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Vol.24160 「避妊インプラント」女医が挿入して1年 ひどい月経痛とだるさが激減

医療ガバナンス学会 (2024年8月22日 09:00)


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この原稿はAERA dot.(2024年6月28日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/articles/-/226533

内科医
山本佳奈

2024年8月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

アメリカでひどい月経痛が再発し、それを改善するための方法として「避妊インプラント」を左上腕の内側に埋め込んでから、はやくも1年が経ちました。

避妊インプラントの挿入は、妊娠を防ぐ避妊方法の一つであり、アメリカでは、避妊法としてすでに一般的な方法として知られています。残念ながら、日本では、まだ承認されていない避妊法の一つです。そのため、「あまりに辛い月経痛から解放されたい」と思い、駆け込んだ「Planned Parenthood」という医療機関のドクターから「あなたには低用量ピルではなく、避妊インプラントの方がいいと思うわ」と教えてもらうまで、私自身、恥ずかしながら存在を知りませんでした。

避妊インプラント(※1)の形状は、マッチ棒くらいの大きさの小さくて細い棒です。上腕の皮膚の下に挿入されたインプラントから、人工的に合成された黄体ホルモン様物質であるプロゲスチンが放出されることで、妊娠を防ぐことができるという仕組みです。

1つ目の避妊インプラントの特徴は、長期間(私が挿入した商品名Nexplanonは、最大5年間)効果が持続することです。妊娠したいと決めた時や、インプラントの使用をやめたいと思った時は、体内から取り出すことが可能です。インプラントを取り除けば、避妊効果はなくなるため、すぐに妊娠することが可能になります。

●避妊効果は99%以上

2つ目の特徴が、避妊効果が高いことです。「Planned Parenthood」の情報によると、避妊効果は99%以上(100人に1人未満が毎年妊娠することを意味する)とあります。腕の中に挿入されているため、低用量ピルの内服の時のような飲み忘れもなければ、間違って多くの量を内服してしまった、なんてこととも起こりません。

私が、日本で低用量ピルを内服することを諦めてしまった最大の理由が、毎日内服することへの大変さでした。毎日薬を飲むということは、想像以上に難しいことであり、飲み忘れてしまうこともしょっちゅうありました。さらに、処方箋が必要になるため、仕事の合間をぬって、定期的に通院しなければならないことも、想像以上に大変なことでした。

そのため、避妊インプラントの場合、1回挿入すれば、最大5年間も効果が持続することは、私にとってとても魅力的でした。なお、挿入するタイミングは、月経初日から5日間となっています。なお、インプラントを挿入すれば、すぐに避妊することが可能になります。

そんな避妊インプラントをドクターが薦めてくれた理由は、たった1回の挿入でいいこと、最大5年間も効果が持続すること、そして低用量ピルと同じように、月経痛を軽減してくる効果も得られるからでした。

●インプラントの副作用は?​

もちろん、避妊インプラントを挿入することによるデメリットもあります。最も一般的な副作用としては、挿入後6カ月から12カ月における点状出血(軽い出血や茶色のおりものなど)です。インプラントの副作用として、長期にわたる斑点出血や、月経が長く重くなることも、稀にあるようです。しかしながら、ほとんどの場合、月経自体が軽くなるようです。中には、全く生理がこなくなってしまうケースもあると言います。(なお、こうした症状は、心配する必要はない、と担当のドクターは言っていました。)

私の場合、どうだったかというと、インプラントを挿入してから2週間後と5週間後に、どちらも10日間ほど続く不正出血がありました。しかし、それ以降、不正出血はおさまり、挿入から1年のうちに、月経という月経血を認めたのは、2回のみでした。

毎月のようにやってきていた、ひどい月経痛やだるさといった煩わしい症状に悩まされることが激減し、日々のQOLが上がるとともに、毎月の生理用品にかかるコストも激減し、私にとってはいいことばかりです。

そのほかの副作用としては、それほど一般的ではないものの、頭痛、乳房の痛み、吐き気などが挙げられます。また、インプラントを入れた腕に一時的な痛みやあざ、または感染症が生じることもあると言います。

インプラント挿入にできた小さなアザや傷も、数ヶ月ですっかり消えてしまいました。そのため、挿入から1年が経過した今では、どこに避妊インプラントが入っているか、パッと見ただけでは全くわかりません(皮下に挿入されているため、触れるとどこにあるかは、すぐにわかります)。

避妊インプラントを挿入することによるデメリットとして忘れてはならないのが、性感染症の感染を予防することはできないことです。性感染症のリスクを大幅に軽減させるためには、コンドームを使用が必要になります。つまり、予期せぬ妊娠を防ぎ、性感染症から身を守るためには、コンドームと 避妊インプラントを併用することが、重要になるというわけです。

●費用は高額?

ちなみに、「Planned Parenthood 」によると、避妊インプラントの費用は、0~2,200ドルかかり、インプラントの除去には0~300ドルかかるとあります。しかし、幸いなことに、避妊インプラントはほとんどの健康保険、メディケイド、その他の政府プログラムにより、完全に無料(または低額)となるようです。

私自身、当時、医療保険に加入することができていませんでしたが、医療保険に加入していない人用の保険を紹介され、その場で加入したことで、ありがたいことに挿入費用は無料でした。それに加えて、日本で低用量ピルを毎日内服していた時のコストが、生理用品代と合わせて毎月3000円前後でしたから、最大5年間で18万円もコストを削減できるとなると、インフレのご時世、ありがたいことこの上ありません。

とはいえ、日本はまだ未承認であり、承認されたあかつきに、どれくらいの費用がかかるのかは未知数です。女性が毎月負担している月経に伴うコスト(生理用品、低用量ピル、鎮痛剤など)は、年間単位で考えると相当なもの。どうか女性目線で薬価などが決められることを願うばかりです。

最後に、避妊インプラントのおかげで、月経に悩まされることのない日々を過ごしている私ですが、最近、少々気掛かりなことがあります。それは、将来的に妊娠を希望することで、避妊インプラントを取り出さないといけなくなることです。すぐに妊娠することができなかったら、また、あの辛い月経痛に耐えなければならないのかと思うと、とても怖いなと思ってしまう、今日このごろです。

【参照URL】

(※1)https://www.plannedparenthood.org/learn/birth-control

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