医療ガバナンス学会 (2025年5月9日 08:00)
この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。
福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治
2025年5月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
高レベル放射性廃棄物は、使用済みの核燃料を処理する際に生じるものです。使用済み核燃料から、再利用可能なウランやプルトニウムを取り除き、残った放射能レベルの高い廃液を、高温のガラスと混ぜて固化します。これらはガラス固化体と呼ばれ、一つずつは、直径40センチ、高さ1・3メートルほどの円柱でした。
ガラスに混ぜている理由は、長期間の保存に耐えられるようにするためです。日本では現在、国内に既に約2500本のガラス固化体が存在しています。
ただ、このガラスの円柱ですが、作られるとすぐに地中に埋められるという状況にはありません。
もちろん日本において最終的にこのガラスの円柱を処分する場所が決まっていないこともありますが、ガラス固化体の製造直後は発熱を伴い、数百度にもなります。このため、30~50年程度、冷却のために貯蔵し、温度が下がってから処分を行う計画となっています。
この冷却は、青森県六ケ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで行われてきました。地中に数メートル掘られた細長い円柱の穴に、電池を直列に並べるような形でガラス固化体の円柱を並べ、空気の力で冷やしながら保管しています。既に30年ほど冷却貯蔵されています。
●最終処分地、世界的な問題 2024年8月10日配信
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024081010350325651 )
高レベル放射性廃棄物は、数万年以上の長期保存が必要なため、300メートル以上の地下深い場所で「地層処分」することが、現実的な処分法であると考えられています。わが国では、最終的に地層処分する場所は決まっていません。
この場所をどうするかという問題は、全世界で共通です。そんな中、スウェーデンは全世界的に見てこの問題について進んでいる国で、最終処分地に相当する場所が既に決定しています。
スウェーデンは人口約1千万人の国で、電力の約半分弱を水力に、4分の1強を原子力に頼っています。脱原子力政策と福島原発事故後の規制強化を受けて、国内の12基のうち、半分の原子炉が営業を停止していました。しかし、ウクライナ侵攻後のエネルギー需要の増大に伴って、原子炉を新しく建設することを禁止する法律条項が削除されたところです。
スウェーデンの高レベル放射性廃棄物の処分場の建設予定地は、フォルスマルクというストックホルムから北に120キロ行ったところにあります。この処分に関する研究開発、建設、操業を担当するのはSKBという会社ですが、SKB社はこの処分地の稼働を2030年代後半と見込んでいます。