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Vol.24122 不眠症の女医「寝坊できない」の不安 質の高い睡眠のために改善したこととは?

医療ガバナンス学会 (2024年6月26日 09:00)


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この原稿はAERA dot.(2024年4月3日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/articles/-/218661?page=1

内科医
山本佳奈

2024年6月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は、どちらかというと寝つきがあまり良くありません。いわゆる「不眠症」です。「翌日仕事だから、寝坊できない……」そう思うと、心の中で不安な気持ちが大きくなってしまい、眠りが浅くなってしまうのです。

その結果、睡眠不足が続いてしまい、途端に日中の集中力や生産性が低下します。睡眠不足は、持病の頭痛も悪化させるため、生活に悪影響をきたしてしまうのです。

ずっと昔からそうであったわけではありません。仕事をするようになり、「遅刻できない」からと、アラームを設定する度に、「寝坊したらどうしよう」という不安に駆られ、寝るのが怖くなっていったように感じています。

●不眠症は国民病

さて、厚生労働省のe-ヘルスネット(※1)によると、不眠症は「国民病」であり、一般の成人の30%から40%は何らかの不眠症状を有していると書かれています。また、不眠症状のある人のうち、慢性的な不眠症は成人の約10%に認められ、加齢とともに不眠を訴える人は増加し、60歳以上では半数以上の人に認められるとあります。つまり、不眠症は特殊な疾患などではなく、よくあるコモンな疾患の一つと言えるのです。

入眠障害(寝つきが悪い)・中途覚醒(眠りが浅く、途中で何度も目が覚めてしまう)・早朝覚醒(早朝に目覚めた後、二度寝をすることができない)といった不眠症状が改善せず、長期間にわたって続いた結果、倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振など日中に様々な不調が出現するようになる、つまり「1. 夜間の不眠が続き」「2. 日中に精神面や身体面の不調を自覚して生活の質が低下する」という二つが認められたときに、「不眠症」であると診断されます。

どんなタイプの不眠を認めているのかによって、処方される薬の種類は変わります。厚生労働省によると、日本では成人の5%が、不眠のために睡眠薬を服用しているとあります。

東京の駅ナカにあった内科クリニックにも、「眠剤(睡眠薬)を処方してほしい」と処方箋を求めて受診される患者さんが少なからずいらっしゃったことを覚えています。夜勤業務があって生活が不規則になりがちという人、海外出張が多く時差対策に必要だという人、マンションの上の階の人の音がうるさくて眠れないという人、仕事のストレスがあり眠れないという人、翌日仕事がある日はどうしても眠れない、など、眠剤を求めるケースは多岐にわたっていました。

私も、睡眠薬を内服しているうちの1人です。勤務のある前日は、どうしても眠りが浅くなり、朝早くに目が冷めてしまい、睡眠不足が続くようになったのです。仕事や生活に支障をきたすようになり、医療機関に相談し、眠剤を処方してもらうようになりました。

●アメリカでは処方箋なし

日本を離れ、アメリカで生活する今でも、翌日の勤務に支障をきたさないように、勤務のある前日はほとんど内服しています。週末を含む勤務のない日の前日は、幸い、眠りにつくことができることが多いため、内服することは滅多にありません。仕事がない時はアラームを設定する必要がないため、不安感に苛まれることがないのが、内服せずに済む大きな理由だと思います。

幸い、アメリカにはSleep Aid(睡眠補助薬※2)を処方箋なしで購入することが可能です。一般的に市販化されているものとして、メラトニンやハーブ(バレリアン)、ジフェンヒドラミンやドキシラミンを含む鎮静作用のある抗ヒスタミン薬があげられます。

街中にあるドラッグストアに行くと、多くの種類のSleep Aidがたくさん陳列されています。大人用から子ども用まで販売されていて、タブレットタイプから、グミタイプまで販売されており、ニーズの高さが伺えます。

というのも、米国疾病対策予防センター(CDC※3)は、18歳から60歳までの成人に対して、1日あたり7時間以上の睡眠時間を取ることを推奨していますが、CDCによると、アメリカ人の3分の1は、毎晩7時間未満の睡眠しかとっていないのだといいます。

なんと、世界睡眠デーの統計(※4)によると、睡眠不足によって、世界人口の最大 45% が健康と生活の質を脅かされている状態だというのです。

こうした状況をうけ、南カリフォルニア大学ケック大学院の睡眠の専門家であるラージ博士(※5)は、「睡眠の質や量だけでなく、規則正しい睡眠、つまり毎晩同じように質の高い睡眠をとることが重要だ」と指摘しています。
「最新の研究で、睡眠のタイミングと睡眠時間の不規則性が代謝異常や心血管疾患のリスクの上昇と関連していたことから、規則的な睡眠スケジュールと睡眠時間を維持することは、心臓病を予防するためのライフスタイル重要な部分となる可能性がある。」とラージ氏は述べているのです。

とはいうものの、毎晩同じように質の高い睡眠をとるというのは、なかなか難しいものですよね。「生きていくために、忙しくてストレスの多い生活を送っていて、十分な睡眠時間が確保できない」という人が大半だと思います。

●7つのすすめ

そんな疲れているであろう大人に対して、世界睡眠協会(※6)の睡眠専門家が作成したという「睡眠衛生に関する 7つのすすめ」を最後に引用したいと思います。

(1)規則正しい就寝時間と起床時間を確保する。(概日リズムの乱れは、高血圧、インスリン抵抗性、糖尿病、そして最近では心臓発作や心臓病のリスクと関連していることがわかっている)
(2)昼寝に注意する(日中の昼寝は午後3時まで、45分を超えないようにする。)
(3)就寝する4時間前には、過度の飲酒を避ける
(4)就寝する6時間前にはカフェインを避ける(コーヒー、チョコレート、紅茶や緑茶など)
(5)就寝の4時間前には重いもの、辛いもの、甘いものを避ける(重くてスパイシーな食べ物は胸やけやその他の消化器系の問題を引き起こす可能性があり、その結果、入眠能力や睡眠能力に影響を与える可能性あり。砂糖に関しては、研究によって落ち着きのない睡眠障害との関連が指摘されている)
(6)定期的な運動を。ただし、就寝直前には運動しないこと(長時間座っていることが睡眠の質の低下に関係していると考えられている。国立睡眠財団によると、1日わずか10分のウォーキング、サイクリング、その他の有酸素運動を行うだけで、「夜間の睡眠の質を大幅に向上させる」ことができるとのこと。)
(7)睡眠環境を改善する(ベッドと枕が自分にあった快適なものであり、摂氏 15 ~ 20 度の涼しい部屋環境にする。スマートフォンを含め、あらゆる光を取り除き、仕事のアラートをすべてオフにする。)

私は、日々の運動を継続するとともに、夕食前まで飲んでいたコーヒーをやめ、夜はパソコンやスマートフォンをオフにし、心も身体もリラックスできるような睡眠環境の改善から始めたいと思っています。

【参照URL】

※1 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html#:~:text=%E5%80%A6%E6%80%A0%E6%84%9F%E3%83%BB%E6%84%8F%E6%AC%B2%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%83%BB%E9%9B%86%E4%B8%AD%E5%8A%9B%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%83%BB%E6%8A%91%E3%81%86%E3%81%A4%E3%83%BB,%E7%97%87%E3%81%A8%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

※2 https://www.medicalnewstoday.com/articles/323775#comparison

※3 https://www.cdc.gov/sleep/about_sleep/how_much_sleep.html

※4 https://worldsleepday.org/usetoolkit/talking-points

※5 https://www.cnn.com/2023/02/23/health/sleep-longevity-study-wellness

※6 https://www.cnn.com/2020/03/13/health/10-sleep-commandments-wellness/index.html

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