医療ガバナンス学会 (2024年3月8日 09:00)
この原稿は中村祐輔の「これでいいのか日本の医療」(2024年2月15日配信)からの転載です。
https://yusukenakamura.hatenablog.com/entry/2024/02/15/203019
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
理事長 中村祐輔
2024年3月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
自分の考えが伝えられない一部の患者さんたちにとっては希望の光であることは間違いない。埋め込んだチップが脳の考えを読み取り、ワイアレスでコンピューターに情報が送られ、テキストや話し言葉で伝えられるようになるのである。病気が進行したALS患者さんは文字盤上の字を目の動きで追いかけて言葉を読み取ってもらっているが、このような技術が利用可能となれば、簡単に意思伝達を行うことが可能となる。
当然ながら、頭皮上に着けた装置と比べれば、埋め込み型チップは感染症のリスクやチップによる短期的・長期的な副作用問題が起こる可能性は否定できない。日本だと安全性を確認してから・・・・と非科学的な指摘が起こるであろう。しかし、考えを読み取る実験をマウスでできるはずもない。死に直面している患者さんに、安全性を確認するのが優先すると言って、常識的にはその患者さんの望みを絶つことが日常茶飯事として起こっている。
イーロン・マスクのこの臨床試験が、米国の臨床試験データベースClinicalTrial.govに情報が登録されておらず、透明性が保たれていないという批判がある。ただし、米国FDAはこの臨床試験の実施を認めたそうだ。オープンな形で情報共有すれば、もっと研究開発が早く進むと透明性を強く求める声は多いが、技術開発が知的財産権につながるので、世の中は綺麗ごとだけではすまない。いつも言っていることだが、米国から新しいものが生み出されるのは、この可能性に賭ける精神だ。今朝新聞を読むと、「日本製のクラウド創出に6億円の補助金がでる」ことが一面で取り上げられていた。桁が3桁ほど少ないのではないのか。誰が考えても、「Too Little」だ!
必要なものに、必要な資金を提供しないと、すべて水泡に帰す。