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Vol.24205 現場からの医療改革推進協議会第十九回シンポジウム 抄録から(5)

医療ガバナンス学会 (2024年10月30日 09:00)


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( https://genbasympo.net/ )

2024年10月30日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

【Session 06】医療×若者×イノベーション:新時代のヘルスケアを探る 10:05 – 10:45 (司会:尾崎 章彦)

●杉浦 蒼大      東京大学医学部3年、株式会社オクスリープ代表取締役

アフターピル緊急配達のニーズ調査 @大久保公園

私は昨年、大学の留年期間中に、医療ベンチャー企業・株式会社オクスリープを設立しました。私たちは医学生を中心としたチームで、「今すぐ薬が必要な患者さんに、お薬が迅速に届く(リープする)医療サービスの実現」をミッションに掲げ、日々奮闘しています。
当社で取り扱う予定の医薬品の一つに、レボノルゲストレル錠やエラといったアフターピルがあります。アフターピルは、できる限り早く服用することが肝要です。国内で承認されているレボノルゲストレル錠は、性行為後72時間以内の服用が求められており、海外第Ⅲ相試験では、性行為後 1~3 日以内の服用で妊娠阻止率が84%であったのに対し、4~5 日目の服用になるとその阻止率は63%に低下するという結果が示されています。また、海外製アフターピルであるエラは、120時間以内に服用する必要があります。
こうした特性から、アフターピルを必要とする患者さんには「今すぐに服用したい」という緊急性の高いニーズがあると想定されます。場面次第では、緊急配達が有効かもしれません。私はこのニーズを深掘りするため、新宿歌舞伎町の大久保公園周辺で“立ちんぼ”をしている女性の方々に、体当たりでインタビュー調査を実施しています。彼女たちから得られたリアルな声は、ターゲット層の抱えるペインを鮮明に示すもので、私たちが向き合うべきニーズそのものでした。
今年9月、株式会社オクスリープは、クリニックと提携したLINE完結型オンライン診療サービスをリリースしました。現在、アフターピル緊急配達サービスの大阪エリアと東京エリアでの展開を予定し、年内始動に向けて準備を進めています。配達拠点は、歓楽街がある東梅田と新宿となる計画です。
●小坂 真琴      オレンジホームケアクリニック 医師、福島県立医科大学医学部 放射線健康管理学講座 大学院生

福井相馬輪島「棲み込み」記

大学在学中に、医療ガバナンス研究所でインターンとして長くお世話になり、その一環でオレンジホームケアクリニック(以下オレンジ)との共同研究に従事しておりました。
大学卒業後、「異郷での研修を」とのアドバイスを上先生から頂き、単身、鹿児島での初期研修を選びました。島津久崇さんをはじめとする地元の皆様の温かいご支援があり、鹿児島で多くの仲間を得ることができました。今年9月には鹿児島市関東交友会のイベントにパネリストとして登壇しました。
今年1月の能登地震前までは後期研修も福島で続けていく予定でしたが、発災後、オレンジの繋がりで、福祉避難所でのボランティアに参加しました。それがきっかけで急遽、福島県立医大とオレンジ双方の先生に調整いただき、4月からオレンジで修行することとなりました。オレンジでは省察的実践家として毎週のフィードバックを頂きながら、「本人を主語にする」ことを徹底して患者さんと関わり続けています。
一方で、発災以前から決まっていた相馬中央病院勤務も行っており、毎週、福井(-大宮-仙台)-相馬の往復を繰り返しています。月に1回ほどのペースで輪島にも訪問し、被災地の現状を定期的に生で見ながら、訪問看護師の中村悦子さんにご指導いただいております。
被災から77年の福井、被災13年の相馬、そして被災1年未満の輪島、それぞれの場所に少しずつ「棲み込み」しながら、臨床・研究・発信を通じて感じたことを発表させていただきます。皆様、福井あるいは相馬でお会いできるのを楽しみにしております。
●山村 桃花      福島県立医科大学医学部 放射線健康管理学講座 MD-PhD学生

iktokの可能性

スマートフォンが普及してから約10年が経過し、SNSやAIなどの人工知能技術は我々の日常生活に不可欠なものとなった。SNSの主な役割は「情報の共有」から「情報の収集」へと変化し、特に若い世代ではテレビよりもインターネットの利用時間が長くなるという傾向が見られている。そうした中で、TikTokは比較的新しいSNSでありながら急速な成長を遂げている。特に日本国内の10代における利用率は55%に達し、2020年からの4年間で約2.6倍に拡大した。2024年の調査では、20代で33.7%、30代で22.3%、40代で14.5%と、若年層ほど利用率が高くなっている。
坪倉正治教授率いる放射線健康管理学講座では、「つぼ先生」という名前でXやInstagramに次いでTikTokを始めた。そして2023年9月にかけて、TikTokをプラットフォームとして用いて、原子力発電所からの処理水放出に関する情報を動画にして発信した。一番多い動画で26万回再生を記録し、数多くのコメントも寄せられた。その中には単純な反対意見、いわゆるアンチコメントだけでなく、アンチコメントに対して正確な情報を提供するリプライや、情報を得るにつれて理解を深めていくユーザーの存在が確認された。TikTokのアルゴリズムは、コメント数が増えるほど多くのユーザーに表示される仕組みになっているため、重要な社会的議題に関する情報発信や議論の場としても機能する可能性がある。

●丸井 秀則      福島県立医科大学医学部 放射線健康管理学講座 MD-PhD学生

学生目線で感じる第一人者的研究の凄さ

私は福島県立医科大学の放射線健康管理学講座という、2011年3月の東日本大震災後に創設された講座に、MD-PhD学生として所属しています。MD-PhDプログラムは、簡単に言えば「医師かつ研究者」を増やそうというもので、学生のうちから講座に配属され、研究活動に従事することになります。
現在この講座は、2020年に主任教授として着任された坪倉正治先生が率いています。坪倉先生は、福島第一原子力発電所事故後の被災地支援や健康調査に長年携わってこられ、それらの継続的で精力的な活動に基づく現地の方々の信頼のもと、私たちは研究活動に携われております。
当講座における研究内容は他分野にわたり、放射線災害、新型コロナウイルス感染症などのハザードにおける2次的健康影響から、コロナワクチンの接種後の抗体価検査などに及びます。これらの研究は、それぞれの分野において第一線を張るものが多く、それゆえに論文としての学術的発表などは、度々メディアの注目を浴びています。
例えば、当講座の研究生が筆頭著者として執筆した、福島県南相馬市での災害関連死の包括的な分析に関する論文は、国際放射線防護委員会の年誌に掲載されるにとどまらず、ニュースの災害関連死特集にも活用されました。メディアを巻き込んだ研究活動により、学術界を超えて社会全体に災害への意識を根付かせることができると考えます。
今回の発表では、私個人の数少ない経験からではありますが、研究活動に携わらせていただく中で出会ってきた先生方、またそれらの出会いから感じた可能性についてお話しさせていただきます。

●小山 愛珠      チェコカレル大学第一医学部 3年 ◆オンライン登壇

ゼロからの挑戦 ランセット投稿までの道のり

昨年の夏、私は自己成長やキャリア形成に向き合う転機を迎えた。チェコのカレル大学医学部 1 年課程を修了したが、進度の差に悩み、将来に不安を感じていた。そんな時、医療ガバナンス研究所という新たな環境でインターンシップの機会に恵まれ、自己の可能性を探ることができた。インターンでは、医療ガバナンスに関わる人々との対話を文章化し、新聞に投稿する経験を得た。この経験は、文章作成の基礎を身につけ、自信を持って今後の目標を明確にするきっかけとなった。
インターン終了後、ときわ会常磐病院の尾崎章彦先生のご指導の下、「児童虐待と愛着行動、児童精神科の国際比較」についてのショートレター執筆に挑戦した。塩崎恭久元衆議院議員の昨年の現場シンポでのご発表から課題をいただいたものだ。投稿先として世界的医学雑誌「ランセット」を目指し、尾崎先生をはじめ複数の医療ガバナンス研究所の先生方にもご指導いただき、論文作成を進めていった。
しかし、論文執筆の経験がない私にとって、この挑戦は非常に困難だった。論文構成やデータ整理、主張の一貫性に苦労し、さらに各国のデータの違いをどのように統一して論じるかという課題にも直面した。私は何度も文献を精査し、データの正確性を確認しながら、主張を練り直した。文章の構成や表現方法も改良を重ね、情報の流れを自然に感じられるよう工夫した。
こうした試行錯誤の結果、ランセット受理が実現した。この経験を通じ、私は「いつまでに完成させるか」ではなく「どれだけ良い文章にできるか」という視点の重要性を学んだ。論文執筆の過程で得た最大の学びは、何を成せるかを追求することが真の目標であり、それを追い求め続けることが私たちの使命であるということだ。今回の学びを忘れず、未来につなげ、これからも積極的な行動に努めたい。

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