最新記事一覧

Vol.25175 坪倉先生の放射線教室(27) 新規制基準

医療ガバナンス学会 (2025年9月18日 08:00)


■ 関連タグ

この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2025年9月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●地震や津波以外にも備え ( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024111611484129296 )
2024年11月16日配信

今回の原発事故を教訓に、2013年から「新規制基準」が導入され、国内の全ての原子力発電所の安全対策強化が義務付けられました。特に〈1〉自然災害への備え〈2〉非常時に原子炉を冷却するための事故対応力の強化〈3〉事故時に環境への影響を最小限にするための放射性物質の管理ーの3点が強化されています。

前回は耐震設計について説明しました。

自然災害への備えは、地震や津波への対策だけでなく、火山の噴火・竜巻・森林火災への対策も要求するようになりました。

火山の噴火については、原子力発電所の半径160キロ圏内の火山を調査し、火砕流や火山灰が到達する可能性と到達した場合の影響を評価して対策を講じます。竜巻については、国内で観測された最大級の竜巻(最大風速100メートル/秒)に対しても暴風でいろいろなものが飛び散り、安全上重要な機器や配管が機能を失うことのないように対策。森林火災については、発電所周辺での火災が発電所構内に燃え広がらないように、樹木を伐採し、防火帯を整備するなどしています。

もちろんこのように対策の強化はされていますが、例えば阿蘇のカルデラや、十和田湖、屈斜路湖などがつくられたような、大規模で壊滅的な火山の噴火は、可能性は低いと考えられるものの、予知が難しいという指摘や、火山灰が大量に降った場合の対策の困難さなども指摘されています。

ゼロリスクは実現せず、読者の皆さまの感じ方もそれぞれだとは思いますが、このように自然災害への備えの強化はなされるようになりました。
●基準津波設定し対策強化 ( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024112311422929709 )
2024年11月23日配信

今回の原発事故を教訓に、2013年から「新規制基準」が導入され、国内の全ての原子力発電所の安全対策強化が義務付けられました。自然災害への備えとして、前回まで地震・火山の噴火・竜巻・森林火災への対策についてお話ししました。

今日は津波についてです。

新規制基準では、発電所ごとに最も大きな津波を「基準津波」として設定し、その津波が敷地内に入らないように防潮堤を設置するなど、施設への浸水を防ぐ対策を強化するよう求めています。

そもそも、津波は、主に地震で海の底が持ち上がったり沈んだりするときに発生する大きな波です。この波は海面に広がり、津波となります。津波を引き起こす地震には、プレート同士がぶつかる場所で起きる地震や、プレートの中で起きる地震、海底にある活断層で起きる地震などがあります。これらの地震による津波の大きさを調べるのです。

さらに、津波は地震だけでなく、陸や海底で大きな土砂崩れが起きたり、火山が噴火したりすることでも発生します。地震以外の原因による津波についても、予測に含めて検討しています。地震と土砂崩れや斜面の崩壊など、いくつかの原因が同時に起きる場合の津波も考慮し、「基準津波」を決めています。

今年の10月に、国の委員会で「おおむね妥当」と評価された静岡県の浜岡原発の基準津波は25.2メートルでした。これは、地質調査で明らかになった過去の津波の高さ(約5~10メートル)や、内閣府が南海トラフ地震で想定した最大クラスの津波の高さ(21.1メートル)を超える値として設定されています。

 

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ