医療ガバナンス学会 (2024年5月7日 09:00)
私は、過去に何度もそう思ったことがあります。もともとぽっちゃり体型だった私は、高校生の時に過度な食事制限によるダイエットを行い、摂食障害を患いました。
病識の全くなかった私は、「餓死寸前」まで自分自身を追い込んでしまったのです。
摂食障害だった自分の状況を理解し、太りやすい体質である自分自身を受け入れられるようになるまで、10年はかかったと思います。
●体型を比較し自己嫌悪
しかしながら、「他の人より、私の方が太い……」と、なぜか体型を比較してしまい、自己嫌悪に陥ってしまうことだけは、克服することができませんでした。
ドラッグストアで売っている、「やせられる」ことをうたっている商品を試したことも、正直何度かあります。
結局、効果を感じられず、長期間続けることへの恐怖心から、短期間で使用を中断してしまうことばかりでした。巷で流行するダイエット法も色々試すも、効果はありませんでした。
幸いにも、日本を離れたことで、どういうわけか、他人と体型を比較することは自然となくなったように感じています。医療費が高いアメリカでは、病気になってはいられません。
そのため、容姿のためではなく、心も身体も健康でいられるための食生活や運動習慣を強く意識するようにもなりました。今までの自分には、運動習慣が圧倒的に足りなかったことを、痛感しています。
さて、私の例は、ちょっと極端だったかもしれません。けれども、美しさやかっこよさといった容姿に対する意識は、多くの人が持っているものなのではないでしょうか?
今年の初め、とてもびっくりするようなニュース(※1)が飛び込んできました。医学誌「JAMA Network Open」に2024年1月10日に掲載された最新の分析によると、「世界中の十代の若者の10人に1人近くが、効果がなく有害な可能性がある減量製品を使用したことがある」というものでした。
この最新の報告は、オーストラリアのディーキン大学のNatasha(※2)氏らが行った、過去40年間における、計60万4,552 人が参加した合計 90 件の研究のメタアナリシスの結果であり、なんと、約 9% の青少年が生涯にわたって市販の減量製品を使用していることがわかったといいます。
減量製品の使用率は、男子よりも女子の方が多かったほか、最も一般的な減量製品はダイエット薬であり、生涯を通じて青少年の 6% がダイエット薬を使用していること、続いて4%が下剤を使用し、2%が利尿剤を使用していたというのです。
●使用を減らすのに介入も必要
思春期の若者、特に少女において減量製品の使用が高レベルで行われていることを報告したNatash氏らは、これらの製品が減量に効果がないことや、長期的な健康への有害な影響(処方されていない市販の減量製品は、子どもの身体的および精神的健康の両方にとって危険であり、使用開始から数年以内に摂食障害と診断されるリスクを高めるため、健康的な体重維持のために医学的に推奨されていないこと。
これまでの研究から、処方されていない減量製品の使用が、十代の若者の摂食障害、自尊心の低さ、うつ、薬物乱用、青年期の栄養不足や成人期の不健康な体重増加などと関連していることが報告されている。)から、彼らに対して減量製品の使用を減らすための介入が必要であることを指摘しています。
日本の外来の現場でも、体重を減らすための下剤や利尿剤、漢方などの処方を求める人がいたことは事実です。
私も、甘い誘い文句に誘われて、市販のサプリメントなどに、手を出してしまったことが正直あります。
幸い、私は効果を感じず、また費用も無駄に感じてしまい、やめることができましたが、先ほど紹介した最新の分析によると、十代の若年者の10人に1人が、効果がなく有害な可能性がある減量製品を使い続けているというのですから、恐ろしさを感じざるを得ません。
そんな私が、社会の「美」や「女性」に対するイメージに惑わされないようにするために、「やせないといけない」と思ってしまわないように意識して実践していることは、なるべくSNSや従来のメディア、広告から自分の目をそらすことです。そして、太りやすい体質であることを認め、運動習慣や食生活により一層気をつけることで、健康的な体型を維持していこうと、日々、自分自身に言い聞かせています。
【参照URL】
(※1)https://www.cnn.com/2024/01/10/health/teen-diet-pills-weight-loss-supplements/index.html