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Vol.Vol.25184 現場からの医療改革推進協議会第二十回シンポジウム 抄録から(4)

医療ガバナンス学会 (2025年10月6日 08:00)


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2025年10月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第二十回シンポジウム

11月1日(土)

【Session 04】 流浪する世界 15:30 – 16:30 (司会:谷本哲也)

●姜 慶五  復旦大学特聘教授、中国健康促進・教育協会監事長(ビデオメッセージのみ)

第20回シンポジウム祝辞

現場からの医療改革推進協議会・第20回シンポジウムの開催に際し、上海復旦大学医学部を代表いたしまして、上先生をはじめ関係者の皆様に心よりお祝いを申し上げますとともに、深く敬意を表します。
この20年間、上先生のリーダーシップのもと、チーム一丸となって医療法人を設立され、日常的な疾患や多発疾患の診療を主軸とする医療機関として、地域住民の皆様に質の高い医療サービスを提供してこられました。東日本大震災と福島原発事故後の対応においても、多大なご尽力をされ、今日まで災害医療に関する学術研究を牽引してこられました。
また、数多くの若手研究者の育成にもお力を注ぎ、中国との学術交流を重視し、日本のみならず世界の医療学術発展に卓越したご貢献を果たしてこられました。

貴チームの崇高な医療理念が多くの優秀な研究者を惹きつけ、高水準の学術交流プラットフォームを構築されました。その影響は日本国内にとどまらず、中国においても日本の医療従事者の英知を広く示していただきました。
医学に国境はなく、知識と技術は共有されるべきものです。貴組織は長年にわたって国際協力を積極的に推進され、世界各国の研究機関や学者との緊密な連携を築き上げ、グローバルな健康課題の解決に向けて貴重な方策を提示してこられました。震災後の救護活動、放射線汚染対策、新型コロナウイルス対応、そして日本の医学研究における不断の努力は、中国の医学界からも深い敬意を集めております。

上先生のご指導のもと、貴チームが今後とも開放性、包容性、協力の理念を堅持され、新時代の学術探究においてさらなる輝かしい成果を創出されることと確信しております。日中両国の医学協力が人類の医療発展と健康増進に新たな活力をもたらすことを心より期待申し上げます。
貴チームの今後益々のご発展を心よりお祈り申し上げますとともに、この記念すべき行事が大きな成功を収められますよう、謹んでお祝い申し上げます。
●姜 晨彦  上海市疾病予防管理センター 副主任医師(録画発表のみ)

上海地区における2017-2024季節性インフルエンザ流行の特徴分析

2017〜2024年に上海市4区5ヶ所の国家指定インフルエンザ監視拠点病院で収集したインフルエンザ様症例(influenza-like illness, ILI)および病原体学的監視データを分析し、閾値法を用いてインフルエンザ流行の季節的特徴を解析した。累計327,621例のILIが報告され、ILI受診率(ILI%)は1.66%、インフルエンザ平均陽性検出率は24.55%であった。ILI%は全体として「上昇後下降」の傾向を示し、2020年が最高値で2.53%、2024年が最低値の0.88%であった。一方、インフルエンザ陽性検出率は全体として「下降後上昇」の傾向を示し、2020年が最低値で8.56%、2023年が最高値となる37.55%であった。

2017〜2019年のインフルエンザ流行は、冬春期の単峰型または冬春-夏季の二峰型を示した。冬春期は複数の亜型/系統が共同流行する傾向が主で、夏季はA(H3N2)亜型が絶対優位株となった。最初の流行期は冬春期に発生し、当該年の第49週(48-52週)から翌年の第9週(4-10週)まで持続した。夏季の流行ピークは8月(第35週)に現れた。

2020-2022年のインフルエンザ活動は著しく抑制され、冬春の流行ピークは消失した。2021年にはB/Victoria系統のみが検出され、2021年の流行期は第31週に始まり、2022年第4週に終了し、32週間にわたって継続し、検出率の最高値は51.16%であった。2022年は第29~31週に短期間の夏季流行期が発生し、最高値は36.05%であった。この期間中、上海市におけるインフルエンザ活動は明らかな周期性を示さなかった。ILI%は高水準で変動し、全体的な傾向はインフルエンザ陽性検出率と一致しなかった。

以上の結果は、新型コロナウイルス発生前後で上海地域のインフルエンザ流行の季節性パターンが顕著に変化したことを示しており、活動強度の増大、ピークの遅延、優勢株の単一化、年齢分布の変化として現れた。

●山口 スティーブ  株式会社山口コーポレーション 代表取締役
●太田 昌克 共同通信編集委員

「トランプ2.0」と瓦解する国際秩序

過剰な「インナー(側近)政治」と徹底したトップ・ダウン、やせ細る官僚機構と専門家集団、加えてアメリカ外交・安全保障政策のお家芸とも呼べる「インター・エージェンシー(省庁間横断)機能」の不全。トランプ第2期政権は1期目政権とはうって変わり、「異形の大統領」が独裁色を強める一種の強権政治と化している。

そうした中、現在の日米関係を考えると、国際政治学者の原彬久氏が言うところの、戦後80年の「基層」となってきた三つのシステム(天皇制、平和憲法、日米安全保障体制)の一部が大きな揺らぎを見せ始めている。

また日本の政治も自民党が結党70年を迎える中、価値観の多様化とネット環境が多党化現象を促し「決められない政治」が常態化の傾向を見せ始め、今後80年の国家の針路が定まらない状況に陥っている。

国際政治に目を転じると、欧州と中東での凄絶さを極める戦争が長期化し(2025年8月15日現在)、アメリカなど主要国の内政の分極化のみならず、国際社会の分断が深刻化し、国際危機の出口が見つからない状況が続いている。
そうした「危機の分断の共振」が戦後の国連体制と国際政治・経済秩序を瓦解させている今を見つめ、日本がこれから歩むべき「生き筋」とあるべき「政治本来の姿」を考える。
●後瀉 桂太郎 海上自衛隊幹部学校 主任研究開発官/1等海佐

分断と対立、力による平和

2022年2月に生起したウクライナ戦争は、本シンポジウムの時点で3年8カ月を超え、宇露は太平洋戦争を超える長期にわたって戦争を継続している。中東に目を転ずれば、米軍のアフガニスタン撤退以降、シリアのアサド政権が崩壊、ガザにおける殺戮は収束する気配が見えない。そしてアジアでは、2027年の台湾有事リスクが周辺諸国の安全保障政策に大きな影響を及ぼしている。

このような対立と紛争において、人類が築き上げてきた国際法秩序を遵守する国家・非国家は、残念ながら非常に少ない。ロナルド・レーガン米大統領はかつてソ連を抑止し、そして米ソ冷戦に勝利するため、「力による平和」を唱えた。当時と比べ、現在の国際社会の位相はかなり異なる。一方でルールや規範を叫んでもそれだけでは無力であり、戦場では軍事力によって、外交安全保障の舞台では経済金融などを含めた国家のパワーが、勝敗を決する。冷戦期に類似した世界が現出している。

20世紀末以降、世界はボーダーレスで一つの統合されたグローバル経済圏になってゆくように見えたが、トランプ政権の関税政策に象徴されるように、この数年間の国際社会はそれとは逆方向に進んでいる。法秩序や規範ではなく、国家の様々な力による現状の変更が世界の姿かたちを変えていくトレンドは、それを好むと好まざるとに関わらず日本の社会と我々の暮らしを変化させてゆくことになる。

 

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