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Vol.24112 坪倉先生の放射線教室(10) ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)

医療ガバナンス学会 (2024年6月11日 09:00)


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この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。
https://www.minyu-net.com/

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2024年6月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

東日本大震災後、2011年4月より福島県浜通りにて被災地支援。
現在、福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授を務める坪倉正治先生が放射線や処理水について正しく、分かりやすく解説します。

●放射線うつることはない (2023年10月07日配信)

今さらですが、大切なことなので、放射線と放射性物質、そして被ばくと汚染の違いについておさらいしておきましょう。

線香花火に火をつけると、中心の火種は赤く燃えながら、周りにバチバチと火花を散らします。最初は勢いよく散っていた火花も時間がたつと勢いが弱まり、最後に火は消えてしまいます。例えるなら火種が放射性物質、火花が放射線、勢いが半分に弱まる時間を半減期と言います。

その他の例として、温かいコーヒーがコップに入っているところを想像してみましょう。そのコーヒーカップは周りに熱を発しながら、徐々に冷えていきます。この場合、コーヒーを放射性物質、周りに発せられる熱を放射線、徐々に冷えていく時間を半減期と例えています。

この場合、コーヒーがこぼれてどこかが汚れることと、そのコーヒーから発せられる熱を受けることは全く状況が異なります。ここでは、コーヒーから発せられる熱を受けることを、放射線を受けること(=被ばく)に例えており、コーヒーがこぼれてどこかが汚れることを、放射能汚染に例えています。

そのため、放射線を受けたとしても、そこからその周辺が汚染されることは全くありません。つまり、放射線がうつることはありえません。

このようなことは、多くの皆さんにとってきっと当たり前のことだと思いますが、いったん県外に出ると、当たり前ではない場合があります。どんな例でも良いので、自身で説明できるようになれると良いなと思っています。

●ベクレルは放射線出す力 (2023年10月14日配信)

前回は、放射線と放射性物質の違いについておさらいしました。

例として、温かいコーヒーカップを挙げました。そのコーヒーカップは周りに熱を発しながら、徐々に冷えていきます。この場合、コーヒーを放射性物質、周りに発せられる熱を放射線、徐々に冷えていく時間を半減期と例えています。

今回は、よく出てくる単位のベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)についておさらいです。

ベクレルは放射線を出す力(単純には放射性物質の量)の単位、シーベルトは人体への影響の大きさの単位です。この二つはその主語が異なることがポイントです。

ベクレルを使う場合は、必ず「もの」が主語になります。シーベルトは人間のための値なので「ひと」が主語になります。この食品は○ベクレル、この土壌は○ベクレルというのに対して、この食べ物を食べると人への影響は○シーベルト、この空間線量の場所にいると人への影響は○シーベルトとなります。

処理水の場合も、その水という「もの」の中に、トリチウムが○ベクレル含まれ、それを「ひと」が毎日2リットルずつ飲むようなことがあっても、年間の身体への影響は○ミリシーベルト程度と考えられる、という表現になります。

●人への影響はシーベルト (2023年10月21日配信)

前回は、よく出てくる単位のベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)についておさらいしました。

ベクレルを使う場合は、必ず「もの」が主語になります。シーベルトは人間のための値なので「ひと」が主語になります。この食品は○ベクレル、この土壌は○ベクレルというのに対して、この食べ物を食べると人への影響は○シーベルト、この空間線量の場所にいると人への影響は○シーベルトとなります。

では今回は、外部被ばくと内部被ばくのおさらいです。身体の外に放射性物質があり、そこから出る放射線を受ける場合を外部被ばく、身体の中に放射性物質があり、そこから放射線を受ける場合を内部被ばくと言うのでした。

そして、外部被ばくより内部被ばくの方が危ないという表現は正しくありません。放射線の身体への影響はその量の問題です。

例えば、鉄1キロと綿1キロのどちらが重い?というクイズがあります。何となく鉄1キロの方が重いような気がしますが、重さの単位はそういうものではなく、1キロであればお互いに同じ重さです。

外部被ばくと内部被ばくも同様です。前記のシーベルトという単位を用いれば、外部被ばくでも内部被ばくでも同じ尺度で身体への影響を考えることができます。身体の受けた放射線の量(シーベルト)が多い方が、身体への影響が大きいということになります。

●年間1ミリシーベルト、健康懸念ない (2023年10月28日配信)

前回は、外部被ばくと内部被ばくの違いをおさらいしました。身体の外に放射性物質があり、そこから出る放射線を受ける場合を外部被ばく、身体の中に放射性物質があり、そこから放射線を受ける場合を内部被ばくというのでした。

そして、外部被ばくより内部被ばくの方が危ないという表現は正しくありません。放射線の身体への影響はその量の問題なのでした。

では今回は「基準値」についておさらいです。

放射線には年間1ミリシーベルトや20ミリシーベルト、食品の1キロ当たり100ベクレルといったさまざまな「基準値」が存在します。処理水も基準をクリアした上で排出とかいった言葉が登場します。

よく誤解されますが、そもそもこれら基準値は、それを「下回っていれば安全」と「超えてしまうと危険」を分ける、境界となる値ではありません。

例えば、年間で追加被ばくが「1ミリシーベルト」という値は、がんを含む健康影響を懸念するレベルに比べて、十分に低い値です。もともと自然に存在する放射線からの被ばく量は場所によって異なり、国内でも場所により年間で1ミリシーベルト程度の差(ばらつき)があります。

食品の基準値も、どんな年齢の方でも十分に安全を見込めるように作られています。乳幼児・小学生・中高生・成人、男・女、妊娠しているかどうか、それぞれの放射線への感受性と食べる総量などを考えて、どの場合であっても年間の被ばく量が1ミリシーベルトを下回るよう作られています。

 

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