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Vol.24044 内科医不足と外科医が生き残る道

医療ガバナンス学会 (2024年3月7日 09:00)


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本稿は、2024年2月28日に医療タイムスに掲載された記事を転載したものです。

公益財団法人ときわ会常磐病院
乳腺甲状腺外科・臨床研修センター長
尾崎章彦

2024年3月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

■内科リクルートの難しさ

筆者がこの1年間力を入れてきたのが、内科リクルートです。外科医なのになぜ、と不思議に思われるかもしれません。実際、私自身が内科診療にことさら興味を持っていたわけではありません。

ただ、昨年夏に内科の中心的ドクターが退職することとなり、研修医教育を担っていた筆者としても他人事ではいられなくなりました。そして気づけば、自分が中心に立って内科のリクルートを進める流れになっていました。

といっても、特別な策は何1つありません。ただひたすらに知り合いを頼って、当院の内科勤務に関心を持ってくれる人がいないかアプローチし続けました。

中でも重宝したのが、筆者が卒業した東京大学の「鉄門名簿」なるOB名簿です。メールアドレスなどの連絡先を載せているドクターもいるため、内科系の医師に片っ端から連絡をしました。おそらく数百人を超えていたと思います。

しかし、連絡を返してくれるドクターはごくごくわずかでした。若手医師の返信率など壊滅的です。返信をくれた人でも、勤務を考えてくれたドクターは1人もいませんでした。

当然といえば当然かもしれません。縁もゆかりもない一医師や医療機関から、何の前触れもなく勤務をお願いされても、首を縦に振る人はまずいないでしょう。自分が相手の立場でも、おそらく同じ対応をするはずです。

そもそも、最近は内科を志すドクターも減っているようです。日本内科学会などで指導的立場にある人たちも、連絡を取った際、「内科医の志望者が減っていてわれわれも困っている」と口を揃えて仰っていました。

■新専門医制度が内科医減少の原因

正直、筆者からすれば、そのような指導層の人たちにも現状を招いた大きな責任があると思わざるを得ません。例えば、内科医減少の最大の原因となった新専門医制度は、各学会と厚生労働省が“結託”して進めた制度です。

目的は、補助金でかろうじて生きながら得る大学病院の延命に過ぎません。しかもその実態は、神戸の甲南医療センターで若手医師が自殺した例で明らかです。

つまり、専門医プログラムに登録した医師は、大学病院などで安い時給でこき使われます。大学病院側の負担を減らすため、彼らは当然に非常勤雇用です。専攻医は、プログラム提供側の病院にとって使い勝手のよい労働力に過ぎないのです。

さらに、「内科専門医を取得して、その後、サブスペシャリティーを目指す」というキャリアプランは、個々のドクターが独り立ちするまでの時間をいたずらに長くしています。

例えば近年、初期研修医終了後に美容外科・皮膚科を目指すドクターが少なくないことに対し、そのような動きを嘆く声もあります。しかし、若者にしてみれば医療の未来に夢を見いだせないが故の選択でもあり、見せることができていない現行世代の責任は決して少なくないと私は考えています。

■外科医が「自炊」で賄う内科医領域

ただ、大事なのは、そのような世の流れを踏まえ、われわれがこの常磐病院の内科医不足に際してどう振る舞うかです。筆者が思い至りつつあるのは、「自炊」と教育です。

自炊とは、自分たちで内科医療を賄うことです。常磐病院で求められている内科医療は、専門的な内科医療というよりは総合内科的な医療であり、他領域の医師でも貢献が可能な分野です。

特に筆者が専門とする外科は、周術期などで内科的管理のスキルも求められることもあり、最低限の内科診療技術を持ち合わせている外科医は多くいます。

実際、常磐病院でもすでに内科的診療を積極的に実施している外科医もいます。例えば、澤野豊明医師は、外科とは直接関係ないようなケースでも、各科の間にこぼれ落ちてしまうような患者がいれば、積極的に引き取って診療しています。

また、広く世に目を向けると、開業後に内科的診療を実施している外科医も散見されます。

例えば、筆者が懇意にしているマールクリニック横須賀の水野靖大医師は、1997年に京都大学を卒業して腹部外科医となった後、2012年に現在のクリニックを立ち上げました。専門性を生かした内視鏡診療に加え、一般内科診療にも従事しています。

ただ、このような事例は決して珍しくなく、総合内科マインドを持って外科診療に従事している医師は世に多くいるというのが筆者の印象です。

そして、このような考え方は、外科医の生き残りという観点からも重要です。今後は人口減少と高齢化が進み、プライマリーケアの重要性が増す一方で、インテンシブな外科治療を受ける患者は減ってくるでしょう。

その中で、手術を必要としない高齢者にも目を向け、ケアを提供していくスキルは必須となるはずです。私自身も、少しずつ内科患者も診療するよう心がけていますし、組織としても変わっていかねばならないでしょう。

■「自分が一生面倒を見るつもりだ」との思い

もう1点は、教育です。とにかく自分たちで若い有望な人材を育ててリクルートしていくほか、組織が生き残っていくすべはありません。

幸いなことに、今年も4月には、前途有望な初期研修医が入職します。彼らには先々も、ときわ会をベースにしながら、国内外のさまざまな施設で研さんを積んでいってほしいと考えています。そして、長きにわたって、一緒に仕事をできればと考えています。

そのようなこともあり、彼らには、「自分が一生面倒を見るつもりだ」と伝えています。もちろん、常磐病院で自分の手元にずっと置いておこうという意味ではなく、「彼らにとっていつも頼れる存在でありたい」という思いからです。

医局の存在感が弱まり流動性が高まる医療界で、医師は自己責任の下にキャリアを積んでいくことが日増しに求められています。

自分は幸運にも素晴らしい指導者に恵まれたことで、今まで何とかキャリアを積んでくることができました。私も彼らにとってそのような存在でありたいと考えています。

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