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Vol.25168 坪倉先生の放射線教室(27) 新規制基準

医療ガバナンス学会 (2025年9月5日 08:00)


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この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2025年9月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●薬液、フィルター通し放出
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024110213404128586 )2024年11月02日配信

原子力発電所は、ウランなどの放射性物質を燃料に使用し、その核分裂で発生する熱を使って電気を作る施設です。

前回は「ベント」について説明しました。ベントとは、緊急時に「圧力容器」や「格納容器」の内部の圧力が高くなり、さらなる事態の悪化を防ぐために、放射性物質を含む気体の一部を外に排出して圧力を下げる処置です。

今回の事故を教訓に、緊急時にこの「ベント」を行う場合でも、大気に放出する前に薬液やフィルターを通し、外部に放出される放射性物質を大幅に低減するシステムが導入されています。

こうしたシステムは、原子力発電所の安全を確保するための対策の一つです。

原発事故後の2013年、日本では新しい「新規制基準」が導入され、国内の全ての原子力発電所は、この新基準に基づいた安全対策の強化が義務付けられました。

\新規制基準では、主に以下の3点で対策が強化されています。〈1〉自然災害に対する備えの強化〈2〉非常時に原子炉の冷却を維持できるように事故対応力の強化、そして〈3〉事故時に環境への影響を最小限に抑えるための放射性物質の管理の強化です。

緊急時にベントを行う際、放射性物質の放出を抑えるためにフィルターを通すシステムは、この新規制基準の〈3〉の対策の一部です。

 

●原発、厳しい耐震基準設定
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024110910104628929 )2024年11月09日配信

2013年、原発事故を教訓に、日本では新しい「新規制基準」が導入され、国内の全ての原子力発電所がこの基準に基づき安全対策を強化することが義務づけられました。

新規制基準で特に強化されたのは〈1〉自然災害への備え〈2〉非常時に原子炉を冷却するための事故対応力の強化〈3〉事故時に環境への影響を最小限にするための放射性物質の管理ーの3点です。

〈1〉の自然災害への備えとして重要な対策の一つが、耐震設計の強化です。耐震設計では、想定する最大の地震の揺れ(これを「基準地震動」と言います)が定められ、この数値をもとに建物の耐震性が評価されます。

一般的な建物の耐震基準は建物の用途や高さによって異なり、400~600ガル(ガルは地震の揺れの強さを表す単位)程度とされています。この数値は、震度6強から7程度の揺れに耐えるための目安です。病院や学校などの公共施設、大規模な高層ビル、重要なインフラ施設は、さらに高い耐震性が求められ、600~800ガル程度に耐えられる設計です。

原子力発電所はこれらよりもさらに厳しい耐震基準が求められ、700~1千ガルの耐震設計が必要とされています。

新規制基準の導入により、原子力発電所の基準地震動は引き上げられました。たとえば、関西電力の高浜発電所では従来の基準地震動が550ガルから700ガルに引き上げられました。同様に、大飯発電所は700ガルから856ガル、美浜発電所は750ガルから993ガルに引き上げられています。

 

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