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Vol.24198 【それって本当?】 オメガ3を摂るなら サプリではなく魚食

医療ガバナンス学会 (2024年10月18日 09:00)


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【それって本当?】 オメガ3を摂るなら サプリではなく魚食

※この文章は、『ロハス・メディカル』vol.170(2024年秋号)に掲載された記事です。

2024年10月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


【それって本当?】 オメガ3を摂るなら サプリではなく魚食

広く流通しているオメガ 脂肪酸のサプリメントですが、健康な人まで摂取するよう推奨されているわけではないこと、ご存じでしたか。

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※今回のお話は・・・

オメガ3サプリが万能薬かのようにもてはやされています。その健康効果は研究が進んでいますが、背景にはオメガ6過多になりがちな現代の食生活があり、オメガ3を足すだけでは解決しない、というお話です。

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サバやイワシなどの魚油に含まれるEPAとDHAの「オメガ3脂肪酸」は、今や手軽な“万能薬”であるかのような扱いで、サプリメントも大量に流通しています。

確かにこれまで世界中で盛んに、心血管疾患や脳卒中、中性脂肪値、がん、うつ病、認知症、リウマチなど炎症疾患の予防や改善などに効果があるのでないかと研究されてきました。直近では「筋力トレーニングにオメガ3補給を加えると、筋力が著しく向上する」というレビュー論文も発表されています。

ただ実際のところ、オメガ3のサプリメントなどで心血管疾患リスクが改善したなどとの研究報告は多い一方、影響なかったとの報告も複数あり、心房細動の発生率が高まった大規模臨床試験すらあったため、例えば米国立衛生研究所(NIH)は「食事での摂取が少ない人」に限って一部の心血管疾患リスクを軽減する可能性があると言及するに留めています。

がんも、オメガ3の摂取量やがんの種類によって研究結果の方向性が一定しません。リスク低減効果が示唆されている大腸がんや乳がんですらエビデンスは不足しています。前立腺がんは、オメガ3の摂取量や血中濃度との一貫した関係を示せていません。

この他、うつ病や認知症もまだ結論ははっきり出ておらず、リウマチでは、症状を緩和する補助治療としての可能性が示唆された段階です。こうしたエビデンス不足から英国栄養士協会は、オメガ3サプリを「一般国民には推奨されない」としています。
【 オメガ6過剰が本質 】

だったら、なぜここまでオメガ3が脚光を浴びているのでしょうか。

それは、オメガの純粋な実力でなく、「オメガ6脂肪酸」(日本では98%がリノール酸)というライバルが幅を利かせ過ぎ、という現代の食事事情のせいです。

オメガ6は、オメガ3と同じくヒトが体内合成できず食事から摂らねばならない「必須脂肪酸」です。

オメガ6からは、体内でアラキドン酸が作られます。アラキドン酸は細胞膜の構成要素として、脳、肝臓、皮膚などあらゆる組織の健康維持に必須です。2022年には、オメガ6が男性ホルモンの産生を促進することも分かり、加齢に伴う男性機能低下への治療応用も期待されています。

問題は、オメガ6はサラダ油などに多く含まれていて現代の食生活では摂り過ぎになりやすいことです。過剰に生成されたアラキドン酸が、体内で炎症物質やアレルギー誘発物質の過剰生産をひき起こします。

オメガ6からのアラキドン酸生成を抑えるには、競合するオメガ3との摂取比率が重要と考えられています。

長らく人類はオメガ6とオメガ3をほぼ等量ずつ摂取してきたのに、欧米食は約対になっていると言われます。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、平均値が約4対1です。この程度であれば大きな問題はないようですが、外食したりスーパーのお惣菜やコンビニ弁当を食べたりすることが多い人は、どうしてもオメガ6過多になりがちです。

そこに加えてオメガ3サプリを摂っても、脂質過多に変わりはありません。
【 魚介でオメガ6減 】

ということで米国も英国も、オメガ3摂取に関する現時点での結論は同じ、「魚を食べましょう」と推奨しています。焼き魚や煮魚をメインディッシュにすれば、オメガ3を摂取しつつ、その分、オメガ6やその他の油脂が含まれたおかずを減らせる置き換えとなり、両者の摂取比率が整うからです。

米NIHは、「バランスの取れた食事の一部として、不健康な食事の代わりに魚やその他の魚介類を摂ると、心臓健康が促進される」と結論づけ、米国人の食事ガイドラインでは「週間に少なくとも227gの魚介類」を摂るよう勧めています。

英国民保健サービス(NHS)も、「健康的でバランスの取れた食事のためには、魚を週に少なくとも回食べましょう(1回140g目安)。そのうち1回は鮭やイワシなど、油分の多い魚にしましょう」と呼びかけています。

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※ひとことまとめ
「魚に置き換えれば オメガ6も減らせる!」
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(表)米国FDAおすすめ! オメガ3を多く含む魚(100gあたり含有量)
はこちらから↓
https://lohasmedical.jp/e-backnumber/170/#p=10
[※FDAの資料をベースに編集部にて日本人向けに作成。 数字は文部科学省「日本食品標準成分表」に基づく]

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