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Vol.132 福島原発からの報告

医療ガバナンス学会 (2011年4月18日 22:00)


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愛媛大学大学院医学系研究科公衆衛生・健康医学分野
谷川 武
2011年4月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

4月16日午後から19日午前の予定で非常勤産業医として福島第二原子力発電所(以下F2)に寝泊まりして健康管理を支援しています。これまでの状況を要約します。

福島第一原子力発電所(以下F1)のみならず、F2ももう少しでF1と同様の事態になるところでした。F2も震災当初から不眠不休で皆がんばっています。
確かに東京電力は今回の原発事故の当事者であり、広範囲の放射能汚染の加害者ですが、F1,F2で働く所員の多くも自宅、家族を失ったり、自宅が避難指示 区域にあったりする被災者です。10日以上、震災から一度も戻れず、家族の安否も電話がつながらずに確認できないまま、電気が供給されない原発で命を張っ て事態収拾に努めた方々です。その中には九死に一生を得た方々もいます。しかし、避難所では露骨な批判を浴び、風呂も入れない状態で通常勤務以上のストレ スの高い激務をこなしています。これまでは、急性期でしたがこれからは慢性のストレス状態が続きます。

17日に長期ビジョンが東電本社から示されましたが、フェーズが変わったことから震災当初から激務をこなした所員に長期休暇をとらすことや、復旧を進めるF1の所長以外に長期ビジョン担当の所長(前所長が適任か)を現地に常駐させることが適切と思います。

また、F2の状況も次もし津波が襲えばF1と同様の状態になることは避けられず、所員が一丸となって対策を進めています。そのため、F2からF1に応援を 出す余裕はありません。F1はすでにレベル7です。一企業が事態収拾する事態ではありません。東電本店をはじめ、ALL JAPANでF1を応援することが求められます。

産業保健に関してもこの一ヶ月の対応は現場では必死でやっていますが、これからは計画的な健康管理体制が求められます。現地の医療スタッフは産業医科大学 から2人の医師の常駐を希望しています。本日産業医科大学の森学長補佐に連絡したところ、東電本社の要請があれば検討すると回答を得ましたのでF2増田所 長から本店に現地からの声を届けてもらうことを依頼しました。今後、従来からの東電の産業保健体制ではなく外部からきちんとF1,F2の所員の健康管理 (通常の労働安全衛生法に基づくもの以外にストレス対策、放射線被曝対策も含めたもの)を実施することが求められます。これは、原発周辺地域住民も含めた 国の枠組みが必要です。

谷口プロジェクト(原発作業員の自己末梢血幹細胞採取)について両所長とも感謝しており、本日午後F2の副所長が担当として詳細な説明を求めて来室します。虎の門病院谷口医師の現地での説明も実施する予定です。

F2の体育館がF1所員の宿泊所になっています。夜間巡視すると重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者による強烈ないびきにより、睡眠を妨げられている 状況でした。昨日、フィリップス社に支援を要請し、CPAPの提供を受け、これまでCPAPを使用していた2名に装着し、さらにSASが強く疑われる大き ないびきを発している方々に置き手紙を置きました。今晩からそれらの方にCPAPを装着する予定です。

Dr. Tanigawa’s letter from Fukushima Nuclear Plant

An excerpt of Dr. Tanigawa’s letter from Fukushima
April 18th, 2011
Takeshi Tanigawa, MD
Ehime University, Graduate School of Medicine, Department of Public Health, Health Medicine

http://medg.jp/mt/2011/04/vol132.html#more

I am visiting Fukushima on April 16 through April 19 to work as a TEPCO health care doctor.
I have been checking the medical condition of the workers of Fukushima Daiichi (F1) and
Fukushima Daini (F2) nuclear power plants.

It is obvious that the TEPCO is responsible to this accident and the one who caused the
radiation contamination. However, the workers who are working at F1 and F2 are also victims
who lost their family members and their houses. Some are refugees who evacuated their
communities located in the evacuation zones. They have been working very hard without
the appropriate amount of sleep and without good personal hygiene. Their stress level is
enormous.

In addition to the mandates of the “Industrial Safety and Health Law” I believe it is necessary
to establish a special health management team to be able to treat worker stress and worker
radiation exposure. The central government should also create a framework which includes
people living near the Fukushima power plant.

The chiefs of F1 and F2 are very thankful for the Taniguchi Project. I will meet with the
vice-chief of F2 tomorrow (April, 19th) to get more detailed information. Dr. Taniguchi of
Toranomon will explain his plan for Fukushima soon.

 

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