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臨時 vol 38 高久通信「 階段を歩き、生き甲斐を見つけて健康な長寿を 」

医療ガバナンス学会 (2009年3月2日 09:38)


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高久史麿


最近はどこに行ってもエレベーター、エスカレーターがあり、私もつい利用し
てしまう。しかしこれらを使う代わりに、階段を昇降する方が健康に良いことは、
だいぶ以前からよく知られている事実である。

このことをさらに明らかに示す結果が、スイスのジュネーブ大学病院の研究者
によって報告されている。この研究は、1週間に2時間以内の運動しか行わず、
また1日5階分の階段しか昇降していない病院勤務者69人を対象にしたもので
ある。その69人に、毎日23階分の階段の昇降を3カ月励行してもらった。そ
の結果、この69人でウエストサイズ、体脂肪、血圧、血中コレステロール値の
明らかな低下がみられたとのことである。上述の指標はいずれも現在話題のメタ
ボリックシンドロームの重要な指標である。また上述の23階分の階段の昇降に
よりもたらされた運動能力の向上によって、この人たちが早死にする確率が15
%くらい減ったであろうと研究者たちは推定している。地下鉄等の公共交通機関
が発達している大都会で生活している人は、乗り物を利用する際、階段を利用す
る機会が多い。しかし自家用車や社用車で通勤している人は、自宅の自分の部屋
からオフィスまで数百歩しか歩かない場合が少なくない。私が存じ上げているあ
る高齢でお元気な医師の方は、社用車で病院に着かれた後、高層階にある自分の
オフィスまで毎朝必ず歩かれるとのことである。

次に「生き甲斐」と寿命との関係について述べてみたい。この研究は東北大学
の医学系大学院の研究者たちが最近報告している。40~79歳の男女43,3
91人を対象にした「あなたは日々の生活に生き甲斐を見出していますか」とい
う質問に対し、59%の人が「生き甲斐があり」、36.4%の人が「よく分か
らない」、そして4.6%の人が「生き甲斐がない」と答えている。この人たち
のその後を7年間にわたって追跡したところ、その中の3,048人が死亡して
いる。生き甲斐を感じないと答えた群には健康状態がすぐれなかったり、体のど
こかに痛みがあったり、精神的なストレスがあったりした人たちが多かったが、
このような要因を除外しても、生き甲斐を感じないと答えた人は、感じていると
答えた人に比べて、死亡した割合が50%高かったとのことである。両群の死亡
率の差を原因別で見ると、心血管系の疾患で死亡する割合が60%も高く、その
大半は脳卒中によるものであった。また外傷による死亡が90%も高かったとの
ことである。外傷による死亡者は総数186人であったが、その半分に相当する
90人が自殺によるものであった。この論文は、英語で発表されている?が、タ
イトルにわざわざ”(Ikigai)”という日本語が入っている。この”Ikigai”と
いう言葉は”Tsunami”や”Karaoke”と同じように、日本製英語になるかもしれ
ない。

参考文献
Sone, T et al.Sense of Life Worth Living (Ikigai) and Mortality in
Japan. Psychosomatic medicine, 2008

●プロフィール・たかく ふみまろ
1954年東京大学医学部卒。72年自治医科大学教授、82年東京大学医学
部教授、88年同医学部長、95年東京大学名誉教授、96年自治医科大学学長、
04年日本医学会会長。医療の質・安全学会理事長。

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