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Vol.79 東大剣道部 震災被災地への医薬品搬送を手伝う

医療ガバナンス学会 (2011年3月22日 08:00)


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東京大学運動会剣道部・医学部
齋藤宏章

2011年3月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

3月18日夜23時24分。剣道部のメーリスで監督から、という内容でこんなメールが来た。「OBの先輩(医師)が被災地へ薬を運ぶのに積み込みの人手が足りないので協力してくれないか、とのことです。手伝える人は至急連絡下さい」
すぐに行く旨を返信。何か出来ることはないかと、浦安で泥かきをしていると聞いて先輩と馳せ参じようとしていた私にはやっと何か出来るのだなという思いだった。しかも薬の運搬とは…医学部の私にとって、お願いされるというよりも是非やらせて下さいという心境だった。

翌朝駒込駅でおりて日本医師会に向かう。少し緊張・・・どういう雰囲気なのだろう。医師会前9時集合で10分前に着くも、既に始まっていた。とりあえず、いわれるがままに荷物を運ぶ。2トントラックに大小さまざまなダンボールが50個くらい積まれていた。
ラベルには薬品名が書かれている。医師会の中には宮城、岩手と書いた札があり、ここで仕分けして、またトラックに積みなおすらしい。そのトラック分運び 終えると、職員の人に説明を受ける。結局監督を含め部員8名が来ていた。監督が来ていたことに少し驚く。しかし、あんな時間によく8人も集まったなという 会話をする。家にいてもやることないしな~とか言うが、実際はそれぞれやはり何かしたいと思っていたようだ。聞けば他の部員で地 元に帰っている人も結構いるらしい。買占めはありえないよなとか、マスコミは不安煽り過ぎとか、原発はどうなるのだろう、停電はどうだとかいう話をしつつ 次のトラックがくるのを待つ。

電車の中などで思うが、震災以降やはり話題は地震関連のものが多い。ほんの些細な会話も全て。やはり停電していることもあってとりわけ今回はよそ事には思えないっていう認識があるようだ。震災後少し福岡にいたがそういう部分は東京と違う気がする。

初めはあまりトラックが来ず、「あんまり必要なかったかな俺ら」という会話をしていたが、10トントラックが来てからが大変になった。まず、建物の中に 運ぶ。手押し車にトラックからバケツリレー的に積み、運んでいく。同じ動作をずっと繰り返すから結構大変。積んで、走って、下ろして、走って、積んで。医 薬品の中には瓶のものもあるようでものすごく重かったりもするが誰も弱音をはかずに、てんやわんやと作業をする。たまに通行人が道を通っていたがどういう 風に見えたのだろうか。意外と指示などを与えられた訳でもないのに、それぞれ自分の仕事を見つけて自然と分担していく。大学生になって初めてこういうこと が大人というものなのかと思った。

そのうちに同時並行で仕分けが終わった荷物をトラックに載せる作業がスタート。こちらを主に手伝う。よくわからないが、同じシールを張ったダンボールが どんどん運ばれて来るのでそれを機械的にトラックの荷台へ。1人の先輩は搬送業者の人と共に荷台へ上がり作業。本職のようだ。隣で作業している監督も汗ば んでいる。重い荷物を持ち上げるのは結構腰にくるなとか話しつつひたすら持ち上げ、おいて、積んで、持ち上げ。ロキソニンとか同じ名前の薬品を沢山積むの で、結構名前を覚えた気がする。お前には勉強になるなとかいいながらも現役生顔負けの働きをする監督であった。

結局、職員の方と合わせ合計30名程度で2トントラック2台、4トントラック1台分を3時間でおろし、仕分け、積み込んだ。自分で言うのもアレだが、結 構すごい連携だったのではないかと思う。職員の人と、運送の人が大声で是は何行きだの、次がいつ来るのだの怒鳴っている横で、女性の職員の方がずっと英語 でどこかに電話をかけていたのが印象的だった。

出発式で空港まで付き添う人を送り出す。職員の方がジェットと言っているので何かと思えば空港から飛行機で送るらしい・・・自衛隊だとか。凄いな。しか もそれまではパトカーの先導つき。これには職員の方もびっくりしていた。見送るときはなんだか達成感とも充実感ともつかない気持ちだった。

地震が起きたのはツイッターで北海道、東京の人が揺れた!と言っていたのを見て知った。東北に住んでいる知り合いから、「無事。今は配給と炊き出しで頑 張っている」というメールが来たときには、何か非現実的だと思っていたものがリアルに変わった現実を突きつけられたような気がした。直後は寮生と「これは 絶対何かせないかん!俺ら学生も動かんと!」と息巻いていたものの、実際に出来ることは募金、献血以外にほとんどなかった、思いつかなかった。とてももど かしかった。学生に出来ることっていうのは少ないのだなあと実感したし、逆に後3,4年後であれば自分も医療関係者として駆けつけられることが出来たのに という悔しい気持ちが強かった。勉強というのはこんなに大切なんだなと実感した。何も学んでいなかったら何も出来ない。当たり前だけれども、何も出来な いってどういうことなのかと実際に思い知らされた気がする。でも、寮の先輩でこう言う人もいた。「これはチャンスだ」と。確かにものすごいことになってい るけれど、こんな状況を体験できることはない。今をしっかり見ておくことが自分達や日本の将来にもつながると。また、何も今現 地でボランティア出来なくても、将来復興とか、防止とかに関わることで出来る貢献もあるんじゃないのという人もいた 。今は、もし10年後こういった震災が起きたとしたら駆けつけて役に立てる技量を身につけねばと思うばかりだ。

出来ることは少ないけれど、ダンボールを運ぶことで役に立てるのならまた手伝いたいねと言って医師会を後にした私達剣道部だった。

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