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Vol.24155 坪倉先生の放射線教室(14)災害発生時の避難

医療ガバナンス学会 (2024年8月15日 09:00)


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この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2024年8月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●原発周辺、厳しい対策基準( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024021718997 )2024年2月17日配信

今回の原発事故をきっかけに、原子力災害の場合には、市町村や都道府県の境を越えた広域の避難先が前もって決められるようになりました。避難元と避難先の市町村がマッチングされているのです。加えて、避難が大変になり得る老人ホーム同士もマッチングが行われています。

このような防災対策を考えなければならない範囲は、今回の原発事故後に拡大されました。以前は発電所から半径8~10キロの範囲内とされていましたが、現在の制度では、発電所から半径およそ30キロ以内の市町村で策定されることになっています。

そして、30キロ内でも、発電所により近い半径5キロ以内の地域では、より厳しい基準が設定されています。30キロ内でも2段階に分けられているのです。簡単にいうと、この2段階の違いは、発電所のより近くでは、発電所が緊急事態となれば避難するのに対し、少し離れた場所では実際に放射線量が高くなれば避難するというものです。

専門用語で、発電所から半径5キロ以内の地域はPAZ(予防的防護措置を準備する地域)と呼ばれます。その一方、半径5~30キロ以内の地域をUPZ(緊急防護措置を準備する地域)と呼びます。それぞれの市町村が、自身がPAZに位置するかUPZに位置するかで、異なった対策を策定しているのです。
●災害時、屋内退避を重要視( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024022419061 )2024年2月24日配信

今回の原発事故をきっかけに、原発の周辺で防災対策を考えなければならない範囲が拡大されました。現在の制度では、発電所から半径およそ30キロ以内の市町村で防災対策が策定されることになっています。

防災対策の範囲だけではなく、災害発生時の避難の方法についても変更がなされました。その大きなものの一つは、「屋内退避」を重要視している点です。

「屋内退避」とは、原子力災害時に、窓や扉を閉め切って、建物の中にとどまることです。飛んでくるかもしれない放射性物質を吸ってしまうのを防いだり、周りにまき散らされるかもしれない放射性物質からの放射線を遮蔽(しゃへい)したりすることで、大量の放射線を浴びるのを防ぐ方法です。

原子力災害時に、原発から遠くに離れる(避難する)ことは、放射線を防ぐために最も有効で重要な方法の一つです。しかし、今回の原発事故の教訓から「避難行動には、それによって避けられる放射線影響と比較しても無視できない健康影響を、特に高齢者や傷病者らの要配慮者にもたらす可能性が高い。また、避難渋滞やパニックに伴う事故なども考えると、避難行動には常に危険が伴うことを認識すべきである」と述べられるようになりました。

大きな事故の場合であっても、遠方への避難よりも屋内退避が優先される場合があることが強調されるようになったのです。

 

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