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Vol.24170 危険な猛暑で女医が見直した水分補給「エナジードリンクは、水の代わりにはならない」

医療ガバナンス学会 (2024年9月6日 09:00)


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この原稿はAERA dot.(2024年7月10日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/articles/-/227623

内科医
山本佳奈

2024年9月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

危険な暑さに、警戒が必要なほどの猛暑日が続いていますね。日本気象協会に(※1)よると、7月8日には全国150地点で猛暑日(最高気温が35℃以上の日のこと)を記録し、近畿や関東、東海地方では、なんと40℃に迫る所もあったといいます。梅雨明けがまだとは思えない暑さになりました。次第に梅雨の空が戻るため、猛烈な暑さは落ち着いていく予報ですが、この時期としては「かなりの高温」(※2)が予想されています。

どうやら、異常な猛暑を襲っているのは日本だけではありません。ヨーロッパ、アジア、中東、北アメリカなど、世界中(※3)の人々を猛暑は襲っているのです。

CNNの記事(※4)によると、欧州連合(EU)の気候監視サービスであるコペルニクスの最新のデータ解析の結果、地球は記録上、最も暑い4月を経験したことが判明したといいます。さらに、11カ月連続で地球では前例のない高い気温が続いたことから、「2024年は、2023年の記録をさらに更新し、観測史上、最も暖かい年となる可能性が高いだろう。」との声が、一部の科学者から上がっているといいます。

●摂氏40度台の高温がが当たり前

アメリカでも、危険な熱波がアメリカ全土を覆っており、アメリカ住民の3分の1(※5)以上に対して、猛暑注意報が発令されている状態が続いています。アメリカ国立気象局によると、沿岸部や高地を除くカリフォルニア州全域で、摂氏40℃台(※6)の高温が当たり前になりつつあるといい、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州、ネバダ州、アリゾナ州は、山火事の可能性に備えて警告を出しているほどです。

私の住むサンディエゴでも連日、猛暑が続いています。先月末には、デル・マー(※7)という街の住宅街近くで山火事が発生、ハイキングをしていた女性が熱中症で死亡、といった熱波の影響と思われる出来事が立て続けに報じられました。熱波による猛暑の危険性が身近に迫っていることを、感じざるを得ませんでした。

実際に、昨年は数回しか使わなくて済んだエアコンを、今年は6月末からすでに使用しています。日中は、太陽がまるで自分の顔の横にあるかのような、ジリジリと焼けるような暑さになるため、なるべく日中は外に出ることを避ける日々です。

とはいえ、6月中旬までは、20度を超えない肌寒い日が続き、ずっと曇りがちな冬の天気が続いていたサンディエゴ。当然、身体が暑さに慣れていない、つまり暑熱順化 できていないところに、急に猛暑がやってきたわけですから、案の定、私の身体は早々に悲鳴をあげてしまいました。食欲が低下し、朝もなかなか起きることができなくなったのです。

幸い、連日のクーラーの使用と、可能な限り日中の外出を避けること、そして重要さはわかっているものの、なかなか実践できていなかった水分の摂取を心がけるようにしたことで、体調は次第に改善してきたように感じます。

好きだったコーヒーも、カフェインによる利尿作用を考慮し、飲む量を減らすようにしました。そして、どちらかというと好きではない「水」をこまめに飲むように、生活習慣を変えました。

●スポーツドリンク?​

水よりもスポーツドリンクの方が飲みやすかったことから、常に常備していた私ですが、ジョージ・ワシントン大学の救急医であるリアナ医師によると、「一般に、軽度から中程度の運動をしている大人や、遊び場で遊んだり、放課後にレクリエーションスポーツをしたりする子どもは、食事により必要な電解質を補充していることから、電解質の補給は必要ではない」といいます。

確かに、スポーツドリンクの主な目的は、発汗により失われた水分と電解質を補給することですが、これらの飲料にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質が含まる以外に、果糖、ブドウ糖、蔗糖などの糖が添加されているものも少なくありません。だからこそ、飲みやすく摂取しやすいという利点があるのですが、飲み過ぎは糖分やミネラルの過剰摂取(※8)にもつながってしまいます。

ジョージ・ワシントン大学の救急医であるリアナ医師(※9)によると、「一般的に、軽度から中程度の運動をしている大人や、遊び場で遊んだり放課後にレクリエーションスポーツをしたりする子どもは、私たちが食べる食べ物には、必要な電解質が含まれているため、電解質補給を必要としない。水による水分補給で十分だ」といいます。そして彼女は、「スポーツドリンクの必要性を検討できるのは、暑い天候下で少なくとも 1 時間、屋外で激しい運動をするアスリート。ただし、電解質補充が必要かどうかは、発汗量、環境の暑さと湿度、運動の激しさなどの要因によって決まるため、皆が必要となるというわけではない。」と指摘しているのです。

アメリカではたくさんの種類のエナジードリンクが販売されており、ジムでもたくさんのエナジードリンクの宣伝を見かけます。実際に、ジムではエナジードリンクを飲みながらトレーニングに励む人をよく見かけるのですが、リアナ医師(※10)によると、「エナジードリンクは、水の代わりにはならない」と忠告しています。

エナジードリンクは、水分と電解質の補給を目的としたスポーツドリンクとは異なり、カフェインやL-カルニチン、ガラナなどの合法的な刺激物が大量に含まれています。特に、カフェインは短期的にはエネルギーを高めますが、利尿作用もあるため、結果的に、水分が失われてしまいます。カフェインを摂りすぎると、神経過敏や不安、不整脈を引き起こすことさえあるのです。

どんな運動や活動であれ、水分の補給だけでなく、定期的な休息、そして、屋内で行うか、早朝や夜遅くに行うなどの暑さ自体を避けるという対策も重要です。個人的には無理をしないという、体調管理も大切だと実感しています。特に、夏の楽しいイベントでは無理をしがちですが、体調が芳しくなければ、無理をしていかない、休むということも、立派な熱中症や暑さ対策の一つと言えるでしょう。異常な猛暑がすでにやってきている今年は、昨年以上に対策が求められる夏になりそうです。

【参照URL】

(※1)https://tenki.jp/forecaster/t_fujikawa/2024/07/08/29483.html

(※2)https://tenki.jp/forecaster/a_shibamoto/2024/07/08/29484.html

(※3)https://www.cnn.com/2024/06/22/world/video/gupta-lklv-062201a-seg1-cnni-world-fast

(※4)https://www.cnn.com/2024/05/07/climate/record-hot-april/index.html

(※5)https://www.cnn.com/2024/07/06/weather/heat-record-temperatures-saturday/index.html?iid=cnn_buildContentRecirc_end_recirc

(※6)https://www.cnn.com/2024/07/05/weather/west-coast-california-oregon-heat-wave/index.html?iid=cnn_buildContentRecirc_end_recirc

(※7)https://www.nbcsandiego.com/news/local/brush-fire-in-del-mar-burns-near-buildings/3549557/

(※8)https://diamond.jp/articles/-/275331

(※9)https://www.cnn.com/2024/06/25/health/summer-heat-water-hydration-exercise-wellness/index.html

(※10)https://www.cnn.com/2024/06/25/health/summer-heat-water-hydration-exercise-wellness/index.html

 

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