煙に次ぐ、2番目の肺がんのリスク因子であることが世界保健機関(WHO)から発表されています。わが国では肺がんによってお亡くなりになった人の4%(約3000人)がラドンの吸入が原因と推定されています。
●魚介類に多いポロニウム(2023年05月13日配信)

私たちの周りには、さまざまな種類の自然界の放射線が存在し、そこから日常的に私たちはある程度の放射線を浴びています。

大きくは、〈1〉宇宙から降り注ぐ宇宙線によるもの〈2〉食品中に含まれている放射性物質によるもの〈3〉大地から出る放射線によるもの〈4〉空気中に含まれるラドンなどの放射性物質によるもの―の四つがあります。

前回までご紹介してきたように、世界的に見れば、自然から私たちが受ける放射線のうち約半分を占めているのが、ラドンとその周辺の放射性物質でした。その一方、日本ではラドンが相対的に少ないため、その割合は約4分の1しかありません。その代わり、日本で自然から受ける放射線のうち、最も多くの半分弱を占めるのが、食品中に含まれる放射性物質によるものです。

もちろんそれは、原発事故などに伴うセシウムとか例えばプルトニウムとか、トリチウムによるものではありません。天然に存在する、ポロニウムと呼ばれる放射性物質が原因です。

これは魚介類、特にその内臓に多く含まれます。日本では魚介類の摂取が多いために、世界平均に比べてそこから受ける放射線が多くなっています。
●減少する食品の放射線量(2023年05月20日配信)

私たちの周りには、さまざまな種類の自然界の放射線が存在し、そこから日常的に私たちはある程度の放射線を浴びています。

大きくは、〈1〉宇宙から降り注ぐ宇宙線によるもの〈2〉食品中に含まれている放射性物質によるもの〈3〉大地から出る放射線によるもの〈4〉空気中に含まれるラドンなどの放射性物質によるものの四つがあります。

日本で自然から受ける放射線のうち、最も多くの半分弱を占めるのが、食品中に含まれる放射性物質によるものです。これは魚介類、特にその内臓に多く含まれるポロニウムという放射性物質が原因でした。日本では魚介類の摂取が多いために、世界平均に比べてそこから受ける放射線が多くなっています。

その一方、日本では、魚介類の消費量は年々減少しています。肉と魚介類の消費量を比べると、長年、魚介類の消費量の方が肉の消費量よりも多かったのですが、2000年代の中ごろを境に逆転し、肉の消費量の方が多くなっています。

魚介類の消費量が減少傾向のため、ポロニウムによる放射線量も減り、日本での食品による放射線量は徐々に減少傾向にあります。
●食品中に放射性カリウム(2023年05月27日配信)

私たちの周りには、さまざまな種類の自然界の放射線が存在し、そこから日常的に私たちはある程度の放射線を浴びています。日本で自然から受ける放射線のうち、最も多くの半分弱を占めるのが、食品中に含まれる放射性物質によるものです。

これは魚介類、特にその内臓に多く含まれるポロニウムという放射性物質が原因でした。ポロニウムが日本での食品からの放射線量に占める割合は大きく、食品からの放射線量の70%強がポロニウムによるものです。

そして、その次に多いのは放射性カリウムによるものです。カリウムは私たちが生きていくためには必須のミネラルですが、そのカリウムのごく一部が放射性カリウムなのでした。カリウムはほとんどの食品に含まれるため、放射性カリウムも微量ずつ、ほとんどの食品に含まれることになります。

このポロニウムとカリウムで、食品からの放射線量のおおよそ90%を占めています。そしてその残りの1割以下の部分は、鉛の放射性物質や、炭素の放射性物質、さまざまな自然に存在する天然の放射性物質と、戦後の大気圏内核実験によってばらまかれた放射性物質などによって占められています。

 

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