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Vol.24202 現場からの医療改革推進協議会第十九回シンポジウム 抄録から(2)

医療ガバナンス学会 (2024年10月25日 09:00)


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2024年10月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

【Session 03】 活性化する福島県浜通り 13:50 – 14:50 (司会:高橋 謙造)

●束岡 裕晃    福島県南相馬市農林水産部農地集積課・課長補佐(元 健康福祉部健康づくり課・課長補佐)◆オンライン登壇

南相馬市での新型コロナワクチン接種の展開
~希望する方が速やかに接種を受けられるようにするために~

多くの方が新型コロナワクチンの効果に期待を寄せ、少しでも早く接種を受けたいと考えていた状況の中、南相馬市は2021年4月に接種を開始しました。希望する方が速やかに接種を受けられるようにするために様々な工夫を重ねながら、地域の医療従事者と連携・協力して、前例のない大規模なワクチン接種に取り組みました。

ワクチン接種を開始するにあたり、まずは接種希望者数を事前に把握するための意向調査を行いました。約90%の方が接種を希望しているという結果を踏まえ、接種体制確保に向けた地域の医師会との協議を重ね、南相馬市での新型コロナワクチン接種は、
①震災と原発事故の影響による医療従事者不足等の状況を鑑み、個別接種ではなく集団接種の方法とすること
②予約が取れないなどの問題を回避するとともに、市やコールセンターへの連絡を増やさない効果を期待し、予約制ではなく日時指定方式とすること
③集団接種会場への来場が困難な高齢者施設入所者や在宅療養者の接種を、巡回接種により行うこと
という3点を基礎に展開することとしました。
接種を進めるにあたっては、ワクチンの供給時期や供給量がなかなか把握できず、接種日程の決定などに苦慮しました。それでも、集団接種会場のレイアウトや巡回接種の人員配置の工夫、医師会による医療従事者配置の調整、従事する医師が不足する場合の市外医師協力体制の整備などを行うことにより、円滑な実施を実現できたと考えています。

新型コロナウイルス感染症及びワクチン接種を取り巻く環境は、発生当初と比べ大きく変わりましたが、市と地域の医療従事者がいかに連携・協力し、新型コロナワクチン接種を展開したのかをお話しします。
●吉田 幸子    浪江町立なみえにじいろこども園 看護師

移住して6年半、住民同士の確かなつながりを求めて

震災後、浪江町がようやく一部避難解除となったのが、2017年3月。私はその1年後の4月に、埼玉県から浪江町に移住しました。移住前、私は都立系の総合病院に勤務していました。震災がなければ今も都内で働いていたに違いありません。しかし、大震災、原子力災害で全町避難という未曽有の事態となった地域の苦しみは、福島に全く縁もゆかりもない私の心にもじわじわと染み広がっていきました。この地域の健康を守るためにはどうしたらよいのか、と考えた末、公衆衛生を学ぶために離職し、大学院に進学。卒業後、「福島で生活しながら見えてくる問題や課題こそが、住民の求めていることに一致する」と信じ、移住を決意しました。
役場職員として就職し、町の保健業務を行う中で重要な問題に気づきました。帰還した町民、避難している町民、それぞれの抱える苦悩や生じている問題が異なっていること、そして、その複雑な背景が、生活地域での孤立やコミュニティ形成の困難さに起因しているという事実です。特に、町内における住民自治組織の活性化は、現在も遅れています。
私は“地域に顔見知りがいて、楽しくご近所付き合いができて、困った時には助け合える関係”を促進することを目指し、仲間を探し、2年間の活動準備を経て、2022年に役場職員が自発的に運営する「なみえ ねっぱす隊」という任意団体を立ち上げました。訪問活動をベースに、中心となる有志の住民と共に地域食堂やお茶会の運営をする活動を展開しています。昨年度は60件を訪問し、食堂やお茶会は10回実施、延べ234名の参加がありました。今後は訪問した人々や食堂、お茶会の参加者の気持ちや行動の変化を丁寧に考察し、目的に沿っているのか評価していく必要があると考えています。
浪江町は大きく復興へと動いています。町全体の活気と共に、一人ひとりがつながることで、楽しく安心できる暮らしが実現できると確信し、一歩一歩進んでいきたいと思います。
●藤田 恭啓    福島県 楢葉町 保健福祉課 課長補佐 兼 保健衛生係長 兼 主任保健師

楢葉町でのワクチン集団接種のマネージメント 〜 ex nihilo, nihil fit 〜

新型コロナウィルス感染症は、2019年12月に1例目の感染者が報告された後、瞬く間にパンデミックとなった。我が国でも緊急事態宣言が出される事態となり、感染症の怖さを再確認する出来事であった。また、新型コロナ対策は、防疫・治療・予防といった感染症対策だけではなく、経済対策にも追われ、これまでの感染症対策とは一線を画する出来事だったと言っても過言ではない。
新型コロナワクチン接種は、国が声高に推し進めた新型コロナ対策の一つである。医療資源に乏しい地域で、短期間のうちに接種率を一定の割合まで引き上げるための手段として、当町では自治体主導による集団接種体制を構築することを選択した。
今回は、新型コロナウィルス感染症対策本部としての歩みを、ワクチン接種に焦点をあてて振り返り、当時の現場の状況を報告したい。
●佐々木 篤    福島県 いわき市役所 保健福祉部長 ◆オンライン登壇

いわきの「いごく的」展開について

1 齋藤光三先生のこと
・いわき市勿来地区の「齋藤内科」院長
・日本初の診療所型デイホスピタルと昭和の地域包括ケア実践
2 いわきの保健福祉行政の特色
・広域合併都市の保健福祉行政
・市内7か所の地区保健福祉センター体制
3 震災・原発事故と地域包括ケアと「いごく」
・東日本大震災と原発事故で失ったもの得たもの
・「豊かさ」の新しい価値観創出を目指した、いわきの地域包括ケア
・高い評価を受けたローカルメディアプロジェクト「いわきの地域包括ケア・いごく」
4 繰り返す災厄
・令和元年東日本台風~コロナ禍~令和5年台風13号
・「失われた5年間」、地域のつながりへの影響
5 「いごく的」展開と今後の展望
・地域で紡がれてきた「いごく的」取組みの数々
・震災と原発事故を経験した地域だからこそ、人口減少時代の「豊かさ」を具現化する先駆者に
・現代的課題への備え(孤独孤立、防災、疫病、地球温暖化)
6 齋藤光三先生が遺されたレガシーを次世代に
・個人の尊厳、ソーシャル・キャピタルの醸成と市民のウェルビーイング向上
・つながり、つむぐ豊かさを地域の魅力に

 

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