医療ガバナンス学会 (2024年5月18日 12:00)
この原稿は長文のため数回にわけて配信いたしますが、全文のPDFをこちらに添付いたします。
http://expres.umin.jp/mric/mric_24092-24095 new.pdf
先日の配信の際に記載に誤りがありましたので、修正させていただきます。
一般社団法人茨城県医師会は誤りで、正しくは一般社団法人茨城県保険医協会です。
お詫びして修正させていただきます。
一般社団法人 東京都保険医協会 代表理事
須田昭夫
2024年5月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
小括
1.医療事故調査の委員の公正性、中立性については表面的な文言による言い訳じみた選任理由を排除し、真に公正性、中立性が保たれる選任をするべきです。
2.長尾調査報告書は、医学的判断も医療行為に対する評価も誤っていることは、厚生科学審議会報告書の比較からも明らかであり、これを根拠に医療行為が「標準的ではなかった」と評価したことは弾劾されるべきです。
3.高度肥満症の臨床的特徴を検討せず、高度肥満症の危険性、高度肥満者のBNP値はBMIと逆相関すること、トロポニンT陰性であってもコーニス症候群タイプIの可能性があること、AEDのモニター心電図では急性冠症候群の責任病変によって虚血性変化所見がないこと、高度肥満者の心停止切迫時におけるアドレナリン筋注の有効性はエビデンスがないことなど、臨床医学的に重要な考慮要素を検討することがない上で、エビデンスを根拠とせずに安易な評価を記載した長尾報告書こそ標準的ではないと評価されます。
4.貴機構におかれましては、長尾報告書のように、人権感覚の欠如した委員が、医学的に詳細な事故分析を行わない結果、誤った内容が記載された医療事故調査報告書が二度と作成されないように要望いたします。そのためには、以下の(1)~(3)が必須と思料いたします。
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(1) 報告書作成終了前に、関係する現場医療者から意見を聞く機会を設けること
(2) 報告書に対する当事者の不同意権と拒否権を担保し、不同意理由を報告書に記載すること
(3) 医療事故調査委員会とは別の第三者によるチェック機能システムを構築すること
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付記:医師法第21条について
長尾報告書では、「外表面上、異状をみとめておらず異状死体の届出の必要はないと判断した。」と医師法第21条〔異状死体等の届出義務〕を正しく理解した判断がされている点は評価できます。
しかしながら、医師法第21条に関連して誤った記載も随所に散見されておりますので指摘します。
1.「死亡確認後、担当医師団は、その死が自然死かどうかを判断する。自然死以外、すなわち異状死の可能性が否定できない場合は、医師法に則り、警察に異状死届出を行う。これらの判断は、前医や救急隊からの情報を参考にしつつ、1994年に日本法医学会が作成した異状死ガイドラインに基づいて行われることが多い」との記載について
医師法21条の条文は「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」とあり、「異状死」という文言は存在しません。したがって、任意団体である一学会のガイドラインである日本法医学会が作成した「異状死ガイドライン」は、医師法などの法令とは全く関係ないものであり、当然、警察届出義務も規定されていません。したがって、長尾報告書でこのような言及をすることは不適切です。
2.「医師Dは、A氏の死因を急性心不全(自然病態)と考え、異状死体の届出は必要ないと判断した。」との記載について
医師法第21条のリーディングケースである最高裁都立広尾病院事件判決(平成16年4月13日判決刑集58巻4号247頁)の原審における、いわゆる「外表異状説」では、条文の「検案して異状を認めたとき」とは「病理解剖時に裸にして死体をじっくりと見て『外表面の異状を認めたとき』」としているため、異状死体の届出の判断について、死因(自然病態)を根拠とすることは誤りです。
3.「S病院救急外来では、『死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル』を常備し、同マニュアルに則って異状死判定を行うこととしていた。」との記載について
「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」は、異状死体の判定について解説しているのであって、異状死判定については解説していません。
4.「S病院搬送後に、S病院医師団が行った対応処置、及び死亡確認は適切であった。A氏の死亡を自然病態と考え、異状死届出を行わなかったことは、標準から逸脱しているとは言えないが、別の選択肢もあり得た。」の記載および「異状死届出を行わなかったこと、救急外来において、異状死ガイドラインではなく「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」を常備し、それに則って異状死判断を行う方針としていたことは、標準から逸脱しているとは言えないが、別の選択肢もあり得た。」との記載について
上記1、2で述べたように、医師法第21条の条文には、異状死の文言はありません。司法の判断(最高裁判決)に従って行政(厚生労働省)が作成している「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」が正しいものであり、本付記の冒頭で報告書の記載「外表面上、異状をみとめておらず異状死体の届出の必要はないと判断した。」ことが正しい判断です。別の選択肢は一切あり得ません。
三、本要望書を日本医療安全調査機構の理事・監事・顧問の全てに周知すること
冒頭で述べたように、貴殿におかれましては、医療の安全確保のために尽力されていることに敬意を表しておりますが、日本医学会会長の重責も兼任されておりご多用と存じます。
特に、医療事故調査制度における個別事案について、理事長自ら詳細な検討をされるには限界があると存じます。本件の「事例調査報告書」を、委員長自ら記者会見で公表した行為が、医療法違反、厚生労働省医政局局長通知違反であることは、明らかです。このことを、貴機構の理事・監事・顧問の全てに周知することによってことの重大性を共有していただき、長尾能雅氏の解任を組織全体として決定していただきたく存じます。
以上
2024(令和6)年5月11日
名古屋大学医学部附属病院
病院長 丸山彰一殿
一般社団法人 東京都保険医協会
代表理事 須田昭夫 法人印
〒160-0023 東京都新宿区西新宿3-2-7KDX新宿ビル4F
TEL:03-5339-3601 FAX:03-5339-3449
長尾能雅氏の副病院長解任要望書
貴殿におかれましては、高度で先進的な医療提供や充実した研究活動により医療の質と患者安全の向上のために尽力されていることに敬意を表します。
本協会は、東京都の保険医師、約6200名の会員で構成する団体として、保険医の生活と権利を守り、国民の健康と医療の向上をはかることを目的として、国民と共同した運動により医療制度の改善を追及するとともに、会員のための諸事業を行っています。
今回、貴院の副病院長である長尾能雅氏が、医療事故調査委員長となった、2022(令和4)年11月5日、愛知県愛西市の新型コロナワクチン集団接種会場でワクチン接種を受けた女性が死亡した事例の「事例調査報告書」を、委員長自ら記者会見で公表しました。この行為は医療事故調査制度の制度趣旨そのものを崩壊させ、法令に抵触すると考えられます。この件について以下に要望を申し述べます。
要望の要旨
一、副病院長長尾能雅氏を、国立大学法人法第18条違反、医療法第86条違反医療法違反、医療法第6条の21(22第2項)、厚生労働省局長通知違反を理由に貴病院における副院長職、および、医療の質・安全管理部教授から解任すること
二、本要望書を名古屋大学病院の全ての診療科部長、中央診療部門部長、教育・研究支援部門部長に周知すること
要望の理由
本要望書に添付しました一般社団法人日本医療安全調査機構 門脇 孝理事長宛ての「長尾能雅氏の解任および医療事故調査制度の運用改善を求める要望書」における要望の理由のとおりです。
以上
2024(令和6)年5月11日
国立大学病院長会議
会長 大鳥精司殿
一般社団法人 東京都保険医協会
代表理事 須田昭夫 法人印
〒160-0023 東京都新宿区西新宿3-2-7KDX新宿ビル4F
TEL:03-5339-3601 FAX:03-5339-3449
長尾能雅氏の医療安全管理協議会会長解任要望書
貴殿におかれましては、患者中心の質の高い医療の提供とともに、先進的な医療の研究・開発、将来の医療を担う良き医療人の育成、地域・社会における医療課題への積極的な参画や医療の国際競争力の強化および医療の安全確保のために尽力されていることに敬意を表します。
本協会は、東京都の保険医師、約6200名の会員で構成する団体として、保険医の生活と権利を守り、国民の健康と医療の向上をはかることを目的として、国民と共同した運動により医療制度の改善を追及するとともに、会員のための諸事業を行っています。
今回、貴会議の下にある医療安全管理協議会の会長である長尾能雅氏が、医療事故調査委員長となった、2022(令和4)年11月5日、愛知県愛西市の新型コロナワクチン集団接種会場でワクチン接種を受けた女性が死亡した事例の「事例調査報告書」を、委員長自ら記者会見で公表しました。この行為は医療事故調査制度の制度趣旨そのものを崩壊させ、法令に抵触すると考えられます。この件について、以下に要望を申し述べます。
要望の要旨
一、 医療事故調査・支援事業運営委員会委員長尾能雅氏を、医療法違反と厚生労働省局長通知違反を理由に貴会議における全ての役職から解任すること
二、本要望書を国立大学病院長会議の理事・監事の全てに周知すること
要望の理由
本要望書に添付しました一般社団法人日本医療安全調査機構 門脇 孝理事長宛ての「長尾能雅氏の解任および医療事故調査制度の運用改善を求める要望書」における要望の理由のとおりです。
以上
2024(令和6)年5月11日
一般社団法人 医療安全全国共同行動
議長 小泉俊三殿
一般社団法人 東京都保険医協会
代表理事 須田昭夫 法人印
〒160-0023 東京都新宿区西新宿3-2-7KDX新宿ビル4F
TEL:03-5339-3601 FAX:03-5339-3449
長尾能雅氏の専務理事等の解任を求める要望書
貴殿におかれましては、患者・市民の皆さまに、ご自身やご家族の安全について役立つ情報を提供のために尽力されていることに敬意を表します。
本協会は、東京都の保険医師、約6200名の会員で構成する団体として、保険医の生活と権利を守り、国民の健康と医療の向上をはかることを目的として、国民と共同した運動により医療制度の改善を追及するとともに、会員のための諸事業を行っています。
今回、貴一般社団法人の専務理事(専務執行理事)長尾能雅氏が、医療事故調査委員長となった、2022(令和4)年11月5日、愛知県愛西市の新型コロナワクチン集団接種会場でワクチン接種を受けた女性が死亡した事例の「事例調査報告書」を、委員長自ら記者会見で公表しました。この行為は医療事故調査制度の制度趣旨そのものを崩壊させ、法令に抵触すると考えられます。この件について以下に要望を申し述べます。
要望の要旨
一、 専務理事長尾能雅氏を、国立大学法人法第18条違反、医療法第86条違反医療法違反、医療法第6条の21(22第2項)、厚生労働省局長通知違反を理由に貴一般社団法人の専務理事、および、運営会議会議長から解任すること
二、本要望書を一般社団法人 医療安全全国共同行動の全ての理事・監事・各委員会委員長および各部会部長に周知すること
要望の理由
本要望書に添付しました一般社団法人日本医療安全調査機構 門脇 孝理事長宛ての「長尾能雅氏の解任および医療事故調査制度の運用改善を求める要望書」における要望の理由のとおりです。
以上