最新記事一覧

Vol.25194 現場からの医療改革推進協議会第二十回シンポジウム 抄録から(9)

医療ガバナンス学会 (2025年10月17日 08:00)


■ 関連タグ

*このシンポジウムの聴講をご希望の場合は事前申し込みが必要です。
下記、URLからお申込みください。
( https://www.genbasympo.jp/regist )

2025年10月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第二十回シンポジウム

11月2日(日)

【特別セッション】追悼(佐藤章先生、仙谷由人先生、宮澤保夫先生、髙久史麿先生)13:00 – 13:10 (司会:鈴木 寛)
【Session 09】 女性医師のキャリアパス 13:10 – 13:35 (司会:谷本哲也)

●小林 千春  ナビタスクリニック川崎 副院長、小金井つるかめクリニック漢方内科

ナビタスクリニックと共に歩んだ10年-プライマリ・ケアとの出会いとこれから-

ナビタスクリニックで10年以上勤務する中で私がどのように歩んできたか、ライフイベントと共にご紹介し、女性医師の生き方の参考にして頂ければと思う。

私には先天性心疾患で亡くなった姉がいて、心不全を患う母の影響もあり、医学部に入学した。在学中に癌の研究に興味を持ち、白血病幹細胞の研究も視野に入れて東大血液・腫瘍内科へ入局したが、臨床と研究の両立に困難を感じた。慶應大大学院に進学、同時期に大学同級生と結婚した(小林央・東北大)。

幹細胞研究の大御所である須田年生教授(現:中国医学科学院 血液学研究所)の指導を受け、慢性骨髄性白血病の幹細胞に関する論文で学位を取得した。
しかし、患者さんと接する臨床にも触れたいとの思いが強まり、母の通院付き添いや自閉スペクトラム症の長男の療育などで心身疲労していた私は、ナビタスクリニック川崎に勤務する機会に恵まれた。家庭の事情に合わせて勤務を調整して頂き、スタッフの方々にも恵まれ、大変有難い環境である。
プライマリ・ケアに従事する中で漢方と出会い、北里大学東洋医学総合研究所での研修を経て漢方専門医となり、西洋薬だけでは対処できない患者さんの様々な訴えに漢方薬を積極的に活用している。

また女性医療の向上を目的として設立された女性医療ネットワークの講習を受け、女性診療プラクティショナーとして女性の様々なライフステージ上の困難にアプローチしたいと考えている(月経困難症に対する低用量ピルの処方など)。
治療、ケアからウェルビーングへ。鳥取大学医学部地域医療学講座 孫大輔先生の言葉だが、AIの普及によっても人間同士の関わり合いの重要性が変わることはない。少子高齢化社会に向けて患者さんと真摯に向き合い、「病気だけでなく人を診る」を大切に、これからも進んでいきたい。現在ワンオペで3人の子育て中の私が参加している学会活動や勉強会などもご紹介する。
●堀口 晴子  ナビタスクリニック川崎小児科

小児科における女性医師のキャリア支援の変遷

1980年代には医学部入学者のうち女性は約15%であったが、現在では約3分の1程度にまで増加している。2022年の調査では、全医師のうち女性医師の占める割合は22.8%、小児科は女性医師の割合が比較的多く34.3%である。
私が所属していた横浜市立大学小児科における女性医師のキャリア支援の変遷を振り返る。
●元田 玲奈  横浜市中部地域療育センター 所長、ナビタスクリニック川崎小児科

療育モデルにおける「発達障害」

療育センターで勤務するようになって1年半以上経つが、診断への抵抗が強い方々に診断を伝えることの難しさに日々苦悩している。
「療育センターに行くと診断されるから、怖くて行きたくない」という保護者が、保育園や幼稚園や学校から勧められて、嫌々ながらに受診することが多い。子どもたちの未来のために一生懸命働いているつもりだが、我々が怖がられたり、嫌がられたりする存在になっているのは、なんとも複雑な気持ちである。
自分自身が発達障害と言われても嫌と感じないところが、そもそも発達障害なわけだが、最初、どうしてこれほど抵抗が強いのかが分からなかった。おそらく、世の大半の人が発達障害を「医学モデル」で捉えていることに起因するからではないかと思われる(医者が診断をしているので、当然と言えば当然であるが)。
さらに、発達障害というのがどういう概念なのか、診断は何のためにあるのか、そのことが正しく理解されていないから、「障害」というマイナスイメージだけが一人歩きしていることに原因があるのでは、と思うようになった。

「療育モデル」で考えれば、発達障害は「発達特性と社会との間にミスマッチが生じて、不適応が起こっている状態」と定義される。このモデルでは、「特性」が問題なのではなく、「社会との関係が問題」と捉える。また、特性は発達変化することを忘れてはならない。凸凹は残るが、自己理解が進めば自分なりに工夫して社会適応できるようになる。
このように、発達障害というのは相対的・流動的な概念なのである。周囲の理解が得られず、自信喪失状態では、発達するものも発達しない。だからこそ、まずはこの子の特性と社会との何がズレているのかを周囲に理解・配慮してもらう必要がある。
診断は、他でもないその子どものためにある。逆に言えば、極論だが、社会の許容度が広がるか、発達特性への理解や配慮が自動的にできる社会であれば、診断は不要なのである。
●馬場 直子  ナビタスクリニック川崎院 皮膚科、横浜市立大学皮膚科・臨床教授

アトピー性皮膚炎治療のパラダイムシフト!?

アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚科医にとって生涯関わり続ける最もcommonで重要な疾患の一つである。目の前のAD患者さんに対してどのような治療を提供し、いかに生活のQOLを高めるかは、主治医の腕のみせどころだと思う。治療選択肢が拡がった昨今なおさらであろう。

重症なAD患者さんが新患で来ると、これまでの経緯を詳細に問診した上で、なぜステロイド外用薬が重要か、このままではどのような弊害が将来もたらされるかなどを説明した上で、具体的なスキンケアと外用指導をしていると小一時間かかってしまう。その挙げ句に、「薬を塗り続けるしか治療法はないのですか?」「もっと注射や飲み薬でスパッと治せる方法はないのですか?」と詰め寄られることも以前はしばしばあった。そんな薬が将来できるといいですね、でも今はこの方法しかないので、と申し訳なさそうに言うしかなかった。

それが2018年のデュピルマブをきっかけに、その後も生物学的製剤、JAK阻害剤など次々に上梓され、それに伴ってAD診療ガイドラインも改定され、まさにAD治療にパラダイムシフトが起こった。
外用療法だけでは十分な寛解が得られなかった患者さんも、これらの新規治療薬をうまくつかえば驚くほどのきれいな皮膚、痒みの少なさ、日常生活の快適さをつかみ取ることができるようになった。小児では将来のアレルギーマーチ進展を防いだり、学習意欲や運動のパフォーマンスを上げたりして、友人関係や将来の夢まで左右される結果につながることまである。

しかし、これほど増えた治療選択肢の中から、各々に最適なものを選ぶ眼力と、副作用のマネージメントも必要であり、また医療経済的なことを考えると、外用剤でコントロールできる人にも使うことは絶対に避けたい。いかに効率よく必要な人だけに届け、またコントロールが十分になったら外用剤だけに戻していくかが重要である。治療の選択肢が増えたことで、真に皮膚科医の眼力と手腕が試される時代になったのだと思う。

 

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ