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Vol.24081 共同通信、文春の書籍の「出版了解を取消」&「重版認めない」/著者に「経緯をメディアで公表したら懲戒の対象」(シリーズ「保身の代償 ~長崎高2いじめ自殺と大人たち~」共同通信編 第28回)

医療ガバナンス学会 (2024年5月1日 09:00)


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Tansaリポーター
中川七海

2024年5月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

共同通信が、育児休業中の石川陽一に対する責任追及を始めたのは2022年11月11日。著書『いじめの聖域』が文藝春秋から発行された翌日のことだ。

以来、石川は2回の聴取を受け、共同通信が設置した審査委員会には意見書を送って著書の正当性を訴えた。自殺した福浦勇斗(はやと)の母・さおり、父・大助と、長崎で塾を経営する佐々木大も意見書を提出した。意見書は石川、遺族、佐々木のものを合わせると、計51ページに上る。

共同通信はどのような判断を下すのか。

2023年1月27日、共同通信は総務局長の江頭建彦の名前で、結果を通知した。

たった2枚。その中に、石川も予想していなかった内容が記されていた。

●名前を間違えてメール

2023年1月28日正午、石川のもとに「通知文書送付の件」と題されたメールが届いた。差出人は「共同通信社総務局」。

“千葉支局
石川洋一様

メールで失礼いたします。
石川さんの著書の件で、審査委員会が審査結果を文書で常任理事会に報告し、これを受けて社としての措置を決めましたので、総務局長名の通知文書をご自宅に送付させていただきました。
到着しましたらご確認ください。よろしくお願い申し上げます。

共同通信社総務局”

石川の名前は、「洋一」ではなく「陽一」だ。

共同通信はこれまで、数々の粗雑な対応を重ねてきた。

「裁判のため」という虚偽の理由で、取材メモと録音の提出を求めてきた。審査委員会は規定通りに組織しなかった。石川が審査委員会に提出した15項目の質問にも結局答えなかった。

最終段階で、重要な結果を知らせるメールで名前を間違えるとは、どこまでいい加減なのかと石川はあきれた。

●文春「何の連絡もありません」

自宅に届いた、総務局長・江頭建彦名の通知書は2枚。タイトルは、「社外活動(外部執筆)の了解取り消しの通知」。冒頭には、次のように記されていた。

“共同通信社は23年1月24日、「社外活動に関する規定」第5条(了解の取り消し)に基づき、あなたが22年7月25日付で申請した外部執筆に関する社外活動(稟議番号22年度出版第0036号)について、同年8月2日付の了解を取り消すことを決めましたので通知致します。

あなたが共同通信社記者の肩書を明記した上で出版をされた「いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録」(以下、「本書」といいます。)内の記述が、社外活動規定第4条の不許可事由に当たると判断したことによるものです。”

石川が文藝春秋で本を書くにあたり、共同通信から得た許可を取り消すということだが、本はすでに出版されている。何の意味があるのか。不思議に思って読み進めると、唖然とする内容が書かれていた。

“本書出版の了解を取り消しましたので、今後、問題箇所を修正して改めて社外活動の了解を受けない限り、社として、本書の重版は認めません。”

石川の著書を出版したのは、文藝春秋だ。著者である石川に重版するかしないかを判断する権利はない。そもそも、出版に関して共同通信は第三者である。出版の了解取り消しも、重版を認めないと指示することも越権行為だ。

文藝春秋が、共同通信から重版を認めない旨の連絡を受けているわけでもない。Tansaが文藝春秋に共同通信からの連絡の有無を質問したところ、「共同通信からは何の連絡もありません」という回答だった。

●「職員としての品位を害した」

ではなぜ、出版の了解を取り消し、重版を認めないと主張するのか。

“あなたは、これらの記述が長崎新聞の報道や取材姿勢に対する意識的な批判で、社会的評価を下げる内容であるにもかかわらず、同社や同社関係者に一切取材していないことを認めています。”

「一切取材していない」というのは事実ではない。石川は、長崎新聞の記者に取材している。加盟社である長崎新聞の社としての見解を、取材や出版への妨害を恐れて求めなかっただけだ。この点については、提出した意見書でも述べている。

法務部長の増永修平も、石川が長崎新聞に社としての見解を取材することについて、「うちと長崎新聞の関係で、それができるかどうかはまた別」と聴取で言っている。

石川は、長崎新聞への批判についても、長崎新聞の社としての見解を取材できなかった以上、公になっているデータや、直接見聞きした事実に基づいたものに留めた。

だが、「取材を尽くしていない」前提で話は進む。

“取材を尽くしていない一連の記述は記者活動の指針に沿っていない上、社外活動規定第4条の不許可事由のうち、(2)社の名誉、信用を失墜させ、または社に損害を与える行為、(7)その他、就業規則およびその関連規定に違反する行為ーに該当し、就業規則第12条9号「職場の内外を問わず、職員としての品位を害し、社の名誉、信用を失墜する行為または社の利益を害する行為をしてはならない」にも反することから、社外活動規定第5条に基づき了解を取り消すものです。”

事実誤認をもとにして、「職員としての品位を害した」とまで書く。誹謗中傷である。

だがそれ以上に、石川が危機感を覚えたのは、いじめを苦に自殺した勇斗やその遺族のことなど眼中にないかのような態度だ。

共同通信はこうも記した。

“無断で重版をしたり、今回の経緯をメディアで公表したりすることは、職員就業規則や社外活動規定に違反し、懲戒の対象になる場合がありますのでご注意ください。”

共同通信の強硬な姿勢はどこから来るのか。その答えとなる一文も通知の中に含まれていた。

=つづく
(敬称略)

※この記事の内容は、2023年6月26日時点のものです。

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