医療ガバナンス学会 (2011年4月18日 14:00)
先週末、石巻赤十字病院のDVTエコー検診チームと宮城県作業療法士会、宮城県理学療法士協会合同で避難所と周辺住民(1 階は水没したが2階は辛うじて生活できる住宅に居住する被災者)約900名を対象に要介護度の調査を行ったところ、3%近い被災者が介護を要することがわ かりました。石巻市内の他の地域での小規模な調査でも同様の数値が出ています。この中には、震災前後で自立から要介護に変わった方もいます。原因は身体を 動かす意欲がない、床から起き上がるのが困難なため動かせなくなった、怪我や体調不良を契機に筋力低下を来たした、ことなどのようです。
現在石巻市の避難所は142ヶ所、そこに約17,000名の避難者がいます。そのうちの3%が要介護者であるとすると、その人数は約500名です。これだ けの人数の介護をするとなると、介護ニーズがある避難者の集約や、施設の確保、介護スタッフの確保など、多くの課題に介入していかねばならないと合同救護 チームでは考えています。
高齢者に対する健康被害を防ぐ手段として被災地外への一時移住などが提案され、南三陸町ではすでに県内の栗原市に一部移住が始まっています。石巻市では避 難所住民に対し今月初めに意識調査(回答世帯数4,186、避難者数にして12,338人)を行いましたが、68%が移転に対し「興味がない」と回答しま した。これ以降、域外移転に対して石巻市が積極的に動いているという話は聞きません。移転することで生活の立ち上げになんら不都合は生じないと説明するこ とや、移転先と石巻市間の定期的な移動手段を確保することなどで、被災者が安心できるよう工夫すればいいのにという思いはありますが、市役所からこれに関 する方針は示されていません。
現時点で寝たきり高齢者の繰り返す誤嚥性肺炎が多数病院に運ばれています。今後も避難所生活が長期化し、要介護者への適切な介入がなければ循環器疾患、呼吸器疾患、脳血管障害、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症などの発症が増加することが予想されます。