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Vol.25029 新しい経営者像を示してほしい

医療ガバナンス学会 (2025年2月17日 09:00)


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医療ガバナンス研究所理事長
上昌広

2025年2月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

初めまして。ダイヤモンド社の編集者、日野なおみと申します。

このたび、2月19日に『小澤隆生 凡人の事業論――天才じゃない僕らが成功するためにやるべき驚くほどシンプルなこと』を出版しました。

小澤さんは、ヤフー(現LINEヤフー)の前CEOであり、それ以前は楽天でも活躍された稀代の事業家として知られています。楽天イーグルスやPayPayの立ち上げに関わり、孫正義氏や三木谷浩史氏も厚い信頼を寄せていた人物です。

実は、MRIC編集長の上昌広先生とも深いつながりがあり、日本初の「コンビニクリニック」誕生にも貢献しています。本日は、上先生に許可をいただき、本書に収録した上先生のコラムを紹介します。小澤さんの人物像を知ることができる良質な記事になっておりますので、ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ本書をお手に取ってみてください。以下のリンクからご購入いただけます。

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新しい経営者像を示してほしい

小澤さんとの最初の出会いは2004年ぐらい。彼が楽天にいて、プロ野球の再編問題をやっていたころだったと記憶しています。ほかにも川邊健太郎さん(LINEヤフー会長)、佐藤大吾さん(NPO法人ドットジェイピー理事長)、穐田誉輝さん(くふうカンパニー取締役代表執行役)なんかもいて、みんな若かったですね。

彼らが師匠と呼んでいるスズカン(鈴木寛・東京大学教授)が、私の高校時代の先輩なんですよ。スズカンさんと彼らが定期的に開催している勉強会に顔を出しているうちに接点ができました。

スズカンさんは2000年代前半から医療に関心がありました。そして、私たちの仲間とも親しく付き合うようになりました。そこに小澤さんや川邊さんも呼び込んだんです。
2人はもう一卵性双生児のようによく似ていて、とても礼儀正しいんです。メールの返事は早いし、言葉遣いもとても丁寧。だから年上に気に入られる。

私が驚いているのは、20年経った今も態度が全然変わらないことですよ。普通、偉くなったり忙しくなったら、そういった基本がおろそかになりますよね。でも、2人は全然変わらない。今も気持ちよくお付き合いさせていただいているのは、そうした面がとても大きい。誠実で信頼できるんです。

私が、本格的に深く付き合うようになったのは、「コラボクリニック」という診療所の立ち上げです。「ナビタスクリニック」を知っていますか? JR東日本が駅直結を売りに展開している診療所で、その先駆けとなるモデルを、新宿駅の西口につくったんです。
●「失敗を直していくのが事業」

当時は医療にも大きな変化の波が訪れていて、2000年代の半ばに既に大学病院が衰退していました。そして専門病院が一人勝ちの状態だった。医療だけでなく、あらゆる産業で変化が起きていて、例えば流通業界では百貨店の代わりにコンビニや専門店が勢いを増している状況でした。

スズカンさんとは、そのうちに医療の世界にもコンビニ化の波が来ると言っていて、そのための手を打とうという議論をしていたんです。

そして、彼のゼミ生や私が主宰していた東京大学医科学研究所の研究室に集う学生を中心に、コンビニ型クリニックを立ち上げようというアイデアが出てきました。2006年4月に、学生を中心にプロジェクトが立ち上がりました。まあ今で言うスタートアップですよ。その指導に当たったのが、小澤さん、川邊さん、穐田さんたちでした。今考えたらとても豪華なメンバーですね。

私が感心したのは、小澤さんたちのアプローチです。当時の医療クリニックでは割と革命的だったと思うけど、彼らはまず、ニーズを徹底的に調べるわけです。普段、仕事が忙しくて診療所に行けない人は、何を求めているだろうかと調査をしていく。そして立地とホスピタリティが大切だと結論づけて、ホテルや飲食店なんかを参考にしながら、徹底的にサービスを突き詰めていきました。この顧客目線はさすがにネットサービスで鍛えられていると感心しましたね。私自身すごく勉強になりました。

印象に残っているのは、「この世界って、失敗を直していくだけなんですよ」という言葉です。ネットの世界ではお客さんからのフィードバックは、あればあるほどいい。それを1個ずつ直していけばどんどん改善できるから。だから顧客のクレームは宝なんです、と。

そして言葉通り、本当に泥くさく意見を吸い上げていくんですよ。ネット企業の経営者って派手で華々しいだけでしょ、という印象がありましたが、全然違いました。むしろ地味で愚直な姿勢に感動しました。

小澤さんたちが色々なことに挑戦できるのは、プロ野球の再編問題をやり抜いたことが大きいんだと思います。細かいことは分からないけれど、当時、リーグ再編を目論んでいたプロ野球界の重鎮を相手に争って、世論を味方につけて阻止したんだから。そんな特別な成功体験があるから、大きなことにも躊躇なく挑んでいける。自分たちが動けば世の中は変えられると自信をつけたのでしょう。

あとは、仲間がよかったんでしょう。川邊さんや佐藤さんといった、キャラクターが立ったおもしろい人間がわんさか集まっていた。世の中を一緒になって変えようなんて考えるやつは、なかなかいないですよ。

そして、師匠の存在ですね。スズカンさんはやっぱり吉田松陰のような存在なんだと思います。当時はみんな若くて、脂が乗り切っていました。
●まだ、もう一仕事できる

私は、変化というのは一世代かかると思っているんです。私と一世代上は違うし、私の世代と今の若い子ともまた価値観が違う。でも、共通して課されているのは次の世代を育てるということです。
変化を起こすという点において、私は教育が大事だと思っていますけれど、それと同じくらい、人間関係の構築は重要です。
その点、小澤・川邊コンビはその力が卓越しています。いつも、人と人とがつながるような場を率先してつくっています。そういう場づくりを、彼らはこれからもやっていくんじゃないですか。やっぱりおもしろいですよね、人間と人間の出会いというのは。それが人の生きる意味なのかもしれない。

これからの期待? 個人的には、彼らには新しい経営者像をつくってほしいですよ。
若くして日本を代表するネット企業の経営者を経験した彼らには、まだまだ時間があります。まだ、もう一仕事できますよ。何か世の中を変えるような大きな動きをしていただきたいですね。
くれぐれも、財界活動に終始して、ワイン片手に業界のよもやま話をするような人たちにはなってもらいたくない。偉くなって、国から勲章をもらうことを目指すような姿は見たくないかな(笑)。

 

上 昌広(かみ まさひろ)氏:東京大学医学部を卒業後、血液内科での臨床経験を経て、医療ガバナンス研究所の理事長を務める。感染症対策や医療ガバナンスに関する研究者として活動。地域医療の支援や国際共同研究を進めており、日本国内外の医療環境の改善に尽力する。

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