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Vol.25161 坪倉先生の放射線教室(26) メルトダウンとベント

医療ガバナンス学会 (2025年8月26日 08:00)


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この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2025年8月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●燃料溶け圧力容器に落下 2024年10月19日配信
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024101912160127814 )

原子力発電所は、ウランなどの放射性物質を燃料に使い、その核分裂により発生する熱で電気を作る設備です。前回はこの設備の中で重要な「圧力容器」と「格納容器」について説明しました。圧力容器は原子炉の中心にあり、核分裂反応が行われる場所です。そして、格納容器は燃料が入っている圧力容器とその周りの設備全体を覆っているものでした。

メルトダウンという言葉を聞いたことがある方は多いと思います。メルトダウンとは、圧力容器の中にある核燃料を冷やすことができず、核燃料自身や、その周りが溶けて(メルト=英語で「溶ける」の意)お互いに混ざり、溶けた物質が圧力容器の下部に落下(ダウン)することを指します。メルトダウンは、何かの爆発を指す言葉ではありません。

そして、状況によっては、この核燃料が溶けたものが、圧力容器の底を溶かして穴を開けて突き破り、外側の格納容器の中まで落下します。これをメルトスルー(スルー=英語で「通り抜ける」の意)と言います。このメルトスルーも、もちろん緊急事態ですが、何かの爆発を指すわけではありません。

ちなみに、チャイナシンドロームという言葉を耳にされたことがある方もおられるかもしれませんが、これは、このメルトダウンやメルトスルーを誇張して表現した言葉です。熱い核燃料が周りを溶かして下に落ちていく中で、地面を溶かして落ち続ければ、地殻を突き抜け、地球の反対側まで到達するのではないかという「想像」です。アメリカで事故が起こった場合、地球の反対側に中国があるため、このような言葉が作られています。
●気体一部排出、圧力下げる 2024年10月26日配信
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024102613341628200 )

原子力発電所は、ウランなどの放射性物質を燃料に使い、その核分裂により発生する熱で電気を作る設備です。その中で「圧力容器」は、原子炉の中心にあり、核分裂反応が行われる場所です。そして「格納容器」は、燃料が入っている圧力容器とその周りの設備全体を覆っているものでした。

前回は、メルトダウンについて説明しました。メルトダウンとは、圧力容器の中にある核燃料を冷やすことができず、核燃料自身や、その周りが溶けてお互いに混ざり、溶けた物質が圧力容器の下部に落下することを指しました。メルトダウンは、何かの爆発を指す言葉ではありませんでした。

今日は「ベント」について説明します。

「ベント」とは排出口とか、穴、通気孔という意味で、緊急時に「圧力容器」や「格納容器」の中の圧力が高くなり、その結果として原子炉を冷やすための水を注入できなくなったり、破損したりするのを避けるため、放射性物質を含む気体の一部を外に排出させて圧力を下げる行為です。今回の原発事故で行われたのはご存じの通りです。

今回の事故を教訓に、原子力発電所の安全対策の強化が義務付けられました。緊急時にベントを行わねばならないとしても、大気に放出する前に薬液やフィルターに通し、外に放出される放射性物質を大幅に低減するようなシステムが導入されています。

 

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