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Vol.136 連載 生命を奪う規制 第3回 政府が選んだ宿泊施設

医療ガバナンス学会 (2011年4月20日 06:00)


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立教大学大学院 法務研究科 法務専攻
五反田美彩(ごたんだ みあ)
日本大学法学部法律学科卒
小倉 彩(おぐら あや)
2011年4月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


●初めに
前回の配信では、既存の規制緩和について取り上げましたが、今回は、震災発生後の制度運用のためになされた通知の中で、規制を課したもの及びその規制に対応するために新たになされた対策について取り上げます。
大震災後の制度運用は、危機状態に陥った国民に対する指針であり、十分な実効性が求められます。その規制が本当に国民を救うために運用されているのか、国民の不利益になっていないかは検討する必要性があります。

●千葉県職員と困惑する医師
『宿泊施設における県域を越えた被災者の受入体制について』これは観光庁が3月25日に出した通知です。
この通知が原因で、医師と県職員との間で軋轢が生じました。県は、災害救助法を適用した受け入れは、旅館ホテル以外では不可能であるとの解釈したため、ペンションや民宿で宿泊に災害救助法を適用することを拒否したのです。
小松秀樹氏(亀田総合病院副院長)は、『旅館組合に入っていれば災害救助法が適用されるが、それ以外はダメ、つまりペンションや、民宿はダメだと言われ、 さらに災害救助法自体のお金の出処が、被災県でそこからな何の話もないので、千葉県は手を挙げない、と言われました。』と憤ります。
房総半島には、ペンションや民宿等が多数存在します。民宿を用いて外来患者を受け入れた病院は、被災者である患者さんに宿泊費を請求するか、宿泊費分を病院が出すしかないのでしょうか。

●通知の概要
原文では、「観光庁において、災害救助法の枠組みを活用し、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(以下「全旅連」という。)から提供を受けた受入可能な 旅館・ホテル等のリストを基に、県外へ避難を希望する被災者の意向を踏まえ、被災者と避難先施設のマッチングを行うとともに、旅行業者と連携して移動手段 となるバス等の手配を実施することにより、県境を越えた被災者の旅館・ホテル等への受入れを支援します。」とされています。
問題は、「全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(以下「全旅連」という。)から提供を受けた受入可能な旅館・ホテル等のリストを基に、」と定めていることです。

被災者のことをまず優先して考えるのであれば、宿泊施設を限定せず、どの施設であっても公費助成を受けられるようにすべきです。そして、金額はいくらま で、日数はいつまで、どのように請求するのかということを、具体的に、かつ速やかに決定することが重要です。今回の大震災は非常に広範であり、時間がかか れば、被害者が増えます。
本通知は、早い段階で災害救助法の運用について示した通知であり、以後の指針になる通知でありましたから、どのような宿泊施設でも助成の対象とするべきだったと考えます。
また、災害救助法の対象となる宿泊施設を政府が指定するというのは、自民党時代の業界団体談合の名残です。時代に逆行しているともいえます。
現在では、災害救助法の適用を受けた県に対して請求すれば、国費からの助成を受けられる旨、厚生労働省から通知が出ています。最初から、この通知が出てい れば良かったのに、両省庁の間で調整が上手くいかなかったのか、早い段階での通知が政府による宿泊先指定であったことがとても残念でなりません。

参照 観光庁HP『宿泊施設における県域を越えた被災者の受入体制について』
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000092.html”
厚生労働省HP『平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に係る災害救助法の弾力運用について(その4)』

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016tyb-img/2r98520000016wbo.pdf

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