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Vol.24210 現場からの医療改革推進協議会第十九回シンポジウム 抄録から(10)

医療ガバナンス学会 (2024年11月7日 09:00)


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( https://genbasympo.net/ )

2024年11月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

【Session 11】 大往生  16:50 – 17:50 (司会:上 昌広)

★パネルディスカッション形式

●小林 秀美   医療ガバナンス研究所

大往生 ~母とは両想い~

母の死は5月の連休のある日に突然やってきました。母は97歳(享年99歳)でした。
脊柱管狭窄症と圧迫骨折で背骨は曲がり、脚も衰えていましたが、内科的には問題もなく、排せつも食事も入浴もなんでも自分でできました。頭もかなりしっかりしていて会話も楽しめました。
ただ本人は、思いのほか長生きしてしまった自分を少し持て余しているようでした。私は私で、母は実在しているんだろうか、と思うこともありました。そして私はずっと、その日が突然くることを覚悟していました。
母はお風呂で亡くなっていました。しかし溺死ではなくコロナ肺炎によるものでした。特に熱もなく症状は出ていませんでしたが、CTによる死因調査により判明しました。医師より「ハッピー・ハイポキシア」(幸せな低酸素症)だと告げられました。
『苦しまずに逝かれましたよ。』
この言葉は私にとってどれだけ救いであったか、お察しいただけると思います。
最期まで母が母でいてくれたことに感謝しました。母は努力家であり立派に生き抜きました。これ以上の長生きは大きな負担であり、尊厳が失われたと思います。
私が思い描いたお別れではありませんでしたが、お互いに相手に感謝して迎えた両想いの最期でした。
●橋都 浩平   元東京大学医学部小児外科教授、がんの子どもを守る会理事

多死時代に死ぬという事:メメント モリ

TVコマーシャルを見ていると、そのほとんどは高齢者向けのサプリメントの広告である。曰く、膝の痛みが取れる、視力が良くなる、認知症を防げる、血圧が正常になる、などなど。どうやら皆さん、完璧な健康体を求めているようだ。もともと完璧な健康体があったところに、病気や老化が加わって死に至るという考えが根本にあるようだ。そうなると死は本来あってはならない避けるべき存在になる。しかしそんな訳はない。人間は生まれた直後から老化が始まっており、老化や病を含めた総体としての身体が本来の身体である。したがって死は必然であり、人生の一部でもある。

死が避けるべきものであれば、人生の最後の局面に至っても、それを遠ざけるためにあらゆる手を尽くすのが正しいということになる。最期が見えていても、医療者も家族も本人も(本人の意思はすでに確認できないことも多いが)、病院で積極的治療に邁進することになる。しかしこれから未曾有の多死時代を迎えて、それをやっていては急性期医療が成り立たなくなってしまう。本来は最期に積極的な治療を行わなければ、人間は枯れるように死ぬことができるのである。
病院以外の場所で、枯れるように死ぬためには、死に対する考え方を根本的に変える必要がある。それが古来の格言「メメント モリ」である。常日頃から死を意識し、死が必然であることを認識できていれば、枯れるような死に方をすることができるに違いない。Memento mori. 死を思え、と訳されることが多いが、死を常に意識しよう、というのが現代に即した分かりやすい翻訳ではないか。
●堀 有伸   ほりメンタルクリニック 院長

執着を断ち切れずに惑いながらの大往生もあるのかもしれない

もし何かへの執着が強すぎるとしたら、それが「大往生」を遂げるのを難しくするかもしれない。
フロイトに「喪とメランコリー」という論文がある。重要な対象を失った時に、ある人は激しく嘆き悲しむが、やがてその対象が過ぎ去ったことを受け入れていく。しかし、ある人にとってはその悲嘆が過ぎ去ることはなく、活力を失い、やがて深い抑うつ(メランコリー)を経験する。

「後者のような事態をひき起こす状況」をひき起こすものは何なのだろうか。
それは、「心があまりにも深く絡み合い、密着し、共生した対象」である。その対象が失われた時に、自分の外側の何かが失われたという感覚に乏しい。それよりもむしろ自分の一部が空しく虚無になるような経験となる。

私が震災後の南相馬市に移住し、最初に医療支援を行った精神科病院で対応した仕事でもっとも多かったのは、認知症を悪化させて徘徊や興奮などの行動異常を強めた高齢者への対応だった。その高齢者たちは震災後に、住んでいた故郷を離れ、家族が離散し、毎日の手仕事や顔なじみの集まる場を失った。その中の一部の人で、物忘れが強くなり、徘徊が始まる。夜中に起きて警戒区域内の立ち入りを許されていない自宅に向かおうとする老人もいた。そういう状況を何とかしてほしいという相談を、何回も受けた。引き受けたのはよいが、たいしたことはできない。入院していただき、医療的な手段で落ち着いてもらう。無事に成功したとして、治った訳ではない。認知症やその他の能力の低下は進行している。思いを十分に語る機会はなかった。

「大往生」とは、いろいろな対象との近すぎる関係を整理して、個としての距離感を作れているような時に成し遂げられるものではないか、と考えていた。しかし、あの老人たちのように何らかの対象に執着し、正気を失ってしまうような別離のあり方も、人間の真実を示してくれるように感じる。
●霜村 真康   菩提院・大運寺住職、未来会議副事務局長

往くひと、送るひと。
●   医療法人倫友会 理事長

大往生の為に貧困脱出が必要 税制および社会保障制度のリセットが待ったなし

大往生とは、穏やかなエイジングで90年以上、ほぼ自宅で最期を迎えることと考えます。
その大往生がだんだんと困難になりつつありますが、日本全体の貧困率の増加が一つの原因です。

医療費などの増大で、保険料や介護保険料が大幅に増加。
国際競争力対策で法人税カット。
その埋め合わせも含めての消費税アップが貧困化の原因です。

日本1945~
中華人民共和国1949~
ともに、高齢化と制度疲労が見られます。
出生数も270万人から、70万人まで減少。
不妊治療などの尽力にもかかわらずです。

1945~1964 終戦後、日本人は何を食べてきたか?
①Chocolate
②駄菓子屋と10円文化
③立ち食いうどん
④ヒロポン

少子高齢社会
①こども食堂
②放課後デイ

(まとめ)
大往生の為に、貧困脱出が必要です。
医療費増大を増税でまかなうのは限界を超えました。
こども食堂など 民間の善意に頼るのも限界です。
税制および社会保障制度のリセットが待ったなしと考えます。
●紅谷 浩之   医療法人オレンジグループ 代表
●姜 慶五   中国コロナ予防管理国家専門家グループ委員、中国健康促進健康教育協会 スーパーバイザー
(指定発言)

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