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Vol.108 現状の長期避難は第二の災害を生む

医療ガバナンス学会 (2011年4月7日 06:00)


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弘前大学大学院医学研究科社会医学講座
中路(なかじ)重之
2011年4月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


東日本大震災の惨状を目にするにつけ同情の念を禁じえないとともに、本震災がこれまでの世界中の同様災害と一線を画していることに気づかされます。理由は勿論、その規模の大きさです。
恥ずかしながら私は一度も現地に歩を入れたわけではありません、あくまでマスコミから受け取る現地情報を見ているに過ぎませんが、以下のような考えを持っています。

4月4日現在なお約16万人の避難所暮らし避難者がいます。地震発生から3週間以上が経過しているのです。水道もない、電気も乏しい避難所が数多くありま す。プライベートのない狭い空間にたくさんの避難者の皆さんが、すでに十分長期間置かれているわけです。老人などの健康弱者にとってはもとより、たとえ頑 強な若者にとっても長い避難所生活による健康負担は推して知るべしです。このままでは「第二の災害」を生みかねません。

まず、だれしもが思い浮かぶのはノロウィルスなどの感染症の蔓延でしょう。しかし避難生活が長期に及ぶとありとあらゆる健康上の災禍が引き起こされます。メンタルや体調の不良はもとより、慢性疾患(生活習慣病など)への対処などです。
子供の教育や通院の問題など日常的な問題も当然あります。すべてが連関して大きな問題が生じてきます。避難所暮らしで対処できるはずがありません。
「震災直後」を過ぎて、「長期化」の段階に入った今、通常の救急災害の枠を超えた大きな視点が必要だと考えます(最初から分かっていることですが)。救急 災害のための医療援助も必要ですが、結局は「根本」にあるのは公衆衛生・インフラ整備です。壊滅的ダメージを受けた町々のインフラ整備にかなりの時間を有 するのは自明ですから、それなりの戦略が必要になります。通常の災害よりもうワンステップが必要だと言うことです。

そのワンステップは安全安心な場所への「集団移住」(勿論集団でなくともいいのですが)だと思います。しかし、被災者の皆さんに故郷に対する種々の強い愛 着があり、それが集団移住に対する根強い抵抗となっています。誰にでも理解できる心情です。しかし、ここで被災者の皆さんの意見だけで全体を判断していて いいのでしょうか。それは結局、被災者ご自身そして日本国全体にも大きな禍根を残すことになります。粘り強く説得して集団移転を図るべきだと考えます。勿 論受け入れる側の本気度も問われます。

「愛着」を乗り越え「国難」を克服するためには、菅首相自らが被災者・国民に向けて以下のことを高らかに宣言(表明)すべきと考えます。
(1) 必ず、必ず今の壊滅地域を復興させる。
(2) しかし、残念ながらそれには時間がかかる。
(3) ある程度受け入れの準備が整う(ここを優先させるべき)まで集団で安全安心な場所に住居を移してほしい。とくに健康に自信がない方には強くお願いしたい。
(4) しかし、できるだけ早く、必ず皆さんを故郷にお返しする。
(5) これは国難である、何とか協力して欲しい。

時間の猶予はそれほどないと考えます。何度も諄々と繰り返し説得すれば、人の心は動くはずです。「分かった! 頑張ってみる!」 国民の心のど真ん中にメッセージを届ける。それが政治の力ではないでしょうか。

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