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Vol.25073 およそ世界経済の中で、今の医療の立ち位置がどんなものか、そして今後の医療の行く末に筆者は興味がある

医療ガバナンス学会 (2025年4月22日 09:00)


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サッカー通りみなみデンタルオフィス
院長 橋村威慶

2025年4月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

筆者は今の日本医療経済がどのような立ち位置にあるのか、そして今後の医療のあり方に興味がある。そして何か自身ができることがあるかと模索している。

日本の資本主義経済は公的セクター(第1セクター)、市場経済セクター(第2セクター)、非営利・共同セクター(第3セクター)として構成される。それぞれのセクターの特徴として、第1セクターは政府による公営起業が対象となり、第2セクターは自由主義経済下にある営利企業が対象となる。
第3セクターは1、2セクターの相対的、補完的立場として存在する。第3セクターは、NPO、生協、労協、広域なものから、まちおこし、むらおこし、沖縄のゆいまーるなどの地域コミュニティ等が含まれ、医療分野では民医連などがある。古くは二宮尊徳の報徳経済もそうである。ドラッカーは世界で最も古いNPOは日本の奈良時代の寺院であると言っている。

日本の医療は政府主導の体制が組まれており、よくも悪くも国(第1セクター)の政策に左右されている。政府は非営利という点で第3セクターの要素を持つが、第2セクターである医療の市場原理を無視することはできない。現在の医療は市場原理が働き、格差と競争を生んでいる。その影響を受け、患者は選択の自由という名の下、実際は真に最良の治療を受けられるのは自由診療(保険外治療)を受けられる富裕層のみという流れが生じつつある。

アメリカは公的医療制度が充実している日本とは対極的な医療制度を持つ。第2セクターの要素そのものと言って過言ではない。かつてアメリカは慈善団体による非営利組織が多くあり、国民を平等に救うという伝統的第3セクターがあった。しかし現在は医療機関は営利企業化し、病院はチェーン店株式会社化し証券取引所に上場され、まさに医は算術となっている。それでも多くの国民が受診可能なら良いのだが、公的保険にかかれない人が4500万人以上おり、大企業が民間保険に加入し相対的に裕福な労働者にとっても医療費の自己負担は大きな負担となっているのが現状だ。

筆者はこのままでは日本の医療はアメリカに追随してしまう恐れがあると危惧している。そのため日本における第3セクターの役割は今後重要な役割を示していくべきだと感じている。

日本における第3セクターは補完的な立場であり第1、2セクターに左右されやすいが、国際的にはその役割が重要だと以前から提唱されている。1980年にはアレキサンダー・レイドローが第1、2セクターの政府、公的企業及び私的資本主義企業の2大権力に対し、その拮抗力となるように第3セクターを国民の側に権力を移行する提唱がICAモスクワ大会で採決されている。

また筆者は日本における医師及び医師団を頂点としたパターナリズムが、医療に従事する者や患者に対して悪影響を与えていると考えている。急性疾患や事故などに対しては専門家集団の集まりがトップダウン構造で対処するのは必須であるが、その面が全ての人間関係を支配するような組織の風潮を看過してはいけない。

日本では第1セクターの隙間を埋めるような形態の第3セクターだが、世界では8億人以上が携わっており、決してマイノリティーではない。特にヨーロッパでは日本よりも第3セクターの概念が歴史的、文化的に根付いている。

例えばスペインバスク地方のモンドラゴンのワーカーズコーポ(共同組合)は世界でも先駆的な地域として知られている。モンドラゴンワーカーズコーポは8万人の従業員と80部門ほどの医療を含む大規模なグループであり、日本の第3セクターとの違い、労働者組合としての利益追及を社会的な平等性を保ちながら運営しているところにある。

また従業員一人一人がワーカーズコーポに出資し所有する企業形態であり、経営者である一方、労働者という側面を持っている。

このモンドラゴンワーカーズコーポはロールモデルしての理念は各ヨーロッパ地方に広まり、その影響によりイタリアでは1992年に社会的共同組合法ができた。ヨーロッパ地方では今後このモデルが経済、働き方の多様性を変える形態だと注目されている。

日本も2020年に12月に労働者共同組合法が制定され、第3セクターとしての役割が変わろうとしている。

2010年に設立した医療法人社団「きょうどう」は第3セクターを目的として設立され、筆者の医院とも連携をしている。この法人は労働者共同組合法が制定をきっかけに2023年7月に日本初の労働者共同組合に組織改変した。従業員は一人50万円を出資し、従業員とあると同時に経営者としての形態をとっている。

また、医師を頂点としたパターナリズムについても、設立者は筆者と同様の考えを持ち、理事長は必ずしも医師ではないという選任方法を採択した。

筆者はブラック企業、働き方改革、賃金格差など日本の抱え込んでいる問題のある1つの解決策として有効だと思っている。筆者はこの連携を深めながら、さらに発展させて行きたいと考えている。

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