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Vol.25043 抱っこさせてくれる赤ちゃんは、あざとくて可愛い

医療ガバナンス学会 (2025年3月10日 09:00)


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バースハーモニー美しが丘助産院
近藤優実

2025年3月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

深夜1時廊下に赤ちゃんの泣き声が響きながら、赤ちゃん用のベッドに赤ちゃんを乗せたお母さんが目を腫らして「何しても、泣き止みません」とやってきました。この時にふと昔の自分と照らし合わせていました。

「おぎゃー、おぎゃー」と赤ちゃんが泣き止まないのに、なんで?と焦っている時に、ふと先輩助産師に「なんで赤ちゃん泣いているんだと思う?」と聞かれました。新米助産師の私は、この時に教科書で覚えたことを必死に思い出し、間違えちゃいけないと思いながら、「空腹かおむつが汚れて泣いている可能性が考えられます。」と答えました。先輩はさらに「両方違ったらどうするの?」と言われて頭の中が真っ白になり、言葉に詰まっていると、「とりあえず抱っこしてあげたら?」と言われ急いで抱っこし、赤ちゃんはしばらくすると泣き止みました。
そして先輩は、「赤ちゃんは泣くのにめっちゃエネルギーを使うんだけど、それでも何か思いを表現して伝えようとしているんだよ。今回は抱っこがして欲しかったんだね」と優しく教えてくれて私は、そうなんだぁ〜と学びました。その頃赤ちゃんは、腕の中でスヤスヤ寝ていて、泣き止んでくれてホッとした気持ちと可愛いさに癒されていました。

生まれたてホヤホヤのわが子は可愛いのに加えて、慣れていないため緊張してなかなか手を伸ばせません。そのため、お母さんもお父さんも助産師のサポートを必要とします。

抱っこのポイントはしっかり密着することです。しかし寝ている状態から首の座っていない新生児を引き寄せることが怖くて、出来ない人たちが多いです。日本の産科施設の平均在院日数はお産した日を0と数えて3泊4日です。この限られた入院期間に抱っこ、おむつ交換、授乳練習、沐浴などを行います。どの手技もベースは、抱っこです。抱っこして赤ちゃんに慣れることが必要になります。抱っこに慣れている助産師の腕の中で寝る赤ちゃんを見て「プロは違いますね。」「助産師さんのことが好きみたいだから、赤ちゃん預けて、私は休みます」などよく言われます。
どちらも違うから~と言いたくなりますが、産後のメンタルが不安定な時にどう伝えるか考えさせられます。

赤ちゃんが寝入り、お母さんのもとに連れて行った時に衝撃が走ったことがあります。それは、部屋でパックをしながら、テレビをつけてスマホのゲームをしていた時です。もちろん自分のケアはとっても大事なのですが、待望の我が子のお世話よりそっちが優先なのに驚きました。

そもそも核家族と少子化の今、子どもと関わる仕事をしていない限り、新生児に限らず子どもを抱っこした経験がない人がほとんどです。そんな、抱っこをしたことがない、20代女子6人と男子4人に1歳児を抱っこしてもらいました。

女子は子供に話しかけたりしてお世話をするような抱っこをしていたのに対し男子の反応が違ったのです。子どもの可愛さにメロメロになり、これまで見たことがないような顔の緩み方をして可愛いの連呼でした。抱っこが終わってからも可愛かったなと皆で話していました。

健やか次世代育成総合研究事業の「父親の健康状態および育児参加の効果に関する研究」では、父親が早い段階から育児に積極的に参加することで、子どもの情緒的安定や社会性の向上が確認されています。川崎医療福祉大学の岡本絹子氏(2003)は、父親が「育児の会話」,「育児の相談相手」,「母親への気遣い」をいつもしている場合に、育児不安度得点の低い母親が多かったと述べています。
お茶の水女子大学の蟹江教子氏(2005)の研究では、父親の家事・育児量と父親の生活満足度との関連を検討し、子どもの洋服の着脱の手助けやトイレの介助といった基本的育児や子どもとの遊びを中心としたあそび的育児の量が多いほど、父親の生活満足度が高いと述べられています。

お世話をしてくれるお母さんと遊んでくれるお父さんという関係性は、子どもの発達、お母さんの育児不安の解消だけでなく、お父さん自身の豊かな生活につながっていることが言えるのではないでしょうか。

もともと助産師や保育士など子供と関わってきた人たちも我が子の可愛さはひとしおだと口を揃えて言います。

何事も初めては緊張しますが、育児のはじめの一歩として赤ちゃんを抱っこしてみてください。赤ちゃんの可愛さできっと日々のストレスがどうでもよくなることでしょう。また、小さなお子さんと暮らしている皆さま、どうかお友達にたくさん我が子を抱っこしてもらってください。普段泣いたり、いたずらしたり、大変なこともありますが、子どもの可愛さに改めて気づく機会になると思います。

岡本絹子、2003、「親子クラブに属する母親の育児状況と育児不安」川崎医療福祉学会誌
vol.13No.2 325-332
蟹江教子、2005、「父親の家事・育児と父親および母親の主観的健康」『季刊家計経済研究』、68:62-71

 

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