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Vol.25143 坪倉先生の放射線教室(26) 500回記念

医療ガバナンス学会 (2025年8月1日 08:00)


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この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2025年8月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●変わる話題、選んで伝える 2024年10月5日配信
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024100510231927134 )

この連載も500回目、そろそろ丸10年になります。いつも支えてくださる多くの皆さまと、毎週締め切りギリギリまで対応してくださる編集局の皆さまに心から感謝申し上げます。ありがとうございます。

10年前と比べて、県民の皆さまが必要とする放射線に関する情報や、興味・関心は変化してきましたが、県外で話題となる放射線に関する情報も大きく変わりました。

もちろん今現在に必要ない情報ではありませんが、連載の始まった当初は、原発事故後の放射線被ばくに伴う健康影響の問題や、放射線とはそもそも何なのかという基礎的なことが話題の中心でした。どんな食材が汚染されやすいか、国道6号を通ったらどれくらい放射線を浴びるのかなどを説明していました。

それから10年経ち、特に県外で話題となる情報は大きく変化しています。昨年は処理水が話題となりましたが、再稼働の動きも相まって、どちらかというと話題はエネルギー問題や、(高レベル)放射性廃棄物、原子力に関する防災対策にシフトしてきています。国外に目を向ければ、イスラエルやウクライナでの紛争に伴い、核兵器や戦争といった話題が多くなっています。

今の小学生全員は震災後生まれとなった中で、どのような情報をこれからもお伝えしていくべきか、どのような情報を知ることが、被災された多くの県民の皆さまが前に進むための少しでも後押しとなることができるのか、無用な偏見や差別を少しでも払拭する助けとなり得るかをこれからも一緒に考えたいと思っています。

毎週お付き合いいただいている皆さまに感謝申し上げます。どうぞ引き続きよろしくお願い申し上げます。
●原発で重要な二つの容器 2024年10月12日配信
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024101211160327372 )

原子力発電所は、ウランなどの放射性物質を燃料に使い、その核分裂によって発生する熱で電気を作る設備です。核分裂が起こると大量の熱が生まれます。その熱で水を沸騰させて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回すことで電気を生み出します。

この仕組みの中で、重要な役割を担うのが「圧力容器」と「格納容器」です。圧力容器は原子炉の中心にあり、核分裂反応が行われる場所です。燃料がこの中に入っており、核分裂によって高温高圧の蒸気が発生します。この圧力容器は通常、15~30センチの厚さの鋼鉄でできており、内部の高温高圧の蒸気を封じ込める構造です。大きさは原子炉の種類によって異なりますが、高さ約20メートル、直径約5メートルで、カプセルを縦にしたような形をしています。

圧力容器とその周りの設備全体を覆っているのが格納容器です。格納容器は、数センチの厚さの鋼鉄や鉄筋コンクリートで造られています。サイズは高さ約30メートル、直径約18メートルで、ドーナツの上に円筒を乗せたような形状をしています。

福島第1原発の1~5号機は、原子力発電を初めて導入した頃に建設され、米国の技術を使った鋼鉄製の格納容器が使われていました。その後、日本独自の技術改良が加えられ、鋼鉄とコンクリートを組み合わせた強力な格納容器が採用されるようになりました。なお、世界には格納容器がない原子炉も存在しますが、日本の原子炉は全て格納容器が設置されています。

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