医療ガバナンス学会 (2024年7月31日 09:00)
この原稿は中村祐輔の「これでいいのか日本の医療」(2024年7月15日配信)からの転載です。
https://yusukenakamura.hatenablog.com/entry/2024/07/15/212857
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
理事長 中村祐輔
2024年7月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
「九死に一生」は死ぬ確率が九割、助かる可能性が一割の状況で、辛うじて生き残った状況を指す。危機一髪であったことは間違いないが、「九死に一生」という状況ではない。また、この記事では、あと数十センチずれていると危なかったと書かれていたが、数十センチもずれると頭の反対側を通り過ぎてしまう。数センチで危なかったと思う。
この「数センチのズレで生命に危機的であった」で思い出したのが、50年近く前のタクシー強盗だ。改造銃でタクシー運転手に発射された銃弾が頬を貫き、脊椎の腹側部で止まっていた。重要な神経も傷つけず、意識も清明であった。奇跡的に重篤な症状がなかった。これこそ、どの方向に数センチずれていても、全く状況は変わっていたはずだ。
こんなおどろおどろした話を切り上げ、明るい女子プロゴルフの話にしよう。古江彩佳選手が、今年日本人2人目のメジャー勝利をあげた。かつて。宮里藍選手が勝利を挙げたことがあるエビアンだが、当時はメジャー選手権に含まれていなかった。かつては、男女とも、米国で決勝に進むだけで精いっぱいであったプロゴルフだが、女子は世界で優勝争いを続けている。古江選手は、パリオリンピックの出場権を最後の最後で逃したが、オリンピックの開かれるフランスで開催されたエビアン選手権でリベンジした。日の丸の誇りだ。
スコアを見ると、最後の5ホールで5つスコアを伸ばし(バーディー・バーディー・バーディー・パー・イーグル)、1打差で優勝した。長いパットが入ったラッキーもあったが、それも実力だ。多くの選手が終盤になるとプレッシャーで押しつぶされそうになる中で、見事だ。私のような気の弱い人間にとっては、驚異的だ。
科学の世界では、日本の地盤低下が著しい中、女子プロゴルフの世界では、世界に羽ばたく選手が続出している。何が違うのか?一言でいえば、才能を延ばす教育の有無だ。日本の教育ではみんな同じで違いを認めない。それぞれの種に応じてどのように育てるのかを考えないのだ。この甘ったれた「結果平等主義」を見直さない限り、日本に花は咲かない。