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MRIC Vol.24144 坪倉先生の放射線教室(13)原発事故の教育と避難指示について

医療ガバナンス学会 (2024年7月30日 09:00)


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この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2024年7月30日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●放射線教育、工夫が必要( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024011318694 )2024年1月13日配信

能登半島地震で亡くなられた方々のご冥福を謹んでお祈りするとともに、被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

さて、県内のさまざまな学校で放射線や原発事故に関する講義をするようになって12年以上になります。ほとんどの小学生が東日本大震災後生まれとなり、授業をする側により工夫が求められるようになりました。

震災数年後の頃は学生も真剣で「本当にそうなのか」といった質問が飛び交いました。「僕は身体が弱い。本当に大丈夫なのか」と泣いて質問してくる学生もいました。数年たつと、徐々に「慣れた」とか「飽きた」といった雰囲気が多くなったように思います。ただ、授業の中で原発事故や放射能汚染があったこと自体を説明する必要はありませんでした。内容についても、事故はあったけれども、放射線被ばくによる健康影響や遺伝影響などを懸念する必要はないということを丁寧に伝えることが中心でした。

そこからさらに数年がたち、新型コロナウイルス禍も経験し、より昔となった原発事故と放射線に関する講義は、学生たちのほぼまっさらな目にさらされるようになりました。原発事故と聞いても、教科書や家族から聞いたことのある昔のことという印象です。

それ自体が悪いことだとは決して思っていません。しかし、まだまだ誤解や偏見があったり、考えるべきことがあったり、私たちが知っておくべき基本的なことは多くあります。この連載も10年目になりました。皆さまのおかげで何とか続けられております。感謝申し上げます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
●原発事故、首相が避難指示( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024012018739 )2024年1月20日配信

能登半島地震では今も避難所での生活を余儀なくされておられる方も多くおられ、心が痛みます。

さて、今日は少し災害に関する話をしようと思います。災害が起こった際に、避難指示が出されることがありますが、これは誰が出すものかご存じでしょうか。

避難指示は災害対策基本法という法律に基づいて、市町村長が発令するものです。都道府県知事や内閣総理大臣ではありません。

わが国は非常に災害の多い国です。国土は南北に長く、四季があり、地域によって天候や地理的状況が大きく異なります。1959年の伊勢湾台風の経験からも、その地域ごとによって、起こり得る災害や状況判断が異なり、東京(中央政府)が離れた地域の情報をリアルタイムに判断することは困難です。そのため避難指示は市町村に委ねられ、さまざまな災害対策は、その多くが市町村単位でそれぞれ行うという構造になっています。

ただ、この状況は原発事故では異なります。原発事故の特殊性や、起こった場合に広域になる可能性があること、原子力や放射線という高度に科学的な判断が必要な場合もあります。そのため、今回の原発事故当時は、原子力災害対策特別措置法に基づき、内閣総理大臣(政府)が各地方公共団体の長に対して指示を行い、避難指示がされていました。

 

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