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Vol.24206 現場からの医療改革推進協議会第十九回シンポジウム 抄録から(6)

医療ガバナンス学会 (2024年10月31日 09:00)


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2024年10月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

【Session 07】 少子化対策と子ども支援 10:45 – 11:50 (司会:高橋謙造)

●  大久保 明      鹿児島県伊仙町長

地方創生と離島医療の未来

これから私は離島医療に戻り、頑張ろうとしています。そんな時に髙橋謙造先生よりシンポジウムにて発表の機会をいただき、心から喜んでいます。
30年以上前、髙橋先生が東大小児科医局より徳之島徳洲会病院に離島研修で来たこと、先生が我々と一緒に離島で子供の治療を頑張っていたことを、改めて思い出しております。高野先生など個性豊かな先生方から、わたくしも社会のありかたなどについて指導を受けました。記憶に残っている中で、夫婦でこられた小児科ドクターが未熟児の管理に全力で取り組み助けたことをよく覚えています。

その後、徳洲会の徳田虎雄理事長は、理想の医療を目指し「生命だけは平等だ。」を実現するには政治力も必要だ、という信念で行動しました。そして今や、徳洲会は日本最大の医療組織に発展しています。私も、政治力が必要だということで病院を辞任し、伊仙町長を6期務めています。その結果、町は安定しました。

町長をしている間に、伊仙町はこの10年間で児童生徒が120人増えています。理由としては、まず15年前に、小規模校を存続するという決断をした効果が出たのだと思います。さらに、団塊の世代や若い世代が帰ってくるための政策を実施していることです。若い世帯には、家賃を安くし、1人あたり25万円、一家4人で島に来られた方には年間100万円の助成をしています。また、雇用に関しては、島に帰ってきた団塊の世代=高齢者の方々が入る施設には、介護士が必要になります。そして介護士の夫婦に子どもができたら、そのご家庭には徹底して補助金を出し、本土並みの収入にする。このような政策をとることで、「団塊の世代が島に帰ってくると子どもも増えていく」という仕組みができると考えます。
あらゆる英知を絞る、そうして若者の働く場を作り出していく、ということで地域を活性化できると考えております。
●南 美春      オレンジキッズケアラボ(医療的ケア児施設)利用児の母

●麻田 ヒデミ        一般社団法人英志会 丸亀子どものお城・リハビリクリニック 代表理事、一般社団法人サンテ・ペアーレクリニック顧問

地域における障害児医療の役割とは

当院は障害児を対象とした小児リハビリ専門のクリニックである。2024年3月に開業したばかりで、まだ開業から1年もたっていない。管理者として独立行政法人国立病院機構の元院長をお迎えし、常勤の小児神経内科専門医1名と、非常勤医師2名(精神科・小児神経科)でスタートした。リハビリスタッフは開業時7名体制だったが、現在は9名である。他に、臨床心理士や看護師が加わり、クリニックとしては比較的大所帯でのスタートとなった。

かつて、障害児リハビリといえば脳性麻痺や肢体不自由の子どもたちが多く、運動機能の改善などを行っていた。時は流れ現在、初診申込患者の大半は、社会問題にもなっている「発達障害」といわれる子どもたちである。行政の実施する乳幼児健診で指摘されたというケースや、近隣小児科医からの紹介も多い。
当院の初診時の患児の年齢は2歳から3歳が大半であり、9割以上が未就学児である。言葉や集団行動、コミュニケーション能力の獲得が中心となるため、ST・OTが中心となって訓練を行う。数は少ないが先天的な神経難病を持つ子どもたちに対しては、ロボットスーツを活用したPTによるリハビリテーションも行っている。

だが、障害児への関わりは長期にわたり、かつ医療機関だけで完結できるものではない。患児は成長し、いずれは成人となって社会の一員になっていく。一定の割合で医療・福祉的支援が必要となってくる。通常であれば、子どもたちは地域社会の中で見守られ、友達と遊び、学校で学び、成長していくが、障害児はその時々で壁にぶつかり悩み、選択を迫れられることも多い。
当クリニックの今後の課題は、地域の中で、障害児がより良い環境で健やかに成長できるよう、医療の枠を超えて様々な機関と協力できるネットワークを作っていくことである。

●松本 佐保姫      医療法人社団慈映会 理事長、まつもとメディカルクリニック 院長

多様性時代における個々人の意識改革について

日本の少子化問題は1970年代ごろから顕在化し、未婚化や晩婚化、育児に対する経済的負担の大きさ、女性の社会進出等多くの原因が挙げられ、国を挙げて対策を模索してきているが未だに有効な解決策は見出せずにいる。
地域・社会としての少子化対策は専門家に任せるが、当事者として一つ明確に言えることは、一人ひとりの意識を変えていくことの重要性である。ダイバーシティが当り前の時代とは言え、男性に比べ女性がキャリアと子育てを両立する事はまだまだ困難である。

私には23歳から4歳まで5人の子供がいる。最初の子供を出産した時に勤務していた総合病院には職員用の託児施設が無かった。循環器内科医として業務に追われ、緊急カテーテルにも呼ばれる日々を過ごしていた私は、子育てを諦めて、第1子は自分の実家に預けた。その後、子供が増え、今度は一部キャリアを諦めて、緊急カテーテルなどを担当しないポジションに移った。これはいまだ多くの女医が経験することであろうと思う。仮に誰かが子供の面倒を見てくれたなら……。女性医師が急患に対応することができ、男性医師もその分、休むことができるようになる。人的資材の有効活用だ。当番制にすれば済むので、簡単な話だ。では実際、誰が子供の面倒を見てくれるのか。
私は2016年に開業し、小さいながらクリニックグループを経営しているが、ストレスなく仕事をできているのは、現在のパートナーが自ら率先して家事・育児を等しくシェアしているということに尽きる。

夫婦両者が等しく子育て・家事を行い、尚且つ十分な社会資源のサポートがあれば、ストレスは大きく軽減するに違いない。子供は社会全体の人的資源であって、親のみが子育てに責任を持つべきものではない。逆に、子供は自分だけのものではなく社会全体のものだという意識を親が持つ必要もある。そして子持ち、子無しの垣根を越え、性別等も超えて、仕事を分担できるかどうか。その意識改革なしに少子化対策への解答は無いと思う。

●近藤 優実      バースハーモニー美しが丘助産院 助産師

「たいわ」から子どもの支援を行う

医療的なアプローチに合わせて、赤ちゃんとコミュニケーションをとることにより、心音が回復するという経験をしたことがあります。これを「たいわ」(胎話・対話)と言います。
切迫早産で入院中の妊婦さんには、胎児心拍モニタリングを行い、児の健康状態や子宮収縮の有無を確認し、医師へ報告します。心音が良くない時にどのようにすれば胎内環境が良くなるか考え、お母さんの姿勢を調整していると、赤ちゃんからメッセージが届きます。「お母さんが悲しい気持ちをしていて、わたしも悲しい」「早く生まれたいよ」など様々です。
大学時代に小児看護学でマイケル・ルイスの感情発達理論を学んでいたため、最初は、「まさか赤ちゃんに様々な感情がある訳がない」と考えていました。しかし、お腹に手を当てて、赤ちゃんに挨拶するようになると、赤ちゃんも身体を動かしてリアクションしてくれるようになり「赤ちゃんも感情がある」と、考えが変わりました。すると、色や風景、感情、時には言葉で、赤ちゃんが感情を伝えて来てくれていることに気がつきました。
たいわでは、自分の思いを一方的に伝えるのではなく、双方に伝え合います。注意点は、焦らないことです。これは、日常のコミュニケーションと同様です。

コミュニケーションやスキンシップが十分にとれると、人は脳の視床下部でオキシトシンが生成され、下垂体後葉から分泌されます。オキシトシンは「幸せホルモン」と呼ばれることが多いですが、特に「繋がる幸せ」を感じるホルモンになります。
妊娠、出産、子育ては、オキシトシンの分泌が促される機会が多くあります。現在、プレコンセプションケアを通し、まず自分の思いと向き合い、人との繋がりについて考える機会を作っています。これは、赤ちゃんとたいわするための心の準備体操になると思います。

 

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