医療ガバナンス学会 (2024年9月13日 09:00)
井上法律事務所所長、弁護士
井上清成
2024年9月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
本稿は、「第三次お産革命―出産費用保険適用による現物給付化とキャッシュバック」の続編である。今回は、第三次お産革命(出産における妊産婦等の支援策)における現物給付等の具体的点数配分の試案を述べたい。末尾の「出産費用保険適用一覧表」に添って、説明して行く。
2.分娩介助の標準化(複数の類型化)
分娩介助基本料は、分娩介助の際に行われる基本的な分娩介助行為の費用を一括して評価するものであり、その算定の基本金額は25万円とし、そこに類型別の金額を上乗せして、基本金額と上乗せ金額を一括して評価した金額(標準型)である。
(1)5つの類型化により、標準型の分類を行う。
①施設類型:病院5万円、診療所3万円、助産所2万円
②産室類型:陣痛室と分娩室の専用型2万円、陣痛室と分娩室の兼用型0円
③寝具類型:分娩台その他ベッド型2万円、布団その他フリースタイル型0円
④産婦類型:初産婦2万円、経産婦0円
⑤配置類型:専任助産師3万円、兼任助産師0円
(2)標準型の具体例は、たとえば、次のとおりである。
①病院の一例:基本金額25万円+病院5万円+専用産室2万円+分娩台その他ベッド型2万円+初産婦2万円+兼任助産師0円=分娩介助基本料36万円。
②診療所の一例:基本金額25万円+診療所3万円+専用産室2万円+分娩台その他ベッド型2万円+経産婦0円+専任助産師3万円=分娩介助基本料35万円。
③助産所の一例:基本金額25万円+助産所2万円+兼用産室0円+布団その他フリースタイル型0円+経産婦0円+専任助産師3万円=分娩介助基本料30万円。
(3)その他
自宅分娩は、(1)①の施設類型のうち、「助産所2万円」に準拠する。なお、後記3(3)の「出張加算」を算定することもできる。
3.主要な加算項目
(1)継続加算:5万円(病院も診療所も助産所も可能。ただし、出産した施設のみ。)
(2)かかりつけ加算:3万円(病院も診療所も助産所も可能。ただし、出産した施設に限られず、複数の施設での加算も可能。)
(3)その他
①出張加算(1日につき、2万円)
自宅分娩(前記2(3)のとおり)での出張の場合に算定できる。
②見守り加算(1日につき、2万円)
継続的な見守りを専従で行った場合に算定できる。
③安全管理加算(1日につき、2万円)
正常分娩に関する安全管理指針を作成し、かつ、正常分娩に関する安全管理講習に年2回以上参加し、保険金額上限2億円以上の損害賠償 責任保険に加入している場合に算定できる。
4.キャッシュバック
(1)標準型と加算の合計額が50万円未満ならば、原則廃止前の出産育児一時金の金額50万円との差額を、一部存続の出産育児一時金20万円を上限として、妊産婦にキャッシュバックすることができる。
(2)具体例は、たとえば、次のとおりである。
①上記の病院の一例:50万円-36万円=14万円(キャッシュバック)。
②上記の診療所の一例: 50万円-35万円=15万円(キャッシュバック)。
③上記の助産所の一例: 50万円-30万円=20万円(キャッシュバック)。
5.転送・搬送の特別加算
(1)転送・搬送の特別加算
助産所、診療所、病院から他の施設に、分娩までの間に転送・搬送した場合の特別加算である。
転送元・搬送元には分娩着手料(1日まで15万円、2日以上プラス5万円で合計20万円が上限)が発生する。かかりつけ加算としてプラス3万円も可能。搬送付添料としてプラス5万円も可能。
転送先・搬送先での標準型と加算の合計は50万円未満に限る。ただし、転送先・搬送先と転送元・搬送元との合計額は70万円を上限とする。
(2)具体例は、たとえば、次のとおりである。
上記の助産所から病院に転送・搬送された場合:
分娩着手料(2日)20万円+かかりつけ加算3万円+搬送付添料5万円+分娩介助基本料32万円(基本金額25万円+病院5万円+兼用産室0万円+分娩台その他ベッド型2万円+経産婦0円+兼任助産師0円)=60万円
6.出産育児一時金の原則廃止と一部存続
(1)出産育児一時金は原則廃止ではあるが、特例的な事態に対処するため、特例的な事態の時に限り20万円を限度として存続させる。
(2)出産育児一時金一部存続20万円の使途
①キャッシュバック20万円を限度として、一部存続。
②転送・搬送の特別加算を、20万円を上限として実施。
③無介助分娩の場合、20万円を上限として支給。
④出産保険を使わない場合は、20万円を上限として支給。
出産費用保険適用一覧表
http://expres.umin.jp/mric/mric_24175.pdf